13.カミラさんの誕生日
この世界にも四季は有り、一年は十二カ月らしい。ただし、奇数月が三十日で偶数月が三十一日になっており、一年三百六十六日ということだ。
宿の中に暦のようなものがあり、そこで気付いたことだった。
そして、アセナに公用語を教えて三か月、十月の中ごろになり、少し寒くなる。
アセナは必要な事を理解し、集中して勉強したせいか、公用語を使えるようになっていた。
「カミラさん。どうです? アセナの公用語」
俺が聞くと、
「最初の頃に比べたら、雲泥の差ですね。
アセナちゃんが頑張った証拠」
カミラさんはアセナの事を「アセナちゃん」と言うようになっていた。
「カミラ殿にそんなに褒めてもらえるとは、我は嬉しいぞ」
アセナが言うと、
「んー言葉は大丈夫なんだけど、言葉遣いはもう少しね」
カミラさんが苦笑い。
「僕はこれでいいと思います。その辺は僕がフォローすればいい事なので」
「マルス君は大人よねぇ……。十四歳に見えない。私がもう少し若ければ……」
最後の言葉が気になるが、とりあえず放置で。
「カミラ殿。マルスは私の夫ですから」
「私も独身ですからね。そりゃ若い燕が欲しいとは思うのよ」
結構気になる言葉だが、やっぱり放置で。
「たっだいまー」
大きな声が響くと、リサが入口から入ってくる。
実家が近いと言うのに、リサはこの宿に泊まっていた。
馬車が宿の前に停まり、そのまま学校へ向かう。
「あー、マルス君いたぁ」
学校から帰ってくると俺を探すらしい。
今日はどこにも出かけていないので、俺を見つけると腕に抱き付いてきた。
食事をしていても、同じテーブルに座る。
体が治ってからは押しが強い女の子になっていた。
まあ、あのラルフさんにも何か言われているのだろう。
「もうすぐ誕生日かぁ……。また一つ歳をとるわねぇ」
物憂げにカミラさんは言っていた。
ちなみにカミラさんは今度二十一。
この世界ではいい歳らしい。
まあ、十五で成人と言う世界。それはそれで遅いのだろう。
日本でも昔は十四で結婚なんて当たり前だったしな。
「誕生日会でもしましょうか?」
俺は声をかけた。
裏庭の件や、まあいろいろと融通もしてもらっていることもあり、軽く声をかけてみた。
「誕生日会? マルス君と二人で?」
期待に打ち震えるカミラさんだが、
「ええ、僕と、アセナと三人で……」
バッサリと斬ると、がっくりと首を垂れた。
「それじゃ面白く無いぃ……」
最近のカミラさんはこんな風に俺とアセナの前では砕け切った態度をとる。
「言うたであろう? マルスは我の夫なのだ、割り込みはいかん」
「獣人は一夫一妻?」
「そうではないが、女としては独り占めしたいであろう? マルスのようなものであれば特に」
ちょっと誇らし気にアセナは言う
すると、スイカがブルリと揺れた。
「そういうアセナは押しかけなんだよなぁ。今更だけど」
「押しかけ?」
リサが俺に聞いた。
「ああ、その薬指の指輪は、アセナの策略で付けさせられたもの」
俺が言うと「シーシー」と口の前に指を置き「喋るな」とアピールする。
「獣人の結婚って、貴金属を薬指に着けた時に成立するらしくて、それで成立したってわけ。
それからはずっと一緒かな。
まあ、押しかけだけど、僕はアセナを気に入ってるし、今の感じも嫌じゃないけどね」
俺の言葉を聞く二人は、
「「ふむふむ、マルス君は押しに弱いと……」」
呟きながら頷いていた。
「で、誕生日はいつなんですか?」
俺がカミラさんに聞くと一週間後らしい。
ちなみにアセナが四月七日で、リサが七月九日らしい。
「忙しくなさそうな時に調理場を使わせてもらっていいかな?」
再び聞くと、
「いいわよ!」
と頷いていた。
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