貴族の社交 〜サラ王女視点〜
(サラ王女視点)
私はサラ。この国の第一王女だ。
魔力値は3100。
これはこの国の上級貴族並の魔力で、魔力量の多いことで知られるモーシェブニ魔法王国でも、ごく一握りの貴族しかこれだけの魔力は持っていない……。
そう、貴族並の魔力量。
私は、王族なのに!
この国の王族は、代々とても高い魔力を持って生まれる。
国王であるお父様の魔力は3500だし、お兄様の魔力は3600だ。
今は王族ではなくなってしまっているが、ディビッド伯父様の魔力も3600だと聞いている。
ちなみに、お母様の魔力は3200……。
王家の血が流れている訳でもないお母様ですら、私より魔力が高い。
王族の平均で考えるなら、私の魔力量ははっきり言って平均以下だ。
精々、ふつうの上級貴族程度……。
お父様もお母様も、魔法の威力は単純な魔力量だけでは決まらないからと言ってくれるけど、それならば、この国の評価が魔力量で決まるのはおかしいことになる。
お父様は、その巧みな魔力操作で学院のトップに君臨したアリッサ伯母様の話をしてくれたけど、そんなのは何の慰めにもならない!
だって、伯母様は元平民だ。
お父様はアリッサ伯母様のファンだから何とも思わないのかもしれないけど、王族の私が平民と並べられても侮辱にしか感じられない。
お父様に悪気がないのは知ってるし、別にアリッサ伯母様が嫌いという訳でもない。
でも、やっぱり納得いかないのだ。
そして、今度はお母様に従姉妹のアメリアの相手をするように言われた……。
今日の昼間に行われる立食パーティーで、貴族の顔を知らないアメリアの案内をするようにって。
そんなの、“王族”のすることではないと思う。
いくらディビッド伯父様の娘だからって、あんなに魔力の低い子の案内をさせるなんて。
魔力の低い私には、魔力の低い子の相手が丁度いいってこと?
……違う。
お母様はそんな人ではないし、多分、あのアメリアって子の事も気に入っている。
そもそも、お母様は見込みのない者を初めから相手にしない。
ディビッド伯父様だって、あの子の事、とても優秀だって言ってた……。
まぁ、伯父様は普段はとてもかっこいいのに、娘の話になるとちょっとおかしくなるから、あんまり当てにはならないけど……。
分かっている。
これは、私の気持ちの問題だ。
王宮の皆がアメリアの悪口を言うのを聞くと、私のことを言われているように感じてしまう……。
アメリアを見ていると、まるで魔力の低い自分の姿を見せつけられるようで辛くなるのだ。
アメリアは魔力が全然なくて、私よりもずっと大変だって頭では分かっているのに……。
私は必死に自分の中の嫌な気持ちに蓋をして、アメリアの待つ控室に向かった。
「ごきげんよう、サラ王女殿下。
本日はお手間をおかけしますが、よろしくお願いいたします」
そう言って貴族の礼をとるアメリアは、とても落ち着いた雰囲気で、とても初めて社交の場に出てきた子供には見えなかった。
「ごきげんよう、アメリア公爵。
今日は私がずっと付いていますので、安心してください。
では、行きましょうか」
私は気を引き締める。
今日は、私がこの子を守らなければいけないのだ。
きっと、この子は貴族の社交の恐ろしさが分かっていないのだ。
自分が陰で一体何を言われているのか、魔力の低い者がこの国ではどういう扱いを受けるのか。
田舎でずっと暮しているこの子には、想像がつかないのだろう。
何か言われて泣き出してしまったりしないように、私がしっかりと守らなければ!




