アーニャの本心
ジビエソーセージを前にしたアイナは葛藤の真っただ中にいた。
(あ~、美味しそう…、食べたい…。いや…、今はダイエット中だからやめとこう…。)
アイナは我慢する事にして先に進もうとしたが…。
「おじさん、二本ちょうだい!」
「あいよー、12ゲルダ頂くよ。」
アイナが振り向くと何とアーニャはジビエソーセージを二本購入した。
(な…、アーニャ…、あんたも喰うんかい…!)
アイナはアーニャの意外な行為に動揺した。
「アイナ、あんたに一本やるよ。受け取りな。」
「ああ…。(意外だなアーニャ…、あんたがうちにおごるとは…。)」
アーニャは一本のジビエソーセージをアイナに渡した。アイナは受け取った。
「ちょっと場所を変えよう。」
アーニャはアイナを橋の下に連れた。
「アイナ…、うち…、あんたに謝りたいんだ…。」
アーニャは改まってアイナと話した。
「何を謝んの?うち、全然心当たりないんだけど。」
アイナは全く憶えていなかった。
「あの時、あんたが色々食べた後の事だよ。あんたにひどい事言ったなって思ってたんだよ。」
「!…(ああ…、あの事か…。)」
「あの時…、うち…、あんたがニュートラル科で何もやる事がなく…、ただ食べてるだけの人だと思ってたんだ…。でも…、今日…、工房であんたが槌で台を砕いたの見て…、間違いだったのがわかったんだ…。」
「!…。」
「あんたも結構頑張ってたんだな…。やっぱうちと同じブリジット族の女なんだなって…、あれ見て思ったよ…。ジビエソーセージはうちの差し入れだ…。一緒に食べような…。」
「うん…。」
アーニャは涙を流した。アイナもアーニャの本心を知り涙を流した。
ジビエソーセージを食べ終わった二人は宿舎に向かう途中、夕陽を背に再び語り合った。
「なあアーニャ…、ところでだけど…、何で差し入れにジビエソーセージを選んだんだい…?」
アイナはアーニャが何故ジビエソーセージを差し入れに選んだのか気になった。
「ジビエソーセージは農作物等に害を及ぼす獣の肉をひき肉にした上で、臭みを消すために岩塩にハーブやスパイスにデクード炭の粉を混ぜた後腸詰めにした畜産物さ。アミノイド量が多いから鍛錬の後に食べると効果的だし、茹でてあるのは結構美味しく喰えるよ。」
「なるほど…、ありがとな…、アーニャ…。あんたの差し入れとってもうまかったよ。」
アイナは改めてアーニャに感謝した。
「あっ!もう夕陽が地平線に…。アイナ、走れるか?」
日暮れに気付いたアーニャは速い足踏みでアイナに走れるかどうか尋ねた。
「ああ…、って…、待て待て!あんたの方が速いのはうちでもわかるよ!」
アイナはアーニャの余裕な雰囲気から自分より速いと踏んだ。
「じゃあ、『ライトラン』で宿舎まで一緒に走ろう。」
アーニャはアイナの走力の低さを考慮してライトランに変更した。
「うん。」
アイナは承諾した。こうして二人は無事に宿舎に帰り着いた。
ライトラン…身体に大きな負担をかけない走り方で、身体を動かしながら休む事が出来る。アースガルドでは『ジョギング』と呼ばれる。




