アーニャの秘密
工房に入ったアイナは槌で赤く焼けた鉄を打つアーニャを見つけた。彼女と向かい側には身長の低い屈強の老人が彼女同様槌を携えていた。
(!…アーニャ…!何でこんなとこに…?)
アイナは声をかけそうになったが暫く様子を見る事にした。
(!…あ…、そういえばアーニャは産業科だったね…。どうりでここに職人見習いって奴…!?)
産業科所属並びに小柄な老人と相槌を打つ様からアイナはアーニャが何故タタラヘイムに来たのかを察した。それから暫くして…。
「おう、嬢ちゃん!わしらの工房に何用かのう?」
アイナが声のした方を向くと別の身長の低い老人がいた。
「あの…、うち…、アーニャって人探してるんです…。」
アイナは戸惑いつつもアーニャを探していると取り繕った。
「ああ、向こうで鉄を打ってるブリジット族の嬢ちゃんか。おいアーニャ、暫く休憩だ!」
小さな老人はアーニャに休憩するよう促した。
「はい、親方!…ア…、アイナ…!?」
アーニャは工房に来る筈のないアイナが出て来た事に戸惑った。
休憩中、アーニャとアイナは向かい合った。小柄の老人達も寛いでいた。
「しかし、驚いたよ。あんたが工房で槌振るってたなんて…。」
「うちな…、鍛冶職人を目指してんだよ…。ここの『ドワーフ』方に鍛冶について色々教えて貰ってるんだ。」
「どうりで産業科だったんだな…。」
「ところでだけど…、アイナ、あんたも決めてんのかい?自分の将来の事をよ。」
アーニャはアイナに自分の将来を決めているか尋ねた。
「いや…、うち…、まだ…、決めてない…。」
アイナは後ろめたい感じでまだ自分の将来を決めていないと答えた。
「何と!お主まだ決めておらぬのか!?なんならお主もヒッタイト槌で鉄を打ってみぬか!?気持ちが晴れやかになるぞい!」
親方のドワーフがアイナを鍛冶の体験に誘った。
「…わかりました…。」
アイナは鍛冶を体験する事にした。
赤く焼けた鉄を前にアイナはヒッタイトで出来た槌を構えた。
(な…、何か結構重いんだけど…。やっぱヒッタイトは凄いや…。)
アイナはヒッタイト槌の重みを感じていた。
「(…よし…!)はあっ!」
アイナは赤く焼けた鉄に槌を振り下ろした。次の瞬間、アーニャに鍛冶職人のドワーフ達も驚いた。何と赤い閃光と同時に鋼の台が砕けたのだった。
(!!…なっ…、…これって…、…何かやばい気がする…。)
アイナは自分が台を壊してしまった事にうろたえた。
「…ごめん…、台壊しちまって…。」
アイナはドワーフ達に台を壊した事を詫びた。ところが…
「がはは、お主見どころあるのう!流石ブリジット族の嬢ちゃんだけの事はあるわい!」
親方のドワーフはアイナを責めるどころか褒め称えたのだった。
「良かろう!お主にも鍛冶のイロハを…、いや、鍛冶には鍛冶向きの鍛錬が必要じゃ!アーニャ、例の鍛錬法をアイナに教えてやるが良い!」
そして、アーニャにアイナを鍛えるよう命じた。
「はい、親方。」
アーニャは承諾し、アイナに歩み寄った。
(!…アーニャ…、その身体…。)
アイナはアーニャの身体がメフレックス程ではないが結構精悍である事に気付いた。果たしてアーニャはアイナにどんな鍛錬を教えるのだろうか?




