ライバルはミステリアス
ロードガルドは地底の世界で、洞窟のような世界だ。道の灯りを頼りに馬車は進んでいく。そして、シーマヘイムに向かう途中の街でアイナ達は窓越しに人々の営みを眺めていた。
「うわ~!この巨人おっきい~!」
アイナは大きな荷物を運んでいる巨人が気になった。
「これは『ゴーレム』といってロードガルドの主要カムクリよ。わたし達のレッドガルドのアマゾノイドもゴーレムの技術を流用して造られたカムクリなの。結構大きくて強いだけあって極めて重い物を造作もなく持てるわ。ただ、その強さ故に破壊を齎す恐れもあるの。だから歯車騎士団はゴーレムの悪用を防ぐ為にゴーレムに関する技術や情報を管理しているの。そして、あなた達が参加する『マッスルゴーレムコンテスト』は通称『筋肉巨人祭』と言って、『ごつい筋肉はゴーレムの如し』という表現からこの名がついたのよ。」
メフレックスはゴーレムについて説明した。
「なるほど…、だからマッスルゴーレムっていうんすね…。(そう言えば…、うちが初めてトレーニングルームを利用する日…、エイミーも筋肉の事をゴーレムのようで惚れ惚れするって言ってたね…。)」
「ゴーレム…、職人を目指す者として結構関心あります。(まあ…、ゴーレムの如き肉体はうちらブリジット族の女の目指すべき存在だしな…。)」
アイナはメフレックスのゴーレムに関する説明にエイミーの言葉を思い出した。アーニャはゴーレムに関心を示すと同時にゴーレムのような肉体こそブリジット族の女性が目指すべき存在であると確認した。
シーマヘイムの歯車騎士団管轄のAU会館に到着後、アイナ達が中に入ると、多くのAU達がロビーにいた。
「うわ~、結構いろんな人が~!」
「まあ、鉄騎士団管轄のAU会館に比べたら色んな種族の人が多いくらいで数は大して変わらないけどね。」
アイナは様々な種族の人達に驚く一方、アーニャは数は大して変わらないと客観的に捉えていた。
「受付で手続き等をしてくるから暫く待機なさい。」
メフレックスはアイナ達に待機するよう言いつけ、受付に赴いた。それから暫くして、セミロングの藤色の髪にて右目が髪で隠れ、紫装束のアイナ達と同い歳のミステリアスな女性がアイナ達の元にやって来た。
「あなた達、初めまして。わたしは『レジーナ』で、『白の世界』出身の『ゲルディアン族』の18歳の女性よ。あなた達も『MGC』に参加するのかしら?」
レジーナは自己紹介のついでに、マッスルゴーレムコンテストに参加するのか尋ねた。
「『MGC』って何だよ?」
アイナはMGCが気になった。
「『マッスルゴーレムコンテスト』の頭文字だよ!」
アーニャがアイナの疑問に答えた。
「そうか…、マッスルゴーレムコンテストか…!…え~!?あんたも参加すんの~!?」
アイナはMGCの意味がわかったと同時に相手もマッスルゴーレムコンテストに参加するのか気になった。
「『あんたも参加すんの』って事は、わたしと同じようにMGCに参加するのね。なら、二の月の九の日までせいぜい足掻きなさい。…あ、そう言えば名前聞いてなかったわね…。」
レジーナは二人の名前を聞いていない事に気付いた。
「うちはアイナ。レッドガルド出身のブリジット族の18歳の女さ!」
「同じくアーニャ。ブリジット族の女だし、身体なら自信あるよ!」
アイナとアーニャも自己紹介をした。
「ブリジット族のアイナとアーニャね。じゃあ、あなた達に氷の加護を。」
「またな~!(何か上から目線で気に入らないな…。)」
「レジーナにも火の加護を。」
アイナとアーニャはレジーナと別れるが、アイナはレジーナのやや不遜な態度が内心気に入らない感じだった。間もなくメフレックスが戻って来た。
「アイナ、アーニャ、ミーティングするわよ。」
メフレックスは小会議室にアイナとアーニャを連れた。果たしてどんなミーティングが行われるのだろうか?




