60、接待
さて、歴史に加えて政治的な話をすると。
この地は発展しはじめてからは少なからず、歴代のマッケンジー辺境伯にちょっかいをかけられてきた。
同じように海運業に乗り出した近隣の村々も同じ。
しかし、いままでなんの庇護もしてこなかったのに今更なんだと、我らがご先祖様たちはそれをはねのける。
そんなわけで、マックス・ブルー・グリムを男爵に叙する時も、王家とマッケンジー辺境伯の間では一悶着あったらしいのだけど。
領主として何もしてこなかったことは、さかのぼって台帳を調べれば、各村々の存在すら認めてないことでも明白。
多少強引にではあるけど、王家はマッケンジー辺境伯にグリム男爵領の存在を認めさせ、かわりにその寄り親として面倒をみるようにと花を持たせた。
ただし、いまだほかの村……いまは街になってるところも多いか。
それらの地域は、独立不羈と言えば聞こえはいいけど宙ぶらりんな立場のままだ。
力攻めにしたところで割りにあわないと見逃してきたマッケンジー辺境伯が、その気になって各個撃破する可能性もなくはない。
各集団の長はいわゆるグリムの旦那の競合相手で、王家としてはそれらをグリム男爵にまとめ上げて欲しいんじゃないかと私は思ってる。
というわけで、パーティーですよ。
武力や経済力は旦那様が見せつけてるから、私は別の武器を使う。
我が家自慢の料理人ジャムの新作メニュー、カモン!
当初は、フランス料理のフルコース風で度肝を抜くことも考えたけど。
人は自身のこれまでの概念とあまりにもかけ離れたものは飲み込めないことが多い。
あと、マックスやサイモン、ダットリーをはじめとする客人たちの反応を見るに、私同様コジャレたものよりB級グルメがお好みって可能性が高し。
つまり、私が好きなものを並べれば間違いないのさ~!
まず、コーンポタージュは外せない。
葉物野菜のサラダには、ジャムがクリーンの魔法を使えるおかげで安心してマヨネーズを添えられる。
ミニグラタンとナポリタン、オムレツはワンプレートで。
この地方の人たちもまったく肉を食べないわけじゃないから、魔牛肉をハンバーグに。付け合わせのポテトにはたっぷりバターを乗せてね。
一緒に出す丸パンは、天然酵母を使ってふわふわさ。
口休めに、レモンゼリー。
そしていよいよメインの巨大魔魚の姿揚げだ! 彩り野菜のあんかけ風で見た目もゴージャス。
デザートはプチチーズケーキとチョコレートケーキの盛り合わせ、コーヒーで〆。
どう見てもお子様ランチ、プラスワンだけど、それをオシャレで豪快かつ上品にって無茶な要望にもジャムはきっちり応えてくれた。
もちろんこれだけで実質、海賊夫婦たちに言うことを聞かせられるとは思ってないけど。
一発目のジャブはしっかり効いてる模様。
もっともそういう駆け引きとは別に、こいつはべらぼうに美味い!と感じたことは事実のようで、皆、帰る時は胡散臭さがだいぶん薄らいでたよ。




