第三十九話 牙を剥く猛虎 VS テキサスの荒馬‼の巻
次回は8月11日に更新する予定アルよ。
テキサス山のローリングソバットを受けて大きく体勢を崩すラーメン山。
「まだ SLEEPING には早いぜぇぇーッ‼」
さらにテキサス山はワン・ツー張り手で追撃して土俵際に追い詰める。
そして、連携のフィニッシュには捻りを利かせたアッパー張り手。
この瞬間、誰もが勝敗は決したと勘繰る。
しかし、ラーメン山は土俵の外に出ることは無かった。
(やってくれたな、アメリカ小僧。この私に旋風脚を食らわせるとは…、もはや容赦はせぬ‼)
片足一本。
ラーメン山は最後に残った足の親指一本でテキサス山の猛攻を凌いだ。
ラーメン山はテキサス山のアッパー張り手の威力を利用して片足を軸に一回転、叩き込みを狙う。
「相手の攻撃の威力を反撃に利用する。これが中国相撲秘技六十の一つ、武梅嵐亜立九アル‼食らうヨロシ‼」
だがテキサス山はすでにガードを固め、ラーメン山の反撃に備えていた。
「ラーメン山、YOU の弱点は自らの所有する多彩な技術に酔って無条件で対戦相手を格下と見なす強者の傲りだぜーッ‼」
テキサス山は重心を前に向けてラーメン山の強烈な張り手を止めた。
その端正な口元に笑みが広がる。
一方奥義を防がれたラーメン山の眼光が鋭いものに変わっていた。
(強者の傲りとが言ってくれるアルな、若造。この私(※ギ○ティ○アの紗夢みたいな発音)が不本意な試合を強いられてどれほど苦悩したか貴様如き半端者の若造にはわかるまい‼)
奥義”武梅嵐亜立九”を止められたラーメン山は身体を左右に張り手を繰り出した。
通常の武梅嵐亜立九ならば相手の攻撃に張り手を合わせるだけの技だが、技の”クスリのツルハ”と呼ばれたラーメン山はここで終わらない。
防御から攻撃に、反撃技から技の連携へと変幻自在に技を派生させてテキサス山を追い詰めようとする。ラーメン山を鞭のように振るい、鞭打の要領でテキサス山の皮膚を切り裂いて行った。
「 BULL SHITッッ‼ 」
テキサス山は鞭打による痛みからではなく、己の目算の甘さに悪態をついた。
さらに激しさを増す中国相撲秘伝の鞭打。肩の力を抜き、胴と手だけを振り抜くことだけの打撃のはずなのにテキサス州の広大な自然に培われた POWERFUL BODY を持つテキサス山の皮膚を容赦なく切り裂く。
ラーメン山が他の格闘技の選手ならばこうまでダメージを負うことは無かった。
なぜならば目の前に立つナマズ髭に三つ編みの男は地上のあらゆる格闘技の上に君臨する”相撲”の”力士”なのだ(※言い過ぎ)。
(目の前の男は単なる糸目の浮かれ親父ではない。中国四千年最強の力士と称えられたラーメン山だッ‼)
テキサス山は出血の量を注意しながらラーメン山の猛攻に備える。
「この私を”浮かれ親父”とは言い過ぎアル‼お前、さっきから思っていることを全部口に出しているアル‼この辛口麻婆豆腐(※中国語で”強敵”という意味)め‼」
ラーメン山はその威力は中国山椒”花椒”と唐辛子粉”辣粉”に比喩される必殺の鞭打でテキサス山を追い込んだ。
だが、満身創痍の絶対的な窮地に在るにも関わらずテキサス山の青い瞳からは闘志の炎が失われることは無い。
(テキサス山、思った以上にタフな男アル。こうなったら私のお友達の頑駄無から教わった薬効拳でパワーアップした鞭打を食らわせるアルか?いや、そもそも様子見にやって来たというのに毒手使って殺したら意味がないアルよ)
ラーメン山はガードを上げたままのテキサス山の前から距離を置いた。
いや「アル」のか「ない」のか、どっちなんだラーメン山‼
ラーメン山の猛攻が一時的に止んでもテキサス山がガードを解くことは無かった。
そして、今はキン星山と名乗っているであろう海星光太郎が使った「連勝ストッパーの構え」という技に畏敬の念を送る。
両腕から伝わる痛みは相当のものだったが、力士の動きの要たる足腰への負担はほとんど感じられない。
プライドを捨て、敵の技を使った努力が実を結んだのだ。
「悪いな、ラーメン山。ME は SPICY な料理には目が無いのさ‼お前の小賢しい技ごと食らってやるぜ‼このテキサス流連勝ストッパーの構え・改でな‼」
テキサス山は自分の両腕を盾のように使って再び前進する。
ラーメン山は鞭打の勢いを上げて追い返そうとするが、テキサス山には通用しない。
いつの間にかテキサス山の腕の傷口は新らしく生まれた皮膚によって塞がり、出血も止まっていた。
テキサス山は今の己の姿が 日頃から心がけるSMART さとは無縁な泥臭い STYLE であることに気がつき不意に笑ってしまう。
(そうだ‼今の ME はテキサス山じゃない。あのド下手くそな相撲しか出来ない間抜けのキン星山だ‼)
ラーメン山は最早テキサス山の肉体を己の鞭打では傷つけられないことに驚愕する。
その直後、ガードを固めたままテキサス山のタックルがラーメン山の顎に直撃した。
「DO SUIT CALL IT ッッ‼ラーメン山よ、今までの借りをまとめて返すぜ‼」
ラーメン山は強烈なぶちまかしを顎にもらって口から出血しながらテキサス山を睨みつけた。
口内に溜まった血の泡を吐き出しながらテキサス山のまわしを掴み、上手を取ろうとする。
力士二人の壮絶な攻防を目の当たりにした白虎が唸り声をあげた。
「ガルルッ‼気をつけろ、テキサス山よ‼ラーメン山は一気に勝負をつけるつもりだぞ‼」
※ 忘れている人もいるかもしれないので書いておくが、観客の代わりに四聖獣がいます。
テキサス山は上手を取りに狙ってくるラーメン山の手を振り払おうとするが間一髪の差で間に合わない。
ラーメン山はまわしを掴んで勝負を五分の位置まで戻そうとするテキサス山の目論見を逆に利用して足かけを仕掛けた。
劣勢を覆そうと足掻くテキサス山にラーメン山の右脚が引っかかる形となった。
そして、ラーメン山はテキサス山の腕を封じた上で土俵の外に投げる。
その流麗なる動作に四聖獣たちは舌を巻くばかりだった。
「これぞ中国相撲秘技六十の一つ、犀土素郎アルよ‼」
(いやいや。タダのすくい投げだろう…)
技を喰らっているテキサス山、四聖獣たちも同時に突っ込んだ。
しかし、発言の趣旨はともかく秘技・犀土素郎の威力はすさまじくテキサス山は抵抗する余地もなく体勢を崩される。
だだんッ‼
しかし、されどアメリカ最強の力士の一人という肩書は伊達ではないということをテキサス山は実証する。
投げられた先で片足を突き、けんけんしながら土俵の中に残った。
だが、ラーメン山はまわしから手を放した後、テキサス山の背後に難無く回り込んだ。
「これはッ‼まさかこの局面であの技を出すつもりか‼」
その時、テキサス山は世界の相撲史において”禁断の技”として知られるあの技の名を思い出していた。
偉大なるドイツにおいて世界制覇まであと一歩というところまで進んだ偉大なる力士、加或五土が生み出したとされる伝説の技。
背後から相手を掴んでそのまま地面に叩きつける危険な技であり、力士が試合で使うと120%くらいの確率で相手を死に至らしめる”GERMAN SUPLEX”である。
恐いもの知らずのテキサス山とてこの時ばかりは冷や汗を流した。
「食らうアル‼中国相撲秘技六十の一つ、原子爆弾投げェェーーッ‼キエエエエーーーッ‼」
ラーメン山はテキサス山を背後から持ち上げ、空中で背を逸らしながら地面に叩きつけた。




