194話 湖の女の子
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「……」
「……」
私は今、真剣に湖を眺めている
じっくりしっかり見てあるものを待っていた
静かに……動かず、ずっと――
チャポン
「……!引いて」
「うん!」
引っ張られるそれを力一杯引く
そして少しすると何かの影が現れ始めてついに獲物が現れた
陸まで引っ張り出した獲物をハンマーで叩きまくって倒す
ドロップ品……魚の切り身×1
「倒した!」
「……ん、良いね」
私は隣にいる女の子とハイタッチをした
「本当に釣れたね」
「……当たり前」
なんでこんな状況になっているのかと言うと――
・・・
・・
・
蜘蛛から逃げ切った後――
「お腹すいてきた」
戦い続けたから空腹ゲージがだいぶ減っていた
水はあるけど食べ物がもう無い
「誰かから奪うかー」
HP少ないから魚と戦ってたら死んじゃいそうだし食べ物持っていそうな人探そうかな
『もう奪うことしか考えてない』
『HP少ないししゃーない奪え』
『略奪者ラビリル』
人を探そうとして周りを見渡すと遠くの方に何か動くのが見えた気がした
「モンスター……かな?いや、プレイヤー?」
遠すぎて判別が出来ない
モンスターでもプレイヤーでも食べ物に変わりは無いし近づいてみよう
「さーて、あれは何かな……」
だんだん近づいていくとプレイヤーであることが分かった
座って何かしてる……?
『プレイヤー?当たりじゃん』
『遠くてよく見えん』
『湖突き落とせば窒息させて勝てるよ』
おお、ナイスアイデア!確かに突き落としてそのまま沈めてしまえば倒せるじゃん
それを実行する為にゆっくりとバレないように近づいていく――
「なんか釣りしてるね」
何しているかが分かるくらい近づいた
小学生くらいの女の子が微動だにせず釣竿を持って獲物を待っているように見えた
「女の子突き落とすのは可哀想じゃない?」
小声で皆んなに話しかける
『さっき囮にした人も"女の子"だよ』
『この世は所詮、弱肉強食よ』
『かまわん、やれ』
『キャラメイクしてるだけだろ』
年下の女の子とかほとんどいないからちょっと躊躇っちゃったけどよく考えたら見た目変えれるんだった
釣りしているところゴメンだけど倒してしまおう
「ごめん、さようなら!」
「……」
限界までバレずに近づいたところで走って蹴り飛ばす…………が女の子はびくともしなかった
攻撃された女の子はその場を動かずに首だけ私の方に向けてジッと見てきた
「あ、こんにちは」
「……ん」
女の子は一言だけ呟くとまた湖の方を向いた
え、何にも反撃無し?
「……釣りする?」
意味不明な行動に戸惑っていると女の子がそんなこと言ってきた
ご丁寧にもう一本、新しい釣竿まで手に持って私に渡そうとしてくる
「じゃ、じゃあ……しようかな」
・・・
・・
・
で、今に至る
『なんで不意打ちで倒そうとしてた人と釣りしてるんですかねぇ』
『しっかり食料ゲットしてて草』
『餌無しでなんで釣れるんだよw』
『未だに攻撃が効かなかった理由考えてるの俺だけ?』
そうだ!釣りとかその他諸々で忘れるところだったけどなんで私の攻撃が効かなかったんだろう?
聞いても良いやつかな……?答えてくれそうだし聞いちゃお
「ねえ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「……なんでも聞いて」
「なんで攻撃が効かなかったの?」
「……これのおかげ」
女の子がメニュー画面を操作してから私に見せてきた
《平和主義》……ダメージを全く受けないが自身もダメージを与えることが出来ない、このスキルは破棄することが出来る
なるほど、そりゃ攻撃が効かないわけだね
『強い……のか?』
『ダメージを受けないと言うことは飲み食いしなくても生きれると言う事か』
『サバイバルにおいて最強のスキルじゃねぇか!』
『プレイヤーやモンスターに邪魔されず宝探し出来るの良いね』
コメントを読んでいたら女の子の方の釣竿がヒットしていた
「……ん!」
引き上げるのに苦戦した私と違って女の子は一回引くだけで陸まで魚を引っ張り出していた
力強いね、筋力特化なのかな?でもスキルでダメージ与えられないし筋力特化の意味が無い気がする……
「……トドメは頼んだ」
「攻撃出来ないもんね……」
私がいなかったらダメージ与えられないのにどうやって魚を倒すつもりだったんだろう……?
女の子が釣り上げた魚をハンマーで叩きまくって倒した
「……筋力低い?」
「ステータスポイント振ってないから上がってるの装備分だけだよ、それでえーっと名前聞いて良い?私はラビリル」
そういえばこの子の名前知らない
「……名前、ノア」
「ノアはさっきのを見るに筋力特化?」
「……そうだけどそうじゃない」
「どう言う意味?」
またもノアがメニュー画面を操作して私に見せてくる
《自由自在》……ステータスポイントを自由に割り振り直すことが出来る
「これまた便利なスキル持ってるね、でもプレイヤーを倒せないのにどうやって二つ目のスキルを?」
「……蜘蛛が沢山の場所に落ちてた」
「あ、うん。理解した」
あの人のスキルだった
次回は12日、お昼12時に投稿します




