学徒王総選挙~告知
アカデミーのニュートラル科・第五学年教室では担任のルミナが教壇に立っていた。アイナをはじめ学徒達は話をしている彼女の方を向いていた。
「では、本日の講義は終わりですが、皆さんにお伝えすべき事があります。一月後にアカデミー毎年恒例の『学徒王総選挙』が実施されます。対象となるのは、第五学年の各科の級長で、対象者全員が第六学年を修了するまで『学徒組合』の幹部となります。対象者の中で最も票数の多い者が『学徒王候補』となり、第六学年に進級すると同時に『学徒の頂』こと、『学徒王』として学徒組合の長となります。ただ、皆さんに注意すべき事があります。毎年うるさく言う事ですが、決して人気投票ではありませんので、その事を忘れずに選挙にお臨み下さい。以上ですが、清掃をしてから解散とします。」
ルミナは学徒王総選挙の告知をした後、清掃をしてから解散するとことわった。アイナは清掃を済ませた後、いつものようにAU会館のトレーニングルームに向かった。
学徒王総選挙…選挙によって学徒王候補を決めるアカデミー最大のイベント。一部の学徒にはお祭り以上に狂喜ものだ。
学徒組合…アカデミーの教諭と学徒の間に立つ中間組織でアカデミー内の『学徒会館』を拠点とする。アカデミー第五学年と第六学年の各科の級長が幹部となる。前者は学徒王総選挙の後に就任する。アースガルドでは『生徒会』と呼ばれる。
学徒王…学徒組合の長で『学徒の頂』とも呼ばれる。学徒王候補が第六学年に進級する事によって就任する。自分の一番と思う者が選ばれて狂喜乱舞する者も少なくない。アースガルドでは『生徒会長』と呼ばれる。
学徒会館…学徒組合の拠点で学徒組合幹部が教員を交えてアカデミーに関する様々な事について話し合ったりする施設。
「…という事なんだよ。みんなはどう?」
アイナはエイミーやアーニャにタチアナとメフレックスに学徒王総選挙について話した。
「わたし、士官科の級長だから選挙後に学徒組合幹部は間違いないわね。ただ…、アカデミーについてどんな風にしていきたいかが思案のしどころだけど…。」
エイミーは士官科の級長の為、学徒王総選挙に出馬する運びだ。
「うちは級長じゃないから幹部にはなれないね。まあ、自分のいる産業科の級長に何か働きかけられるといいんだけどね…。」
アーニャは級長でないため自分の科の級長に働きかける予定だ。
「アイナ、あなたは級長ではないけど、どんなアカデミーにしていきたいかしら?」
タチアナはアイナにどんなアカデミーにしていきたいのか尋ねた。
「う~ん…、うちは…、昼食おかわり自由だったらいいな!」
大喰いのアイナは何と、『おかわり自由』だといいなと語った。
「…。」
「…呆れたね…。」
「そんな案件誰も認めないわよ!」
エイミーは無言かつ無表情で、アーニャは呆れ顔で、タチアナは突っ込みを入れた。
「ふふっ…、あなた達も結構大事な時期に来ているのね。アカデミーの未来は第五学年以上の者の働き次第で左右されると言っていいわ。だから…、自分だけでなく、これからアカデミーに入校する者達、そして未来の事も考えて行動なさい。」
メフレックスはアイナ達に忠告した。
「はい。」
「うん。」
アイナ達は了解し、再び鍛錬を再開した。




