表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第1章 アメリア、領主となる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/321

実験農場 〜フェルディ視点〜

(フェルディ視点)


 一旦屋敷に帰って食事を済ませ、午後は実験農場の方に向かった。

 実験農場は学校と違い、公爵家の北側、すぐ近くにあった。

 これは、麦畑かな。

 丁度刈り入れが済んだところらしく、畑には何も植えられていないようだが……。

 いや、あちらの畑には、まばらに何か植えられているな。

 ここからでは何が植えられているのかまでは確認できない。

 畑が広すぎるのだ。

 これ程の広さの畑は、農業の盛んなユーグ領ならまだしも、このような辺境の地ではふつうあり得ない。

 土地の有無の問題ではなく、そもそも人口に釣り合わないのだ。

 先程聞いた話だと、この町の人口は100人ちょっとで、漁業が主らしい。

 その基準で考えると、町の人口的にはこの3分の1か、精々半分の畑があれば十分だと思われる。

 それに、あの一角に集まっている民家がこの町の農家の全てなら、人数的にもこれ程の広さの畑を管理するのは無理だろう。


「ほお、なかなか広い畑ですね」


 暗に、広すぎではないか? という意味も込めてアメリア様に聞いてみると、また非常識な応えが返ってきた。


「ええ、と言っても、元々のこの町の畑はあそこに並んでいる農家の建物から、あそこの端までの範囲だけです。

 ここから西側一体は、セーバ小学校が管理する実験農場ですね」


「あの、アメリア様?

 実験農場の方が、こちらの農場よりも倍ほどは広いようですが……」


「まあ、畑を作ったり管理したりしているのが学校の生徒達というだけですから……。

 実際の持ち主は校長の私であり公爵家ですから、公爵家の直轄農場だと思っていただければよろしいかと」


「ちょっと、待ってください。

 この畑を全て、あの学校の子供たちだけで作ったのですか?

 大人の協力もなく?」


「そうですねぇ……。

 一応ここの責任者をしている生徒の家は農家ですから、父親に相談に乗ってもらったりはしているようですけど……。

 実際に作ったのは、全て学校の子供たちですね。

 うちの学校の上級クラスの生徒たちは、全員金魔法も豊穣魔法も使えますから、畑を作るのはそれほど大変ではありませんでした。

 この畑を作った時には、学校の生徒総出で取り組みましたから、畑自体は数日でできちゃいましたよ」


 頭が痛くなってきた。

 金魔法で畑を作る?

 建物の基礎工事ではなく?

 ただ土を掘り返せばいいってもんじゃないんだぞ。

 しかも、こんな広い範囲を?

 無理だろう。

 全員豊穣魔法が使える?

 豊穣魔法の使い手なんて、ユーグ領でもこの町の規模なら一人か二人だぞ。

 なんで石板もないのにってところは置いておくとして、豊穣魔法は大魔法だ。

 貴族並みの魔力がないと使えないと言われる魔法を、何でただの平民が使ってるんだ?

 訳が分からん。


「あの、アメリア様。

 ちなみに、その上級クラスの生徒というのは何人いるのですか?」


「えーと、学校創立前からいたメンバーだから、レジーナとレオ君を入れて7人かしら」


 7人!?

 ……いや、アメリア様を入れると8人か?

 どれだけの過剰戦力だよ。


 そこにレジーナの声が割って入る。


「いえ、確かにこの畑を作った時の人数は7人でしたが、今は10人です。

 先日、農家組の3人が昇級試験に合格しましたので、早速豊穣魔法を教えておきました」


「………………」


 いや、これは逆に正しいのか?

 魔力値100程度の平民でも10人集まれば貴族と同じだ。

 狭い範囲を分担して、皆で豊穣魔法をかけていったということか。

 なるほど、魔力の低い者に豊穣魔法など覚えさせても使い物にはならないと思われていたが、これは案外良い手かもしれんな。


「ただ、上級クラスの10人のうち、実際に豊穣魔法を使って農業を行っているのは、農家組の4人だけですが……。

 ちなみに、今年度の収穫の時点では、最近昇級した3人はまだ戦力になっていませんでしたから、今年度の収穫に関しては、ほとんどアメリア様とハーべさんだけの功績と思われます」


「あら、レジーナだって手伝ってくれたじゃない」


「それは、完全に痩せ細ってしまっていた土地を元に戻した最初の時だけです」


「それなら、私も手を出したのは自分の研究絡みの時だけだから、実質的には今年度の収穫は全て、ハーべ君一人の功績ということになるわね」


 えっ?

 どういうことだ?

 この畑を全て子供が一人で管理していると聞こえたが?


 そうして辿り着いたこの農場の研究棟? では、4人の子供たちが何やら種籾(たねもみ)の仕分け作業を行っていた。

 アメリア様の話では、一つ一つの種籾(たねもみ)を鑑定魔法でその特性ごとに振り分けているらしい。

 今朝、出された麦粥(むぎかゆ)も、そうして選別された物の一つだという。

 鑑定魔法でそんなことが分かるのか?

 私も商人の必須スキルとして、鑑定魔法は覚えている。

 だが、麦の特性など聞いたこともない。

 分かるのは、新しいか古いか、あとは生産地だけだ。

 試しに、そこにあった麦に鑑定魔法をかけてみたが……。

 結果は、『セーバ産の新しい上質な大麦』。

 それ以上何か読み取れないかと多めに魔力を込めてみたが、何も読み取ることはできなかった。

 鑑定魔法の結果も、魔力量によって精度が違ってくると聞いたことがある。

 ここの子供たちは全員私よりも魔力が多いということか?

 一流の商人である私よりも?

 差し支えなければと、子供たちの魔力量を尋ねてみれば、全員が100前後だった……。

 私の鑑定能力は庶民並ということか……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生幼女は教育したい!2巻
 書籍2巻10月10日発売です!!

転生幼女は教育したい!1巻
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ