45、告白
しばし無言でカップを口に運んで、意を決したようにサイモンが口を開いた。
「あのっ……」
「なんだ」
「なぁに?」
「オレ、いや僕は」
父親の顔を見、私の顔を見、テーブルクロスをじっとにらむ。
「……字が、読めないん、です」
再び本をつかんだ手がぶるぶる震えてる。
「どういうことだ?」
「あなた、声が大きいです。怒っていると誤解されるじゃありませんか」
「む。私は怒ってなどいない」
「わかっています、心配なのですよね。でもいまは、サイモンの話を聞くことが先決です。可能でしたら、あなたはしばらく口を閉じていてくださいませ」
「む」
でかい図体で素直にうなずかれると、可愛いな、ええおい。
「サイモン。それに気付いたのはいつかしら?」
「……家庭教師がきて、勉強をはじめてすぐだ、です。先生が一生懸命教えてくれてるのに、僕はオレは、字を読むことも、書くこともできなかった!」
血を吐くような告白に、思わず涙が滲む。
でも、ダメダメ。私が泣くのは違うでしょう。
「そう、つらかったわね」
「……うん」
うつむいた彼のあごから透明な液体がぽたぽた落ちる。
「そのご本は?」
サイモンは慌ててその表紙を服の袖で拭って、大事そうにテーブルにおいた。
「最初の教本。毎日見てる……でも」
私は立ちあがって彼に寄り添い、その背をさすった。
「大丈夫よ、あなただけじゃないわ」
「そうだ、大丈夫だ。この街にだって読み書きのできない奴はいっぱいいる。だが、皆いっぱしに働き生きている。それにお前は私の息子だ!」
やはり立ち上がって寄り添ったマックスがその力強い手で、息子の頭をがしがし撫でる。
すごい大雑把で調子はずれ。でも力強い慰め。男親って、良くも悪くもこういうものらしい。
まあ、なんにしろサイモンの気分がちょっと浮上したようなのでそれでいい。
「うん」
やっぱりお父さんのこと大好きなんだなぁ。




