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あか

昔々、小さな村にひとりの旅人がたどり着き行き倒れました。

村人はその旅人が死んでると思いせめて弔おうとすると、旅人がむくりと起き上がり大きく伸びをしました。

村人が名を尋ねると「おれに名はない。好きに呼ぶといい」というので、その頭髪の見事な紅毛にちなみ「あか」と呼ばれることになりました。

あかは村の隅の空き家になっていたところに住むことになりました。

「あか」は働かず一日中ごろごろとしているかと思えば、村の野良仕事を手伝うという気まぐれなところがありました。

あかは昔のことは語りませんが、ふしぎな愛嬌があって多くの村人と打ち解けて食べ物をわけてもらって暮らしていました。


あるとき、村で疫病が流行りました。村人がバタバタ倒れ、ほとんどの人が家族や友人を亡くしました。

大切な人を亡くした人は胸の張り裂けるようなつらい思いをし、疑心暗鬼になり、悔しくやりきれずにどこかに原因を求めずにはいられませんでした。

真っ先に槍玉に上がったのはあかでした。

「得体のしれないあかが外からこの病を運んできたのだろう」

その声が日増しに大きくなり、とうとうある晩のこと、やり場のない怒りを抱えた村人たちが手に手に武器になりそうなものを持ちあかの家を囲むことになりました。


するとどうでしょう。

ぐぐぐぅという中から獣のような不気味な唸り声が聞こえるではありませんか。

家を取り囲んだ村人がたじろぐと、ばりんと戸を破って出てくるものがありました。

そこにいたのは見上げる首が痛くなるほど大きい、小山のような赤毛の化け猫でした。

その化け猫は取り囲んだ村人たちの頭を飛び越え、病人のいる家を走って巡りました。すると病人の家のなかから、黒い小さな靄のような影がちょろちょろと出てくるではありませんか。

化け猫がシャーと威嚇するとその黒い靄は混乱したように散り散りに逃げていきました。


誰かが「あか!」と呼びかけると、化け猫は一度だけ振り返りその後は一目散に山の方へ走っていきました。

あかが黒い靄を散らした家の病人はその後、みんな一命を取り留め、村の疫病はおさまったということです。

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