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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第1章 アメリア、領主となる

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子供会議

 セーバの町に戻った翌日、私は早速セーバ小学校の会議室に主要メンバーを集めて、セーバの町の現状を確認していった。

 メンバーはセーバ小学校立ち上げ当初からの子供たち5人に、レジーナとレオ君。

 農家の取りまとめ役のアグリさんに職人のゼロンさん、男爵のアルトさん。

 それに、レボル商会のフェルディさんだ。


「では、改めて、今後のセーバの発展に向けての会議を始めます。

 その前に、フェルディさんには、先にメンバーの紹介を簡単にしておきますね。

 ここに集まってもらってるのが、現状セーバの町の首脳陣になります。

 えぇと、アルトゥーロ男爵とレオ君……レオ男爵はもうご存知ですよね?『レオナルドだ!』」


 ごめん、レオ君の名前忘れてた……というか、初めから覚えてなかった。


「はい、それで、そちらの男性が農家のまとめ役のアグリさんで、その隣りが息子のハーべ君。

 ハーべ君にはウィスキーの生産や、新しい農作物の研究をしてもらっています。

 以前にも会っていると思いますけど、彼が農業部門のリーダーです。

 次に、あちらの3人が、この町の職人一家のゼロンさん、ユーノ君、アンさん。

 こちらは、商会の建設などでもう何度も会っているからご存知ですよね。

 で、アンさんの隣に座っているのが、漁師のユーベイ君です。

 実は、この町の元々の漁師が、私のやり方に非協力的でして……。

 現状では、ユーベイ君に最近この町に移住してきた新しい漁師の人たちのまとめ役をしてもらっています。

 あと、彼には港の整備や新しい船の開発もお願いしています。

 最後に、レジーナの隣りに座っているのがカノン。

 彼女には、レジーナと同じでうちのお屋敷の侍女もやってもらってますけど、今回町に作った2つの宿屋の管理もお願いしています。

 で、これら全てのまとめ役をしてもらっているのがレジーナになります」


 そんな感じで一通りの紹介を済ますと、フェルディさんは複雑な表情で改めて会議室を見渡す。


「本当に、この町は子供が運営しているのですね……」


 改めて言われてみればその通りで、ここに集まる主要メンバーの3分の2は未成年だ。

 そして、その中でも私が一番年下で御年7歳……。

 まぁ、前世年齢も合わせれば私も3……とにかく!

 私は自分の年齢と幼女が主人公の異世界ファンタジーで免疫があるから何とも思わないけど、やっぱりこれって問題に見えるのかなぁ……。

 大人たちはフェルディさんの指摘に苦笑いしてるけど、それに対して問題視する声は上がらない。


「やはり、フェルディさんとしては心配ですか?」


 そう尋ねる私に、フェルディさんは首を横に振る。


「いえ、アメリア公爵様やこの学校の様子を見れば、そのような心配は起きません。

 はっきり言って、この学校の教育水準は、王都の学院のレベルを遥かに超えていますから。

 この学校で、アメリア公爵様の側近として、教師役や研究を行っているのです。

 経験の部分がありますから、全くの手放しとはいきませんが、正直うちの商会の若手の従業員より余程信用できます」


 そう言うフェルディさんの言葉に、子供たちの表情が緩む。

 ここまで来て、子供なんかに任せられないなんて言われるのも不本意だしね。

 ともあれ、私の側近の子達が無事受け入れられたようで一安心だ。


「では、会議を始めましょう」


 まずは、王都での報告から。

 私が国王陛下から正式に公爵位とセーバの町の統治権、それに貿易の権利を頂いたことについて。


「今までは、対外的にはアルトさんがセーバ領の代官で、セーバの町の正式な統治者はお父様であるディビッド公爵でした。

 私は次期領主として統治の勉強をしているという位置づけでしたが、これからは私がセーバの町の全権を握ることになります。

 貿易についても、正式な許可書を陛下より頂いてきましたから、もう遠慮はいりません。

 これから先は、ガンガン行きますよ!

 現実問題として、あまりのんびりとやっていると、高確率でザパド侯爵からの横槍が入ります。

 相手が油断している今のうちに、一気に畳み掛けるつもりで動いて下さい」


 皆の自覚を促すため、王都であった立食パーティーでの事を話して聞かせると、話を聞いた子供たちが殺気立つ。

 特に、レジーナが恐い。

 フェルディさんも、ザパド侯爵のことを直接知っているだけに、難しい顔をしている。

  

「フェルディさん、商会の本部をセーバ領に移す手続きは、既に済んでいるのですか?」


「はい、アメリア公爵様」


「あの、今まで通り、“アメリア様”でいいですよ。

 皆も公式の場以外での敬称は、別に何でもいいです。

 “様”でも、“先生”でも、“お嬢様”でも、呼びやすいので構いません。

 流石に、“アメリアちゃん”とかは嫌ですけど。

 私も好きに呼びますから、皆も気にしないで下さい」


 実際、この敬称については、私の中でも密かに悩みの種なんだよね。

 本来の私の身分を考えれば、ここにいる人たちは全員呼び捨てにしないといけないんだけど、前世の感覚的にすごく抵抗感がある。

 侍女だけは転生以来ずっと皆呼び捨てで呼んでいたから、半分家族みたいな感覚で呼び捨てにできるけど、外の人は無理だ。

 あと、前世年齢と実年齢のギャップも大きい。

 実年齢では私よりも年上の子供達なのに、前世の感覚だとバイト先の生徒たちって錯覚しちゃうし、そうかと思えばふとした瞬間に、年上の“お兄さん”、“お姉さん”に見えてしまったりもするし……。

 正直、非常に混乱するのだ。


「わかりました。

 では、恐れながら、今後もアメリア様と呼ばせていただきます。

 それで、レボル商会の本部移転の件ですが、こちらは既に正式な登記の書き換えが済んでいます。

 アメリア様には既にセーバの町に商会の“本部”を置く許可を頂いておりますし、商業ギルドの方の手続きも終わっています。

 今、ザパド領にある店は、登記上は既にレボル商会のザパド“支店”になります」


「わかりました。

 そうしたら、あちらの支店の業務に支障が出ない程度のものだけを残して、早急に商会の資産をこちらに移した方がいいでしょう。

 今回のウィスキーの件で、恐らくレボル商会は、再びザパド侯爵に目をつけられることになりますから。

 のんびりしていると、通行税だ何だと難癖をつけられて、ザパド領内から出られなくなる可能性があります。

 立食パーティーでの一件で、ザパド侯爵とは完全に敵対関係になりましたから、もうザパド領との棲み分けという線はありません。

 こちらは完全にあの領地を潰すつもりで動きますから、沈む船からはさっさと逃げ出すことをお勧めします」


「……了解しました。

 クボーストの父にも、そのように手紙を出しておきましょう」


 あれ?

 フェルディさんが若干引いてしまっている?

 大人達の顔色も若干悪い?

 この程度のことで怯まれても困る。

 少しは子供たちを見習ってもらいたいものだ。

 皆、好戦的な目で頷いているじゃないか。

 もうザパド侯爵との対決は確定事項なんだから、後は喰うか喰われるかだ。

 この町の領主として私が失敗すれば、恐らく私の代で私は貴族の地位を剥奪されるし、最悪処刑される。

 そうなれば、この町だってどうなるかわからない。

 本当に、弱肉強食なのだ。

 大人組の皆さんには、その辺をもっと自覚していただかないと困りますね。


 さて、次の案件は……。



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