尾の子
昔々、尻尾が生えて生まれた人の子がいました。その尻尾は皮膚と同じ色をして毛がなくつるんとして、くるりと巻いていました。
その子は尻尾があるのはなんでだろう、どうして他の人には尻尾がないのだろうと思いながら育ちました。
尻尾があることは絶対に隠し通しなさいと両親にかたく言い含められていたため、どんなに暑くても服を脱がず、行水はすっかり暗くなってからひと目の付かない場所でひっそりとして過ごしていたのでした。
やがてその子も大人になり、村の同世代の子たちがちらほらと結婚するようになりました。
その尾のある子もそろそろという雰囲気になり、隣村から縁談が来ました。
その子は、ああ、自分もとうとう結婚するときが来たのだ、お相手はどういう人だろう、なにがあっても思いやって助け合って生きていきたいと素朴に楽しみに思っていました。
しかし、親に結婚をしたい旨を伝えると尾のある子の両親は深刻で悲痛な顔をしました。
「おまえが結婚するならば、その異形の姿ではいられないだろう。尾を切り落とさねばなるまい」
とナタを持ち出して、二人がかりで尾のある子を裸に剝いて取り押さえようとしました。
尾のある子は驚き、恐怖し、叫び、手足をバタバタと振りまわして親を振りはらい、必死で逃げました。
なぜあるのだろう、どうして他の人にはないのだろうと思っていた尻尾のこと、隠しなさいと言われて育ったけれど、ずっと自分の一部だと思っていて切り落とすなんて考えたこともなかったのです!
だいいち、尻尾を切り落としたら痛くて血がいっぱい出て、死んでしまうかもしれません。
逃げた先の真っ暗な森の中で、こわくてこわくてしゃがんでおいおい泣きました。
なにがあっても自分は自分なのに、大切に思っていた両親はどうやらまるごとの自分を受け入れてはくれないようです。
尾のある子は、泣き止むと自分の尾っぽをつるりとなでました。
それは我ながらなかなか愛嬌のある部位だと思えました。
やはり、切り落とすなんて考えられません。
尾のある子は、両親のある家にも縁組の打診をしてきた隣村の家にも帰れないと思いました。
だから、そのまま歩き出して、遠い地を目指しました。
どこか、このままの自分が生きていける場所を探して。
それっきり尾のある子は村に戻ることはありませんでした。
十何年か経ったあと、尾のある子の村へ「元気にやっている」という頼りがぽつりと届きました。
尾のある子の親は、それを座敷のいっとういい場所に大切にしまったということです。




