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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第1章 アメリア、領主となる

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クボースト

 ついにクボーストの街に着いた。

 セーバの町からおよそ30日。

 それでもかなり早いようで、通常ならこの倍はかかるそうだ。

 今、私は商人の娘風の格好をして、フェルディさんに連れられてクボーストの街を歩いている。

 実は、王領からザパド領に入る時に、この格好に着替えた。

 私はフェルディさんの取引先の娘で、商人の街であるクボーストを、後学のために見に来たという設定だ。

 私が公爵家の娘だなんてバレたら、色々と面倒だからね。

 特にザパド侯爵や、クボーストの街の代官……ボダン伯爵には知られたくない。

 色々と干渉されるのも面倒だし、なぜ私がこんなところに一人でやって来たのかと、変に勘ぐられても困る。

 多分、セーバなんて眼中にないから大丈夫だとは思うけど、万が一私の計画に気づいて妙な横槍を入れられたら、今のセーバではひとたまりもないからね。

 そんな訳で、特にザパド領では私はただの商人の娘で通している。

 まあ、この髪と瞳だからね。

 逆に貴族だって言っても、信用してもらえない気がする……。

 これでもうちょっと着ている服のグレードを下げれば、商人の娘だっていうのも疑われるレベルだ。

 ……実際、疑われたし!

 街の衛兵は、どう見ても庶民レベルにしか見えない私の薄い髪と、整った顔と、庶民には釣り合わない商人風の服を見て、フェルディさんがどこかの村から愛玩用に引き取ってきた子供だと決めつけた。

 これには私の正体を知っているフェルディさんの方が焦ってしまって、衛兵には本当に大事な取引先の娘さんだから滅多なことは言わないでくれと、言い募っていた。

 でも、まあ、これが現実なんだろうね。

 この国では、魔力の低い人は、本当にろくな仕事につけないから……。

 私のように魔力が低くて見た目のいい子供など、行き着く先は娼館と相場が決まっているらしい。

 前世の旅先でも娼館はよく見かけたし、娼婦の仕事をやっている人と仲良くなって話したりしたこともあるから、彼女達がみんな不幸だとは思っていない。

 話していてもみな普通の人だったし、特に悲壮感みたいなものもなかった。

 だから、私個人としては娼婦をやっているから不幸だなんて、安易に言うつもりはないけど……。

 それでも、もし私が転生した先が公爵家ではなかったら……と考えると、やはり複雑なものがあるんだよね。


 そんなこんなでやって来たクボーストの街は、正に商人の街で国境の街といった感じだ。

 まず外国人が多い。

 と言っても、この世界では髪や瞳の色は国内だけで見ても千差万別だから、正直人種の違いはよくわからない。

 若干浅黒い肌の人が多いかなぁって程度だけど、あれはたんに日に焼けているだけらしい。

 ここから更に南に行くと気候もかなり暑いらしくて、だから外国から来た商人は日に焼けている人が多いんだって。

 でも、決定的な違いは、肌の色などではなく服装だ。

 この国の服はチャイナ服やアオザイみたいな、全体に体のラインをはっきりと出す感じの服が多いけど、彼らの服はどちらかというとインドのサリーやアラブ世界のトーブみたいな、布をゆったりと纏う感じの服が多い。

 いや〜、こういうのを見ちゃうと、元旅人の血が騒ぐね。

 前世の旅で感じた、発展途上国特有の混沌とした街の熱気のようなものを感じる。

 まあ、実際にはこの国は発展途上国ではないし、この街も我が国で3番目の大都市なんだけどね。

 でも、私がそう感じてしまう理由は、ただ見慣れない民族衣装を着た外国人が多いってだけではないと思う。

 もちろん、前世の日本の街と比較して、というわけでもない。

 なんと言うか、街が雑然としていて、把握しづらいんだよね。

 場所によっては正に迷路状態になっていて、モロッコの旧市街で迷子になった時を思い出した。

 フェルディさんは私の手を握って離さないし、フェルディさんとで私を挟むように、サマンサが距離を離さず付いて来ている。

 まあ、そういう街なんだろうね。


 昨日、この街に着いた私は、早速レボル商会に案内されて、商会の大旦那であるフェルディさんのお父さんと話をした。

 私が来ることや、フェルディさんがセーバの町にお店を出す……というか、商会の本店を移すということは、事前に商業ギルド経由の王都からの手紙で報告を受けていたようで、私と会った時には非常に落ち着いた対応を見せてくれていた。

 商会を移すことについては、もう自分は第一線を退いた身だからお前の思う通りにすればいいと、フェルディさんと私が拍子抜けするくらいにあっさりしたものだった。

 ごねられた時のためにと、フェルディさんと馬車の中で色々と立てた作戦は、いい意味で無駄になっちゃったけどね。

 実は、フェルディさんのお父さんも、フェルディさんの事を心配していたらしい。

 レジーナの両親の件があってから、それまでのような野心的な考えを一切持たず、店を堅実に維持することばかりに腐心するフェルディさんの姿は、堅実というよりは臆病に近いもので、野心を持たない商人に未来はないものをと、内心やきもきしていたそうだ。

 今までの反動が一気に来たかと苦笑していたけど、クボーストの店はしばらく自分が見るから、フェルディさんはセーバの町で思う通りにやってみろと、後押ししてくれた。

 昨日、着いて早々にそんな風にきれいに話がまとまってしまい、今日は心置きなく街の観光……ではなく、視察をしている。

 今、向かっているのは、この街、この国の国境だ。


「この国と連邦との出入りは、自由にできるのですか?」


 道すがら尋ねる私に、フェルディさんがこの街と国境について詳しく説明してくれた。


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