63、実演
「ところでバングルの使い心地はどうであったか」
「大変、素晴らしゅうございます」
私がバングルを足につけたこと、またすでに魔石が空になってしまったことを伝えると、前子爵は大笑い。
「あれは半年は持つ前提で設計したのだが、そうか使い切ったか。それにしても腕に合わぬからと足につけるとは、その頭のやわらかさに感服する。しかも、それで問題なく使えるのか。うむ、勉強になった。サイズについてはいくつか用意して選べるようにするか、調節可能にするか」
思いめぐらせながらも、自身の侍従に合図して手提げ鞄を持ってこさせる。
「良いことを教えてくれた礼だ。これらの動力石はグリム男爵夫人に進呈する」
おおっ、三つもくれるとは太っ腹!
「ありがとう存じます。ありがたくいただきますわ」
「ハッハッハッ、そのようにためらいなく納めるあたり、噂通りの豪気さよ」
え、才媛とかなんとか恥ずかしすぎる単語は聞いたことがあるけど、豪気っていったいどんな噂なんだ。
「ですが、やはりもらいすぎのような気もしますので、お礼というのも恐縮ですが閣下、僭越ながら私がバングルを使用するところをご覧になりませんか? それが先ほどの閣下のご質問の答えにもつながるかと思いますので、よろしければ、ぜひ」
「うむ。それは見せてもらわねばならぬな」
「不躾ついでに、義理の息子を呼んでもよろしゅうございますか?」
「かまわぬよ。それもその答えとやらに関係があるのだろう」
「ご名答でございます。さすがは閣下です」
急に呼ばれたサイモンだけど、表面上は落ち着いてる。
シャールとの特訓の成果だね。
「サイモン、こちらはカーペンター前子爵でいらっしゃいます。我が家の大切なお客様です、失礼のないように」
「お初にお目にかかります。グリム男爵が一子、サイモン・ウエイン・グリムです。お会いできて光栄に存します」
「うむ、丁寧なあいさつ痛み入る。しかし、私はすでに隠居の身。もう少し気楽にしなさい」
「はい。気遣いありがとうございます」
「さて、サイモン。これからあなたと私で閣下に魔法をお見せしようと思うの。手伝ってくれるかしら」
「はい、私でできることでしたら。もしや、先日試したあれですか?」
緊張の中にもわくわくした様子を見せるサイモン。
うん、あれ楽しかったもんね。
「そうですよ」
先にサイモンが風魔法による射的を披露する。
「うむ。見事であった」
「恐縮です」
次いで私。
「む? 男爵夫人の魔法は水魔法の中でも注水の型ではなかったか」
「その通りでございます、閣下。まず、継ぎ目なく水を出す訓練をし、そののち細く水を出す訓練を、その後、水の勢いを増すよう特訓いたしましたところ、このようになりました」
「それは……それは、大変すばらしい。魔法の常識が変わるな」
閣下は心底、感心したというようにうなりながらも、それだけではないだろうと私を見る。
「サイモン、ありがとう。もう行っていいですよ」
「では、閣下、失礼いたします」
「ああ、ご苦労だった」
本当はサイモンにもバングルを試させてあげたかったんだけど、我が野望のために我慢する。
ついでにうちの使用人はすべて下がらせて、私はこれからちょっとお話し合いです。




