18.学校祭トーナメント(予選)
「学校って広いな」
「そうだのう。そう言えばマルスは学校に行かないのか?」
「別に勉強したい訳じゃないしなぁ。ある程度は勉強したし」
「ふむ。我はマルスと仕事ができるから問題ないのだがな」
そんな話をしていると、話に聞いたトーナメント会場に到着したようだった。
「マルスは出るのか?」
「んー、年齢的には合っているからね。
どんな感じなのかやってみたい気はする」
金属鎧を着た男子女子が受付に向かう。
俺とそう変わらない年齢かな?
それに付き従うのは親や下男? お手伝いっぽい。
「何々? えーっと、参加資格は十三歳以上、十六歳以下ということだが、何の基準の年齢制限?」
俺はアセナに聞いたつもりだったのだが、
「これは騎士になる年齢制限です。
未成年の十三歳辺りから、成人して十六歳辺りまでに騎士の身習いである従者になります
つまり、このトーナメントで目立つことで、従者になって騎士への道を開く者も居るのです」
受付をしている女性が言った。
若くして目指す職のために頑張るのか……。
「そうなんだ。俺は騎士になるつもりはないんだけど、出ない方がいいのかな?」
「力試しの意味合いもありますから、出ることは問題ありません。
試合が終わった後に、もし指名された場合に断ればいいだけですから。
ただ、フルプレートメイルが必要になります。重いフルプレートメイルを着こなして戦うことが前提ですから」
とのこと。
「それで、トーナメントの参加はどのようにしましょう?」
「獣人は出られるの?」
ピクンとアセナの耳が動いたが、
「種族制限があり、人間限定になります」
と言う受付の言葉にペタンと伏せてしまう。
残念。期待していたようだが種族制限に引っかかってしまった。
「腕試しと言うのなら、出てみようか」
「うむ、我が夫であれば、赤子の手をひねるような物だろう」
「武器はどうすれば?」
「武器について指定はありません。槍でも剣でも金属だろうが木剣だろうが何でもありです。ただ、扱えなければ意味はありませんが……」
「わかりました。参加でお願いします」
「ではこの紙の内容を読んでここにサインを」
ん?
参加の意志と「死んでも文句を言うな」的な文章が書かれていた。
「はい」
俺はサインをして返す。
「フルプレートメイルは?」
「ああ、あります」
こうしてトーナメントへの参加が決まった。
久々にフル装備で行くかなぁ……。
「マルスの鎧は? その服しか見たことは無いのだが」
アセナが心配そうに聞いてきた。
「あるよ。オヤジに貰った」
おれは防御の腕輪(極)と魔力の腕輪(極)、力の指輪(極)、素早さの腕輪(極)、黒龍のブーツに鎧、兜、ガントレット。玄武の盾、久々のフル装備を次元収納から出す。
唖然とするアセナの前でそれを身に着け、木剣を帯びた。
アクセサリー系は可である。
「マルスよ、それを見てしまうと、ラルフ殿の言うことが正しいように思えるのだが……」
「どうして?普通だろ?」
「圧倒的な魔力を帯びておる。そんな鎧が手に入るのはダンジョンの下層でなければならないだろう。それに、我が貰った装備もそうだが、サイズ調整の魔法がかかった物など、当たり前のようには出て来んのだ」
「そう? でも、親父に貰ったものだから、気にしないで」
「まあ、我はマルスが夫として我に優しくしてくれるので、ダンジョンをどうこうしたなどは気にはしないがな。言う機会があれば教えてくれればよい」
「そうだな、機会があればな」
俺が言うと、
「嘘があると認めたようなものではないか」
とアセナは少し拗ねると、パタパタと尻尾を俺に当てるのだった。
受付けが言うには、先ずは予選。俺のようにこの学校以外からも結構来るようで、今年は二十七人一組の四組で戦うらしい。
生き残った一人がトーナメントに出られる。
枠は八つあるが、四つは学校枠らしく、埋まっているそうな。
トーナメントに出られるだけでも、結構な名誉ということだ。
ちなみに魔法は使っちゃダメ。ただし魔法剣はいいらしい。
訳がわからない。
いつもは訓練場らしいがその周りに客席ができているらしい。
周囲から声援が聞こえる。
アセナの場合は、腕を組んでみているだけ。
家の期待を背負ってきている者も居るのだろう。
しかし、鉄ましてや軽銀の鎧でも、結構な重さになる。体ができていない年齢の者がそれに耐えられる訳でもなく、歩くのがやっとならまだマシも、倒れると起き上れない者まで居た。
仕方ないので、そういうのは木剣で突っついて倒してしまう。
体が大きく、少々でも動けるのは、制限年齢ギリギリの十五歳なのだろう。それでも動くだけで必死。
動ける……ただそれだけなのに、
「何、あの装備で動ける?」
周りの大人は驚いていた。
剣を振り上げて攻撃してくる者も居たが、フラフラである。剣の重さでバランスを崩し倒れてしまう。
魔法剣を持って、俺を攻撃してきた者も居たが、魔法剣は自分の魔力を使って攻撃するもの。
その者の魔力を使い切り魔力切れで昏倒する。
悪い……興覚め。
アセナのようなものが居るのかと思ったのだが、そうでもないらしい。
騎士になる者を見定める運動会みたいだった。
順調におしくらまんじゅうを終えると、その場に立っているのは俺だけになる。
こうして予選は終わった。
「マルスには面白くなかったであろう?」
「ああ、全然ね」
苦笑いする俺と、それを見て笑うアセナ。
「どうする? やめるか?」
「どうするもこうするも、不戦敗っていうのはな……。
学校枠っていうのがあるみたいだから、それとやってみて考えるよ。
さて、本戦まで少し時間があるようだ、リサさんの屋台でも見に行くか」
「そうだのう、あの串焼きは旨かった」
こうしてリサの屋台に向かうのだった。
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