瘤取り鬼
昔々、瘤取り鬼というものがいました。
頬に瘤のついた踊りの得意な爺さんの瘤をちぎってやったらそう呼ばれるようになったのです。
鬼としてはたいして力も強くなく残虐でもなく、ただその日を平穏に過ごせてたまに宴でもして楽しいことがあればいいな、というような性格でした。
あるとき、瘤取り鬼を訪ねてくるものがありました。そのものはウメと名乗りました。立派な青年に見えましたが瘤取り鬼には人を見分ける自信がちょっとありません。もしかしたらそうかな、くらいの印象で齢や性別など元より鬼にはどうでもいいことなのです。
ウメは「お前が瘤取り鬼か!」と叫ぶやいなや、顔を真っ赤にしながらいっしょうけんめいに踊り狂いはじめした。
鬼が呆気にとられてると、ウメは
「わたしはお前が踊りの見事な翁の顔の瘤を取ってやったときいた!どうだ!わたしの踊りを見たか!なかなか見事だったろう。わたしの瘤も取ってくれませい!」
と一息に言いました。
「お前さんの顔に瘤などないではないか」
「いや、身体に二つほど余計なやつがある。それを取ってもらいたい」
ウメの言うところの「余計な瘤」とは乳のことでした。
ウメが鼻息荒くフンスフンスと迫るものだから、瘤取り鬼はえいやえいやと乳をちぎって投げてやりました。あとにはきれいに平らになった胸が残りました。
そうしたらウメはたいそう喜んで、平らになった胸を何度も撫でながら帰っていきました。
いつごろか噂が広まったのでしょうか。
瘤取り鬼のところには、胴についた余計な瘤や股についた余計な棒を取ってくれ、というものが引きも切らせぬようになりました。
たまには取って余ってるそのへんの瘤や棒を付け替えてやることもありました。
瘤取り鬼は訪問者に言われるがままやってるだけでしたが、たいそう感謝されてお礼の品々で安泰に暮らしたということです。




