焦燥のアイナ
メフレックスの合図でレジーナは物資運搬の訓練を始めた。レジーナは手前から取って奥から積む、積荷を持つ際ひざを曲げる、迅速ながらも丁寧にの三つを満たしながらこなしていった。
(…あ~、こりゃうちなんか目じゃないって感じだな…。)
(まあ、うちも厭って程やってるからね。何かライバル登場ってやつ!?)
レジーナの手際の良さにアイナは自分が眼中にないように感じ、アーニャはライバル登場な感じでワクワクした。
次はアーニャの番だ。アーニャもレジーナ同様に手際良く物資運搬をこなしていった。かかった時間はレジーナとほぼ同じだった。
そして、アイナの番が来た。ところが…
「!!…つっ…!」
アイナは激痛のあまり積荷を落としてしまい、腰を庇った。そう、荷物を持つ際に腰を痛めてしまったのだ。
「アイナ、あなた二人が手際良くこなしていたのを見て早く荷物を運ぼうと焦っていたのかしら?」
メフレックスはアイナの焦りを指摘した。
「…うん…。」
アイナは頷いた。自分に焦りがある事を認めているのだ。
「同じ年代の二人が手際良くこなしているのを見て焦るのはわかるわ。でもね、焦るあまり早くしようとして基本を端折ってはいけないの。あなた、積荷を持つ際、早く運ぼうとしてひざを曲げなかったでしょ。それが怪我や事故の原因になるの。『迅速』さと『丁寧』さのどっちに重点を置かれるかと言えば後者の方よ。迅速にやっても乱雑だと意味がないの。逆に、多少時間がかかっても丁寧にやってくれた方が評価が高いのよ。じゃあ、今度は時間がかかってもいいから丁寧にやってみなさい。」
「うん。」
メフレックスはアイナに再び物資運搬の訓練の合図をした。アイナは再び訓練を始めた。今度はひざを曲げて積荷を持ち運び、丁寧に積んでいく事にした。アイナがかかった時間は二人の倍程度だ。
「よし、じゃあ今度は少しペースを上げましょう。」
「うん。(…またか…!)」
メフレックスはアイナにまたしても物資運搬の訓練の合図をした。今度はタイムを縮める事を目標とした。アイナは不服ながらも従う事にした。メフレックスはアイナに物資運搬の特訓を科す一方、アーニャとレジーナには様々なトレーニングを科したのであった。




