ニュートラル科の発表
「…うち…(…まただよ…、また何を言おうとしてたか忘れちまったよ…。)」
アイナはまたしても緊張していた。
(『あなたは心身共に変わった筈よ、自信を持ちなさい。』…、そうだ…、メフレックス姐ちゃん…、うち…。)
アイナはメフレックスの言葉を思い出した。そして…、
「…うちはニュートラル科五年のアイナで、尊敬する人は鉄騎士団長のメフレックス様です!」
アイナは緊張を振り払って自己紹介をした。
「おいおい、自己紹介じゃねえっての!」
「『自分の科と級長の紹介』と全然関係ないだろ!」
「あんた人の話聞いてたのかよ!」
発表の内容が趣旨と外れており、男子学徒達はやじを飛ばした。
「ご静粛にお願い致します!」
進行係は男子学徒達に言い放った。
「…うちは…、メフレックス様と出逢うまで…、自分のやりたい事が…、見つかりませんでした…。メフレックス様と出逢って…、身体を鍛えて貰って…、人として大切な事も教えて貰って…、新しい発見がありました…。終わります…。」
アイナはメフレックスとの出逢いについて話した。
「はあ!?全然関係ない話してんじゃねえよ!」
「やっぱ『脳筋アイナ』は伊達じゃないな!」
発表するも趣旨と終始外れている事からまたもや男子学徒達のやじが絶えなかった。
「お黙りなさい!!」
(はっ…、その声は…。)
アイナは聞き覚えのある声にはっとした。メフレックスが会場に来ていたのだ。鉄騎士団団長が直々に会場にやって来た事に場全体が動揺した。
「私は、鉄騎士団団長メフレックス!彼女は私の大切な者の一人です!その者を侮辱する事はこの私が赦しません!!」
「…。」
やじを飛ばした男子学徒達はメフレックスの気品を残しながらも途轍もない威圧感に思わず引き下がった。
「アイナ、良い発表だったわよ!」
「…。(メフレックス姐ちゃん…、ありがとう…。)」
メフレックスはアイナを拍手して褒め称え、アイナは黙って頷いた。そして、マットが発表を始めた。
「我々ニュートラル科は、アイナの申す通り、未だに自分のやりたい事がわからない者が多いです。そんな中で彼女はこの会場にわざわざいらっしゃった鉄騎士団団長メフレックス様に出逢った事を機に、新たな道を踏み出しました。それで、それがし共の案件は『鉄騎士団との交流をより深める』事です。それがし共がこのアカデミーで学徒として学問に勤しめるのは、他でもない鉄騎士団のおかげです。だからこそ、それがし共は鉄騎士団と交流を一層深め、より研鑽を積み、社会に出て、鉄騎士団に恩返しをして参りたいと思います。どうかこのニュートラル科五年級長マットに清き一票をお願い致します。」
マットはアイナの言葉を利用して理路整然と発表し、会場が拍手の渦に包まれた。
「ニュートラル科の方々、ありがとうございました。それでは次…」
進行係によって次々に色んな科の者達が発表していった。そして最後は…
「ありがとうございました。最後に…、士官科、お願い致します。」
進行係に促され、級長エイミーと紹介役であるブリジット族の男子学徒が登壇した。いよいよ士官科の発表が始まるのだった。




