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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第1章 アメリア、領主となる

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フェルディ、悩む 〜フェルディ視点〜

(フェルディ視点)


「あの子の事は、何かわかったか?」


 朝、私が目覚めた頃を見計らってやって来た部下のビーノに、私はレジーナの事を尋ねた。

 昨日の話し合いの後、そのまま公爵家にお世話になることになった私は、ビーノにそれとなく公爵家のレジーナに対する扱いについて調べるように命じておいた。

 あのお嬢様とレジーナの仲は良好に見えたが、他との関係も良好とは限らない。

 あのお嬢様の知らないところで、レジーナが虐められていないとも限らないのだ。


「屋敷の他の使用人との関係は、概ね良好なようです。

 彼女に危害を加えるような輩は、この屋敷にはいないと思われます」


「そうか……。だが、たとえ肩書はお嬢様の側近でも、立場的には一番下だろう。

 辛い仕事を回されたりしているのではないか?」


 そう言う私に、ビーノは複雑そうな顔をして答えた。


「別に仕事を押し付けられている訳ではないようですが、私が今朝会った時には、男の使用人に混じって水汲みをしていましたね……」


 確かに、うちの商会でも、水汲み等の雑事は新人の仕事だが……。


「他の使用人の倍ほどのペースで、軽々と仕事を済ませていました」


「?? どういうことだ?

 水汲みの話ではないのか?」


「いえ、水汲みの話ですよ。

 レジーナさんは軽量魔法を使えるようで、その能力は大人の使用人にも全く引けを取らないそうです。

 それとなく他の使用人達にレジーナさんの話を聞いてみましたが、この屋敷であの子を下に見るような者は、お屋敷の侍女長と家令以外誰もいないそうです」


「では、侍女長や家令との関係はどうなんだ?」


「そちらも良好なようです。

 というか、この二人は公爵様たちと一緒に王都から来た者達らしく、この屋敷の使用人達は、この二人を非常に恐れています。

 屋敷の使用人達の話では、レジーナさんはこの二人の愛弟子らしく、事実上レジーナさんはこの屋敷の使用人のナンバー3らしいですよ」


「ハア? ちょっと、待て。

 彼女はまだ9歳の侍女見習いで……本当に次期当主の側近なのか?」


「はい、恐らく間違いないかと。

 ただのお嬢様の遊び相手などではなく、将来次期当主を支える側近として、教育されているのは間違いありません。

 レジーナさんは、基本的にはアメリア様の専属として動いているそうですが、それ以外の時には侍女長や家令の補佐として働いているそうです。

 毎日、朝晩には侍女長や家令からの講義のようなものも受けているそうで、他の使用人には決して任されない事務仕事も、レジーナさんには回されるそうです。

 どの程度のものかは分かりませんが、少なくともこの屋敷の使用人の中に、彼女を侮る者は存在しません」


 ビーノの報告に、私は正直頭を抱えた。

 決して、予想していたような悪い報告ではない。

 昨晩から今朝にかけての限られた時間での調査とはいえ、ビーノは確証のない報告はしない。

 屋敷の侍女のおしゃべりを、そのまま鵜呑みにするような男ではないのだ。

 恐らく、彼なりの方法で情報を検証した結果の報告なのだろう。

 であれば、レジーナは正真正銘公爵家の次期当主の側近候補として扱われ、教育を受けていることになる。

 これは、簡単には手放してくれそうにないな……。

 本来であれば、上級貴族の側近に取り立ててもらえるなど、ただの平民としては大出世だ。

 私としても、喜んで恩人の娘を任せただろう。

 だが、それが“公爵家のご令嬢”となると、話が違う。

 公爵家も、彼女の立場も、非常に微妙だ。

 今でも、公爵家への風当たりは非常に強い。

 それでも、王兄であるディビッド様が当主をされている間は問題ないだろう。

 問題は、ディビッド様が亡くなり、アメリア様が当主となった時だ。

 その頃には、今の王位も代わっている可能性が高い。

 その時、平民の血が混ざり、最底辺の魔力しか持たないあのお嬢様が、公爵として認められるかどうかだ。

 いくら“公爵家”の扱いが、既存の貴族制度の中で例外的な扱いとはいえ、その特別扱いが次期当主にも適用される保証はない。

 最悪のケースとして、アメリア様の側近であるレジーナは、(あるじ)と共に処刑という未来も有り得る。

 あの時の私のように、ちょっとした時流の変化や貴族の気まぐれで、全てがひっくり返ってしまうこともあるのだ。

 これは、決して安心できる状況ではない。

 私は、どうするべきかの結論を出せぬまま、呼びに来た侍女に従い、アメリア様の待つ食堂に向かった。


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