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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第1章 アメリア、領主となる

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子供会議3

「ゼロンさんの方はどうですか?」


「はい、こちらは宿屋の方は終わりました。

 今はレボル商会さんの建物の細かな手直しがあるくらいで、急ぎの仕事はありません」


「では、ユーノ君とアンさんを、しばらくお貸しいただけますか?」


「それは勿論です。

 元々この子達は、もうお嬢様の専属だと思っておりますから、自由に使っていただいて構いません」


「助かります。

 それで、その間、ゼロンさんには居住区の家と、新しい宿屋の建設をお願いしたいのですけど。

 宿屋は3軒ほど。

 居住区の家は100軒程お願いします」


「100軒!?」


 驚くゼロンさんに、“建売住宅”について説明する。

 この国では、基本建物の建築は全て注文住宅だ。

 空き家が売り買いされる場合はあるが、新築の家についてはお客の注文があって初めて作られる。

 昔は日本もそれが当たり前だったから、驚くのもわかる。

 私はまとめて家を作って、それを販売することのメリットを説明していった。

 規格が統一された家を建てることで、図面は何パターンかで済む。

 必要な資材も、まとめて確保して輸送する方が、遥かに安上がりで効率がいい。

 実際の建築も、一度に同じ作業を繰り返した方が効率がいいし、新人が仕事を覚えるのも早くなる。

 流れ作業や分業、工場制手工業といった近代の大量生産に対応したやり方だ。

 これなら最近移住してきた見習いたちでも十分戦力になるはずだ。

 ゼロンさんは、今までのやり方と違い過ぎて、かなり困惑している様子。

 でも、経済学、といっても日本の義務教育で習う程度の簡単なものだけど、それでもそういった物の考え方を知っている子供たちの理解は早い。


「あぁ、なるほど。確かにその方が効率がいいですね」と、納得顔のユーノ君。


「ウィスキーの製造も、分業体制をとってから一気に生産量が上がりました」とは、ハーべ君。


「でも、最低一度は全体の流れを体験させないと駄目だって聞いたよ」と、アンさん。


「この場合は、其々(それぞれ)の作業をまとめるだけで、結局全ての作業に関わるわけだから、問題無いと思うよ」と、ユーベイ君。


「ええ、それにウィスキーの製造に関しては、職人の引き抜き、製造方法の秘匿といった意味合いからも完全分業は有効ですし、各作業工程の責任者は全体の流れを把握している者達ですから問題ありません」と、レジーナが話をまとめる。


 親たちは、自分が理解できない話を当然のように議論する自分の子供を見て、複雑そうな顔をしている。

 そして、フェルディさんは……何かすごい顔をしている。

 今すぐ詳しい話を聞きたいって顔で見られたけど、そこは後にしてもらう。

 これは授業ではなく、会議だからね。


「それで、僕とアンは何をすればいいんでしょう?」


 脱線した話題をユーノ君が本筋に戻す。


「ユーノ君には灯台の設計を、アンさんには羅針盤の製造をお願いします」


 どちらも、連邦の船をこのセーバの港に呼び込むための餌だ。

 羅針盤については後で作り方を含めて細かく説明をすることにして、町に灯台を作ることについては、“灯台”とは何か、ということも含めて、皆に説明しておいた。

 港の位置を知らせるためのただの篝火ならアルトさんも他国で見たそうだが、光の帯を回転させるような“灯台”など見たことがないそうだ。

 何のためにどういう物を作りたいのか、どこに作るつもりなのかを伝え、細かな話はまた改めてユーノ君と話し合うことにした。

 場所についてはまだ話を通してないけど、多分何とかなるだろう。



「では、最後に、ユーベイ君の報告をお願いします」


「はい、アメリア様。

 え〜と、申し訳ありません。

 アメリア様に教えてもらった船の方は、まだ完成していません。

 スクリューで進む仕組みは理解できたんですけど、小さな模型で試作してみても、羽のちょっとした違いで随分違いがでるようで……。

 どの形が最適なのか、まだよく分かっていません」


 そう、ユーベイ君にはスクリュー船の試作をお願いしている。

 ただ、これは私も詳しいことは全く知らないので、アイディアだけ伝えて、後は完全にお任せだ。

 最終的には魔力を燃料にしたエンジンみたいのを作って、それで大型船を動かせればと考えている。

 商業ギルドの資料によると、倭国でもカラクリと呼ばれる似たような研究はされているらしいけど、まだ実用レベルには達していないらしい。

 将来的には、倭国とも技術協力ができればと考えているけど、それはしばらく先の話だろう。


「構いませんよ。

 あれは私にとっても思いつきの話ですし、実現には何年もかかると考えていますから……。

 慌てずのんびり研究を進めて下さい。

 それより、新しく移住してきた漁師たちの様子はどうですか?

 漁獲量の方は問題ありませんか?」


「はい、そちらの方は順調です。

 僕が“圏”で魚の群れを捕捉して、それを皆で協力して獲るという方法をとっていますが、個々がバラバラに群れを追うよりもずっと効率がいいです。

 漁獲量も十分で、獲れ過ぎた分は新しく作った生け()の方に放してあります」


「分かりました。

 そちらも問題無いようですね」


 私はユーベイ君の報告を聞きながら、そろそろ頃合いかなと思案する。

 そこに丁度良く聞こえてくる男の怒鳴り声。

 本当に違う意味で期待を裏切らない人だなぁ。

 そう思いながら、ノックもなく会議室に乱入してきた男に視線を向けた。


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