エイミーの動機
アイナに突然何故身体を鍛えるのか訊かれたエイミーはやや動揺気味だった。
「!…わたしは…、騎士を目指しているの。騎士は…、何よりフィジカル面が重要でしょ。それに…、騎士は弱者や心ある者達の魂の拠り所。女性だったら更に拍車がかかるわ。」
エイミーはアイナの問いに騎士を目指しているからだと答えた。
「あんた、騎士目指すんだったら他にいい環境あんだろ。そもそも何でこのレッドガルドを選んだんだよ?ここははっきり言って原始的でなんにもないに等しい世界だぞ。」
アイナは何故レッドガルドのような原始的な世界でエイミーが騎士を目指すのか気になった。
「だからこそよ。こういう何もない環境が研鑽に適した環境なの。それに、ここは重力が大きいし、名だたるAUが輩出されるのもわかる気がするの。特にレッドガルド出身のブリジット族の女性AUのブルドラシルでの活躍は目覚ましい物があるわ。精悍な身体に恥じない程にね。」
「ところでだが…、重力が大きいのが何で研鑽に適してんだ?」
「同じ質量でも重力が大きいガルドと小さいガルドでは重みを感じる前者の方が鍛錬の効果が上がるからよ。」
「なるほどな…。うちもブリジット族の女だけど、あんたみたいな事今まで考えた事なかったな…。あっ…、もう一つ気になった事があった…。あんた…、肌の色といい今の話といい、このガルドの人じゃないんだろ!?」
アイナはエイミーの話並びに肌の色から彼女がレッドガルドの者ではない事を察した。
「ええ。」
「じゃああんたは…、留学生って事か?」
「そう、わたしはフレッシュティーンで、ミドルガルドからこのティーンアカデミーに留学して来たの。」
エイミーは13歳で留学してきた事をアイナに話した。
「えっ…、フレッシュティーンからって…。うち…、全然気付かんかったよ…。」
アイナも13歳からアカデミーに入校していたのにエイミーの事を知らなかったのだ。
「無理もないわ。わたしもあなたの事全く気付かなかったし…。まあ、科が違うとそういう事も珍しくないわ。」
エイミーもまたアイナの事は気付かなかったのだ。レスティーンスクールからの知人であれば話は別だが。
「ああ…、確かにな…。」
「改めて宜しくね、アイナ。」
「うん、うちの方こそ。」
そして、アイナとエイミーは二人で学徒用宿舎に戻った。
宿舎の食堂では夕食が待っていた。アイナの食事は結構大盛だった。その大盛っぷりに彼女と向かい合ったエイミーのみならず他の寮生達も驚いた。ただ、呆れ顔のアーニャを除いては…。
「あなた…、こんなに食べるの…?」
エイミーは思わずアイナに尋ねた。
「うん、今日はいつになく結構身体動かしたからね。このくらい喰わなきゃやってられんよ。」
そして15m後、アイナは大盛の料理を平らげた。エイミーも彼女の半分にも満たない量だったが完食した。
「あなた…、これだけの量を平らげるなんて…。」
「!!…(エイミー…、まさかあんたも…、アーニャみたいに…、『食べ過ぎ』…、いや、『太る』と言うんじゃないだろうな…!?)」
アイナはエイミーが言葉を詰まらせたのが気になった。果たしてエイミーは大盛を平らげたアイナに何と言うのだろうか?




