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第55話 「中・学・時・代」

私は、尾上くんの手紙に書いてあった屋上を目指していた…。とても行き慣れた場所なんだけど、足取りは重たい…。知っている人と会うとは言え、すごく不安だよ…いったい何の話なんだろう?

開け慣れた屋上のドアをそっと開ける。とても心地よい風がそっと頬をなぞっていく…。



「……」


辺りを見渡してみる、誰もいない…尾上くん、まだ来てなかったのかな?私が先に到着したみたい。屋上の転落防止のネットの側へと近づく。そこから見える街並みに目を向け…私や愛生ちゃんの自宅のある方向で視線を止める。


(屋上に来ちゃった…けど……愛生ちゃん…酷いよ…1人だけ先に帰っちゃうし……ホントに告白だったら…どうしよう……)


そう考えながら、今、この場所にいない愛生ちゃんの事が少し腹が立ってくる。私が人見知りなのを知っておきながら、私の嫌なことを勧めてきた。愛生ちゃんは何を考え、私に屋上へ行くことを勧めてきたのだろう…。

…愛生ちゃんの考えている事が…私にはまったく理解が出来ないよ!兎に角…会うだけ…尾上くんに会って話を聞いて…そして自宅に帰ろう。


少し夕焼けの色に変わりつつある、街並みを眺めて黄昏ていると……後ろから声をかけられた。振り返ってみると……尾上くんだ。



「朝比奈さん…来てくれたんだね、嬉しいよ!…少し待たせちゃったかな?」


「ううん、大丈夫だよ……ここから見える街並みを見るのが好きで、ちょっと見てたぐらいだから。」


「以前からも良く屋上に来ていたよね?朝比奈さんは。…実は僕も屋上に来るのは良くあるんだよ、この場所って、1人で考え事をするのに人はいないし、静かだからね。」


「うん、私も1人で考え事をしたいときにここへ来てたんだ。…尾上くんもここに来ていたんだね?知らなかったよーそれなら声をかけてくれても良かったのに…。」


「…その時はそんな気分じゃなかったんだよ。1人になりたかったのもあったからね。」


でも、先週は突然、尾上くんから声をかけてきた…すごく気になって…。


「……じゃあ先週は、話しかけようと思う気分だったの?」


「…うん、そうだなーあの時、朝比奈さんの横顔を見ていたら、いつの間にか…声をかけていたよ。」


「え!?私の…横顔を見て??それって、どう言うことなの…。」


尾上くんは私の隣まで近づいて来て、ネット越しからの街並みの風景を見ながら…。


「……まぁ、まずは僕の話を聞いてくれるかな?」


「…うん」


私は、そう頷き…尾上くんに方に体を向けて、話を聞くことにした。




「僕の家庭は、母子家庭で…母さんは中学校の教師をしていた。父さんの顔は覚えていない…僕が小さい時に離婚をしたらしく、別れた理由は教えてくれなかった。」


「母さんは、子育てと家事、教師の仕事を両立しながら、僕を育ててくれていた…教師ってこともあり、母さんの僕への教育は、かなり厳しかったと思う。でも、僕は母さんの力になりたかった…だからいっぱい勉強して…いつか良い職に就いて、母さんを楽にしてあげたかった。」


「母さんの指導もあって、僕の学力はメキメキと上がっていき、常にトップを維持するまでに登り詰めていた…。そう、中学までは…僕の人生は順調だったんだ、中学までは!」



そこまで話をして、尾上くんは話を止める…。それから私の方に顔を向け、私に近づいてくる……何だか尾上くんの顔が怖い…私はその気迫に押される形で、後ずさりをする。…気が付くと屋上の隅に追い込まれて、私は逃げ場所を失っていた。尾上くんは、私の後ろの壁に右手をついて、私の顔に近づいて来て…。


「…朝比奈…さん、いや、朝比奈くん!君に会うまでは…僕は順調だったんだよ!!」


「え!?…わっ私に…会うまで!?」


まったく意味が分からなかった…。尾上くんは何に対して…そこまで怒りを表しているのか?私と尾上くんとは中学でもほとんど接点がなかった……私が何をしたというのだろう…。私はそれから何も言えず、尾上くんを見ながらオロオロとしていると……尾上くんが私から離れて、少し距離を開け…再び話しはじめた。



「中学2年の時を覚えているかな?僕と君が初めてクラスメートになった事、僕がクラス委員になった事を…。それと…僕は知っていたんだ、朝比奈くんが中学時代、ずっと虐められていたことを……あの2人に!」


私は心臓が止まる思いをした…。なぜあの2人の事を…しかも私が虐められていた事も…。


「え!?何故それを…尾上くんはどこまで知っているの?」


「偶然…見てしまったんだよ、体育館の裏で君たちがいたところを。その出来事も…全てね。」


そう言いながら…尾上くんは空を見上げ…とても悲しそうな顔をしながら、話を続ける。


「その時の僕は、初めてクラス委員を担任の先生に推薦されて…調子に乗っていたのかも知れない…何でも出来ると勘違いをしていたのかも知れない…。僕は君をイジメていた2人に…次の日に言ったんだよ!

『同じクラスメートの朝比奈くんを虐めているのを昨日見た、虐めをこのクラスで許すわけにはいかないので…虐めるのを止めてくれ。』って。」


「え!?…そんな事、あったんだ…。」


私は何も知らなかった……尾上くんが私の為に、あの2人に抗議していた事を…。私はそれ以上、何も言えなくなり、申し訳なくて…尾上くんの顔を見ることが出来なくて…顔を伏せるしかなかった。



「…それからだよ、僕の計画していた未来が、狂いだしたのは…。それから僕も虐めの対象とされたんだよ!あの2人から!!」


再び、尾上くんの声に怒りが溢れだしてくる…。私は何もできなくて…話を聞く事しか出来なくて…。


「それから、僕は、勉強に身が入らずに成績は落ちていく一方…。目指していた高校の受験は失敗、滑り止めで受けた、ここの高校しか受からなかったのさ!」


再び、尾上くんが私に近づき…。


「分かるだろう!?君のおかげで僕の人生設計は狂い始めたのさ……それなのに君は、いつの間にか『女の子』になっていて…中学の会った出来事なんか、さっぱり忘れ去って…今の高校生活を満喫してるじゃないか!!」


私は凍る思いをした…私が直接に手を出したわけではなく…間接的に他の人の人生に影響を及ぼしていることに…。


「だからさ…先週、君に声をかけたのは……幸せそうな横顔を見て…朝比奈くんの事が憎くなったからさ!」



そう言うと…尾上くんはポケットからスマホを取り出し、誰かに電話をかけ始めた…。


「…はい、…はい1人です、上手く屋上には呼び出しました…、はい、分かりました……お願いします。」



そう話し終えると、スマホの通話を終わらせ、再び私に近づいてくる……来ないで…こっちに来ないで!


「僕は解放してもらうよ…あの2人から!」

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