不当な人選
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また日を改めて、アカデミーのニュートラル科五年学級では、学徒王総選挙に関する話が行われた。
「では、先日のミーティングで私達ニュートラル科では『鉄騎士団との交流をもっと深める』という案で決まりました。今度は学徒王総選挙でのニュートラル科並びに、その級長の紹介の担当を決めたいと思います。」
ルミナは学級全体に学徒王総選挙でのニュートラル科並びに級長の紹介担当を決めようと伝えた。
「では、マット級長。お前にとって紹介の適任の者は?」
ルミナはマットに紹介の適任について尋ねた。
「…僕は…。(駄目だ…、人前では口下手になってしまうアイナだけは…、選べない…。なら一体誰がいいんだ…?)」
マットは答えに苦しんだ。人前で口下手になってしまうアイナが選ばれる事だけは何としても避けたかったのだ。しかし…、
「先生、あの時立派な発言をしたアイナが一番適任です!」
「俺もそう思います!」
「あたしも!」
「うちも!」
一人の学徒がアイナが適任だと述べると他の学徒達も立て続けに同じ主張をした。アイナとマット以外全員がアイナが適任と主張したのだ。
(なっ…、何で皆うちばっか選ぶんだよ…。うちは人前じゃ口下手だってのに…。)
(くっ…、人前で話すのが苦手なアイナにだけはさせたくないと思ってたんだが…。)
アイナとマットは軽い気持ちでアイナを選ぶ学徒達の裁定に難色を示した。
「では皆さん、アイナが紹介で宜しいでしょうか?」
ルミナは学級全体にアイナが紹介担当で良いか尋ねた。アイナとマットは黙って頷く中多くの学徒が狂喜した。
「では、アイナ。学徒王総選挙でのニュートラル科と級長の紹介はお前に任せたよ。」
ルミナはアイナに学徒王総選挙での紹介役を任命した。
「うん…。(…何か嫌な感じがする…。)」
アイナは頷くも内心難色を示した。多くの学徒は狂喜した。自分が選ばれずに済み、自分が恥をかかなくて良かったからであった。
「うち…、クラスの皆から学徒王総選挙での紹介を任されたんだけど…。人前で話すの苦手なんだよね…。」
学務を済ませた後、トレーニングルームに来たアイナはエイミーやアーニャにタチアナとメフレックスを交えて自分が紹介を任された事を話した。
「わたしは級長だから嫌でも人前で話す事になるわね。」
エイミーは士官科五年の級長のため必ず人前に立つ事になっている。
「うちも紹介を任されてんだよね…。確か自分の科と級長の紹介が内容だったね…。」
アーニャもアイナと同じように紹介を任されていると伝えた。アーニャの場合は産業科なので。
「あなた達…、皆して人前で話すのね。いい経験になると思うわ。」
タチアナは人前で話す事はいい経験になると述べた。
「アイナ…、あなたは人前で話す事は不安と言ったけど…、わたしはあなたならしっかり出来ると思っているの。あなたはここに通って心身共に結構変わった筈よ。自身を持ちなさい。」
メフレックスはアイナに自信を持つよう伝えた。
「うん…。(何でだろう…、メフレックス姐ちゃんに言われると…、何だって出来そうな気になってくる…。)」
アイナはメフレックスに励まされて不思議な気持ちになった。休憩が終わり、アイナ達は鍛錬に勤しんだ。
そして遂に学徒王総選挙の日を迎えたのだった。




