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001 プロローグにしてエピローグ


「私はソフィー・フォルスター男爵令嬢との仲に真実の愛を見出した。故にヴィオレーヌ公爵令嬢。君との婚約はこの場をもって破棄させていただく」


 ここは王国が管理運営する王立アイネイアス学園。

 

 賢妃として名を残し、王政を支えた故アイネイアス王妃の発案から生まれたこの学園は王侯貴族豪商農民といった身分を分け隔てなく受け入れる。

 

 もちろんそれは建前上の事であって実際には入学には入学試験に合格する以外にも多額の入学金が必要であり、さらに身辺調査も行われるので本当の意味で誰でも、というわけではないが……

 

 ともあれ、そのような経緯のある学園の、今日は上級学生の卒業式典当日。さらに言ってしまえばここはその卒業式典の会場だ。

 

 現国王リシャールをはじめ、国の重鎮、遠方地の有力貴族はもちろん、市井からも多くの参加者がいる前で王太子フランセルクは自らの婚約者であるヴィオレーヌに一方的に婚約破棄を告げた。

 

 

 騒然とする会場。

 

 

 だが、一部の事情を知る者たちは違った。

 

 

(長かった)





 それが正直な感想である。

 

 

 時は遡り、卒業式典が行われる約3年前、とある学園内のサロンでの出来事。

 

 

「ヴィオレーヌ。すまない。俺との婚約解消を本気で考えてくれないか」

 

 

 ロイエンタール王国の第一王子、フランセルクは自らの婚約者、公女ヴィオレーヌに対し、深々と頭を下げた。

 

 

 これはこの壮大な茶番劇が生まれるまでの物語である。

 

 

 

Q.ヴィオレーヌって公爵令嬢?それとも公女?

A.次話以降でも記述しますが、ロイエンタール王国の属領、イグナート公国のお姫様なので公女です。ヴィオレーヌの家はロイエンタール王国から公王位を預かっています。それと合わせて公爵位もいただいている形です。フランセルクが「公爵令嬢」と言ったのはわざと身分の低い方をいうことで貶すためです。

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