表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第2章 アメリア、貴族と認められる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/321

セーバの街の印象 〜ダミニ視点〜

(ダミニ視点)


 私の名はダミニ。

 今回、セーバの商業ギルド長として派遣されてきたルドラの秘書をしている。

 私は、バンダルガから連れて来た職員と共に、今日一日かけて集めた情報を整理していく。

 モーシェブニ魔法王国の北方、セーバ領の領都セーバ。

 王都からは馬車で10日程の距離に位置する。

 統治者は、セーバ領の現領主ディビッド公爵の娘であるアメリア公爵で、現8歳。

 国王より正式にセーバの街の統治を認められた領主で、しかも、名目上ではなく、実質的なこの街の指導者らしい。

 主要な産品はウィスキーと、羅針盤を含む道具類、アクセサリー、武器、魔道具等の工業製品。

 今のところ、他所では手に入らない新しい酒、ウィスキーが注目を集めているけど、むしろ特筆すべきはこの街の工業製品の方だ。

 羅針盤だけじゃない!

 お風呂の湯沸かし器に水道とポンプ、振動の少ない馬車に動力不明の船、ベッド。

 一般に売られている武器や道具類だって、どれも信じられないほどに高品質だ。

 アクセサリー等の細工も精巧だし、デザインも見たことのない斬新な物や、美しく洗練された物が多い。

 とても、辺境の街の職人が作ったとは思えない出来だ。

 初めは、一体どこからこれだけの職人を集めてきたのかと思ったけど……。

 色々と調べるうちに、更に驚愕の事実が判明した。

 この街の人口はおおよそ2,3千人ほどで、その(ほとん)どがこの1年程で移住して来たという。

 今でも毎日数人、多い時には数十人の人間が移住を希望して、この街を訪れている。

 だが、急激な人口増加による混乱は(ほとん)ど見られず、街の治安は良く、失業者もホームレスも見られない。

 それは、希望があれば、移住者の職も住居も、全て領主が用意してくれるから……。

 ただし、試験にパスできればだけど……。

 この街の市民権を得るのに、金銭や魔力は必要ないらしい。

 ただし、既定の試験にパスする必要がある。

 文字や計算、街の法律。

 これらについての試験にパスし、試験官の面接で合格がもらえると、晴れてこの街の市民権と、セーバリア学園で正式に学ぶことのできる権利が与えられるらしい。

 セーバリア学園……。

 アメリア公爵が作ったというこの学校が、間違いなくこの街の発展の鍵だ。


『アメリア様が、平民にも無料で学問を授けてくれる』


『今までとは比べ物にならない程魔法を使えるようになった』


 そんな風に、街の住民たちは皆、アメリア公爵に感謝し、彼女のことを慕っている。

 でも、これは、決して善意の奉仕なんていう慈善事業ではない。

 これは、高度に計算された経営戦略だ。

 どのような教育をすれば、あんな達人レベルの熟練魔術師を育てられるのかは不明だけど……。

 現実的に、この街の住民はその魔力量に関係なく、皆一流の魔術師だ。

 魔法による結果は単純な魔力量だけではなく、術者のイメージ力や魔力操作の技術等によっても変わってくる。

 だから、同じ魔法で同じ結果を出すにしても、術者の技量により必要な魔力は違うものだ。

 これは、今までにも多くの魔法研究者や熟練の魔術師によって言われ続けてきたことだ。

 なら、なぜ皆が魔力量のみで能力を測ろうとするのか?

 なぜ、魔力の少ない者の中に、一流の魔術師は出ないのか?

 単純な話だ。

 元々持っている魔力が少なくては、魔法の使い方を練習しようにも、ほとんど練習ができない。

 魔力の多い者が日に10回使える魔法が、魔力の少ない者は日に1回しか使えない。

 これでは、魔法の技量に差が開くのも当然だ。

 結局のところ、魔力の多い者はどんどん魔法を使い技術面でも上達し、魔力の少ない者はそれを黙って見ているしかないのだ。

 でも、もし個々の魔力量に関係なく、魔法の技術を上げるノウハウがあるとしたら?

 茶道に代表される倭国の技術体系の中には、そのようなものもあると聞いたことがある。

 決して、不可能ってわけではないんだろうけど……。

 ともあれ、私が見聞きしたところでは、現実にこの街の住人は、通常の1,2割程度の魔力で魔法を使っているように見える。

 これは、魔法の結果だけを見れば、この街の住人の魔力量が10倍になっているのと同じことだ。

 人口数千人の中堅都市……。でも、労働力が生み出す結果は数万人規模の大都市と変わらないということになる。

 大体、普通に給料を払って、皆が10倍の仕事をしてくれるなら、雇う側は大儲けだ。


 初めはモーシェブニ王家の資本が投入されているのだと思ったけど、いくら調べてもそういった話は全く出てこない。

 それどころか、8歳の子供の統治にも関わらず、親の影すら見当たらないのだ。

 平民の家庭だって、ここまで放任主義にはしないと思うんだけど……。

 まぁ、ともかく!

 色々と非常識な街ではあるけど、この街は当たり、大当たりね。

 これから、忙しくなるわ。

 当初の思惑はどうあれ、統括本部が“出張所”ではなく、初めから“支部”を作るよう指示してきたのは英断だったわね。

 この街の実質的な経済力は、既に数万人規模の大都市と変わらない。

 まだ、貿易都市として機能していない今でさえも……。

 今後、この街はこの国の、いえ、この世界でも有数の主要都市に発展していくだろう。

 まずは、人材の確保かしら……。

 連れて来た人数じゃ話にならない。

 今後の仕事量を想像して、私は大きな溜息をついた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生幼女は教育したい!2巻
 書籍2巻10月10日発売です!!

転生幼女は教育したい!1巻
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ