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川辺

昔々、タミというものがいました。

タミには変わった習慣がありました。夜になると、灯りも持たず近くの河原へ降りてボーッとするのです。

それほど幅広い川ではありませんが、水の深いところがあり流れもはやく人が渡れるようなものではありません。河原はひらけていて石がゴロゴロと転がっています。

なかにタミのお気に入りの岩があり、いつもそこに腰かけてただ水の流れる音を聞くのです。


月が明るい日も、そうでない日もタミは川に通います。

そうやって待っていると、ごくたまに水面が青くぼんやりと光り始めることがあるのです。

川が光りはじめると、タミは水際に駆け寄り川のなかに目を凝らします。

すると決まってそこに、笑いさんざめく人魚たちがいるのです。

遠い水中のなか、何匹かの人魚が何事か楽しそうにささやきながら川を泳いでゆきます。

そのなかにタミのいなくなった友によく似た顔の人魚がいるのです。

いなくなる前、思えば友は暗い顔をしていました。けれど、タミはあまり深刻に考えず、のんきにかまえていました。そうしているうちに、忽然と友は姿を消したのです。いつまでたっても見つからないので、神隠しだろうということになりました。


水中に友の顔を見つけると、タミは友の名を呼びます。何度も何度も。

けれど、友の顔をした人魚はタミに気づくことなく、幸福そうな表情で泳いでいくのです。

人魚が去ると、光が消え川はふたたび暗く打ち沈みます。静まり返った河原で、タミは黙って顔を覆い、じっとうずくまります。けれど、しばらくするとがばと立ちあがって家に帰ります。

そうして、翌晩も河原へ通うのです。

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