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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第1章 アメリア、領主となる

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試食会? 〜フェルディ視点〜

「アメリア様、おはようございます。

 お待たせして申し訳ございません」


 そう言う私に笑顔で挨拶を返し、アメリア様は朝食の席を勧めてくれる。

 アリッサ公爵は、いらっしゃらない。

 先に済まされたのか、まだお休みなのか……いや、そもそも、平民と気軽に朝食をご一緒して下さるこのお嬢様が変わっているのだ。

 アリッサ公爵は元平民だと聞いているが、この屋敷を訪れて以来、まだ一度もお会いしていない。

 結婚して貴族の色に染まったか、公爵家としての立場を考えてかは分からないが、一般的な貴族の平民に対する振る舞いとしては、それが普通なのだ。

 このお嬢様は、魔力が少ないせいで他の貴族とも関わらず、こんな田舎に引きこもっているせいで、一般的な貴族の振る舞いが身に付いていないのだろう。

 昨日話した感じでは、この歳の子供とは思えないほど言動がしっかりしているが、一般的な貴族とはかなりずれてしまっているようだ。

 決して悪いことではないのだが、将来貴族としてやっていけるのかと、不安になるのも仕方のないことだろう。


 私が席に着くと、侍女が私とお嬢様の食事を持ってくる。

 出された料理は、麦粥(むぎかゆ)だ。

 ???

 前を見れば、お嬢様の前にも私と同じものが出されている。

 別に珍しい料理という訳でもないし、特に田舎の方ではこれしか食べられない事はよくある。

 疑問なのは、出されたのが公爵家の朝食の席でだということだ。

 相手が平民だからか?

 なら、お嬢様には別の料理が出されるはずだ。

 実は生活苦なのか?

 公爵領は他の領地と比べて、とても人口が少ない。

 つまり、税収が少ないということ。

 やはり、不安だ……。


「貴族の朝食に麦粥なんて、驚かれたでしょう?

 実は、通常の大麦よりも美味しくいただける麦を育てられないかと、研究しているのですよ。

 今、お出ししている麦粥は、通常の物よりも甘味があって食べやすい大麦を使っているんです。

 商品開発に付き合わせてしまって申し訳ないのだけれど、ぜひ一流の商人さんのご意見が聞きたくてお出ししました。

 別に怒ったりはしませんので、忌憚(きたん)のない率直な意見を聞かせていただけますか?」


「なるほど、そういうことですか」


 このお嬢様、町を発展させたいと言うだけのことはあって、色々と考えてはいるらしい。

 正直なところ、大麦など金の無い庶民の食べる物だから、腹が膨れればなんでもいいのだ。

 味よりも値段と量。

 安くたくさん手に入れば、それで十分に満足する。

 味に拘るような連中は、小麦を食べる。

 そもそも、大麦など食べはしないのだ。

 努力は認めるが、その辺は所詮貴族のお嬢様といったところか。


「では、遠慮なくいただきます」


 そう言って口に運んだ麦粥は、お嬢様の言う通り、確かに通常の麦粥よりも甘味があって美味かった。

 これは、料理人の腕なのか?

 お嬢様は、“美味しい大麦を研究”と言わなかったか?

 軽く聞き流したが、そもそも麦は麦だろう。

 どうやって甘くするんだ?

 確かに連邦から輸入している一部の麦の中には、他の地方の物よりも味の良いものもあるが……。

 それは産地の問題だろう?

 別の地方の種籾(たねもみ)を取り寄せて育てたということか?

 別の地の種籾など、通常は育たないか、味が変わってしまうものだが……。


「どうですか?」


「ええ、確かに普段食べる麦粥よりも、甘味があって美味しいですね。

 何か、特別な味付けでも?」


「いえ、料理人には平民の一般家庭で作るふつうの調理法で作るように言ってあります」


 どういうことだ?

 確かにこれだけ味が違うのなら、この町の大麦を指定して買っていく商人もいるかもしれない。

 ただ、王都までの輸送費を考えると、あまり利益の出る商品にはならないだろうが……。

 いや、問題はそこではない。

 一体どんな“研究”をすれば、甘い大麦が作れるというんだ?

 大賢者の知る魔法には、大麦を甘くする魔法もあるということだろうか?

 仮にそんな魔法があったとしても、使えなければ意味がない。

 昨日遠くから見たこの町の神殿は、どこにでもある地方の一般的な神殿に見えたが……。

 何か、珍しい魔法でもあるのだろうか?

 町の住民だけでなく、神殿の方も調べるようビーノに言わねばならんな。


「では、今日一日、私とレジーナに付き合って下さいね」


「それは構いませんが、どちらに?」


「学校です。

 私とレジーナは、この町の学校で先生をしているんですよ」


 学校?

 なんだ、それは?

 王都の学院のような場所が、こんな辺境にあるのか?

 それとも、領都にあるような、金持ちのための私塾のことだろうか?

 そんなところに通える金持ちや貴族など、この町にはいないだろう。

 それに、先生?

 生徒ではなく?

 訳も分からぬまま、ビーノには平民の住む町を調べるよう指示を出し、私は出かける支度を整えて、お嬢様たちと学校に向かった。


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