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第11話 ヒーロー 改造される(2)

第11話 ヒーロー 改造される(2)



「頭はフラフラしない?きっちり立ち上がってる感覚はある?足先や手足に、腰に違和感はない?顔を固定して、目を左右に動かして…視野は狭窄してない?うん、よろしい。ならば次の段階に進みましょう。天元先生。お願いします」

「腰部固定します。丸木戸君。コルセットを」



 腰のダメージが大きいのか?それとも寝ている間にマシになったのか?腰にまとわりつく重い違和感がないことを不思議に思いながらも丸木戸看護師さんに腰にコルセットらしきモノを肌に直に装着された。

 なんだかいつものコルセットと違った肌触りなのと、やたらと軽い。こんなんで腰が固定できるのかなと疑問に思いながらもされるがままになっていた。



「それじゃ動作の確認だ。まず右肘を左手で支えて、右肘は胸の高さで前に突き出す。腕の角度は90度だ。指は伸ばす。手のひらは顔側に向けて…うん、こんな感じだ。丸木戸君。コントロールを頼む」



 天元先生は自らポーズを取る。視界の外では丸木戸看護師長ワゴンに載せられた怪しげな機器に接続されたPCを操作し始めた。俺は脳の機能が正常かどうかの確認だと思い込んでいたので天元先生と同じポーズを取るが、今までの流れからすると、かなり怪しいことに気がついた。とりあえず質問だ!



「何でこんなポーズなんです?」

「機能起動準備動作だよ。君の脳とはあまり関係ないね。普通のポーズだと誤動作してコルセットに起動コマンドが飛ぶから、日常ではあり得ないポーズにしている。起動→キャンセルってのは結構負荷がかかる。キャパシタに蓄電した起動用電力がこの時点でSSTSを励起するからね。何度もやってると過負荷になってコルセットがドッカンだ。嫌だろ?」

「コルセットが爆発すんのか!」

「驚くことなかろう。携帯電話なんてしょっちゅう爆発してる。近年の電子機器に安全性を求めてはいかんな。安全性とトレードオフしての高性能なんだから」

「どこの携帯だよ!普通は爆発しないよ!」

「某国では爆弾以外は全て爆発するぞ?」

「○国製じゃないですよね?絶対に嫌ですからね!」



 慌ててコルセットをむしり取ろうとしたのだが、無情にもコルセットはがっちりと腰部に食い込んでいた(どんな装着になってんだよ!)



「あ~!グダグダ言わない!起動準備動作だって目立たない様に考えてるんだ。起動動作が日曜朝のテレビ番組みたいだったら恥ずかしいだろ?アレはイケメンだから許されてるんだ。イケメンじゃなければタダのヲタ芸!…君はそれ程イケメンじゃないからね…妥協した結果なんだ。よし、起動準備は正常だな…。ここで握り拳を作る。献血の時の様に親指を握り込むように。ああ、親指の先を人差し指と中指の間から出すのは駄目だぞ?カメラに寄られたら一発で放送事故だ。

 この時点で体表面に静電気が発生する。2kV位は出るので、身体に接触していた物体は跳ね飛ばされる。生体強殖装甲方式を採用しているガイ…なんとかは後方に衝撃波を発生させるんだが、ありゃ、見た目は派手だけど器物破損になるから採用できなかった。静電気隆起時には髪の毛が逆立つんで、これもそれなりに派手なんだが、現在の君では確認は無理だね」



 おまいらが貴重な長~~~い友(髪)を排除したんだろーが!

 俺の怒りは天元先生には届かなかった様だ。天元先生は半ば自慢するように俺の腰のコルセットに組み込まれた機能の説明を続ける。いや、腰痛コルセットに何でそんなモーションが必要になるんだ?



「変身アイテムはこのコルセットになる。ド派手なベルトとか、信じられない大きさの指輪とか常日頃から身につけてたらおかしいだろ?銀座のホコテンで鍬持った麦わら帽の爺様が歩いているレベルで怪しい。つまり一発で職務質問の案件だ。私個人の所見だが、変身アイテムの許容範囲は携帯電話くらいだろう。あれもガラケーだったから今はそれなりに目立つ。本当はスマホにしたかったんだが、紛失するリスクと林檎屋との間での意匠の使用でもめてね…。その点、腰痛用コルセットなら何の問題もない」

「コルセットって目立たないんですか?」

「ない!鍬持った麦わら帽の爺様が田舎の農道を歩いているくらい違和感がない!何せ肌身にくっついてるから紛失するリスクも少ない」



 微妙だ!微妙すぎる!



「次に本機能の起動だ。本機能の起動は言語野の脳波がキーになる。慣れれば言葉に出さずに起動できるが、最初は言葉に出した方がいいね。キーワードは「延身えんしん」だ」

「そのキーワード何なんです?それと、俺は(そんなこと)やりません!」

「表向き、腰痛用のコルセットだからね。ああ、キーワードは強く思い浮かべるように」

「だから拒否だ!拒否!冗談じゃない!」

「ふ~ん。あ~丸木戸君。腰部のペインブロックをちょっこら解除してみてくれんか」

「うふふ…いいんですが?ちょっとかわいそうですが…ぽちっと!」

「かわいそうならやるな!絶対面白がって…ぎやぁぁぁぁ~やる!やるから!やりますからっ!」

「あら残念。3秒保ちませんでしたわ うふふ…」

「面白がってる。絶対面白がってる!」

「はいはい、サクサク動作!」

「クソッ!ヤケだっ!「え、延身えんしん」」



 キーワードを言葉にしたとたん、目の前がブラックアウトし、反対に真っ暗な頭蓋骨の中に白熱電球が点灯したような感覚が走る。次いでを中心に身体の上下にゾワゾワした感触が一気に広がった。あまりの気味悪さに俺の身体はビクビクと痙攣するように震えたのだが、不快な感覚が消えると同時にものすごい高揚感が身体を支配し、思わずうなり声が出る。

 声は意味不明の音波に変換され、病室に響いた。




「ほら、見てみなさい」



 ミラーアプリを立ち上げたらしい。差し出されたスマホの画面には禍々しい漆黒の鎧の様なモノに包まれていた俺の身体が写っていた。しかし、この状態でも圧迫感よりも安心感というか全能感に支配されてしまう。それと、やけに視界が広く、目線が高い。目玉をきょろきょろと動かしているとそれを察したのか、天元先生の声が鎧の中に響いてきた。



「どうだ。視界が広かろう。これは某メーカーのカーナビの技術を応用した機能だ。オリジナルは可視光だけだが、これは赤外線、紫外線、放射線も検出できる。超長波、超音波の反射も画像化できるから潜水艦やコウモリと喧嘩できるぞ?実はレーダーとかX線も照射したかったんだが、一般人は無線従事者や放射線技師の資格なんぞ持ってないと思うので解除してある」



 元ネタがカーナビって…それと放射線?コイツで何するつもりなんだ。あと法令遵守って微妙じゃね?


「あ~陸上特殊だけど一級持ってますよ。それと、身体大きくなってないですか?あと尻尾があるんですけど?」



 本当は言わなくてもいいんだが、せっかく取った(けど会社では何の役にも立たない)資格だ。申告しておこう。



「そりゃいい。レーダーユニットをアクティブにしておこう。これで空からの攻撃にも対応できる。それと視野が高いのは君の全身の関節及び骨格を外骨格が牽引&懸垂しているからだ。身長はおおよそ15センチ程高くなっている。通常骨格は軟骨と接触しているがコルセットが起動している間は外骨格が全身の動きの補正を行うんだ。

 つまり変身中は腰痛のリハビリを受けているのと同じ状況になる。どうだ!素晴らしかろう!だから「延身」なのだ!」

「で、尻尾はなぜに?」

「そりゃ、君の資質だ。日浦先生が言ってただろ?「よしなりさんの肛門と直腸は1万人に1人の名器だ」と。尻尾の操作は括約筋の筋電図で行うことができる。肛門をウニウニ動かすだけで君の思うように尻尾…我々はテイルアンカーと呼んでいるが、これが自由に動く。当然外部からの刺激はダイレクトに肛門に反映される。これを我々は超(腸)感覚器官と名付けた」



 こいつか!こいつのためなのか!鎧を装着した時の高揚感が一気に霧散していく感覚が全身を覆い。俺はがっくりと手を付いた。


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