表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第1章 アメリア、領主となる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/321

地図作成

「これより測量を開始します」


「「「「「はいっ!」」」」」



 レジーナの指示に、元気に返事をする子供たち。

 人数は5人。

 男の子が3人に、女の子が2人。

 5人の前に立つのは、レジーナとレオ君。

 私は、2人から少し離れた後ろに立っている。


 昨日までの地図研修が終わり、今日からいよいよ地図の作成作業開始だ。

 作業の総指揮はレジーナで、現場指揮はレオ君。

 私は総監督として、みんなの作業を見守ることになっている。


 今回の地図作成のメンバーは、まずレジーナとレオ君で候補者を選び、その上でアルトさんを通して本人と親御さんに参加の意思を確認してもらった。

 権力によるごり押しはしてないよ。

 なかには本人がやりたくないとか、家の仕事を手伝わせるからと言って断ってきた家もあったしね。

 だから、今回の参加者は理由は各々だけど、全員が自由意思で参加してくれている子たちだ。


 地図作成の仕事に参加する子たちにまず私が指示したのが、3桁程度までの数字の足し引きと、長さや角度の概念の理解だ。

 その上で、基本的な地図作成の手順や、地図の必要性についてもしっかりと教え込んだ。

 全体の数字の取りまとめや計算はレジーナが行うことになっているけど、自分が今やっている作業がどういうものなのか理解できていないと、基本的な現場での判断すらできなくなってしまうからね。

 このくらいは適当でいいだろうとか、ここは見なくてもわかるから一々測る必要はないとか……。

 そういう勝手なことをしないように、この2週間ほどを使って、私とレジーナが徹底指導を行った。

 ちなみに、2人ほど来なくなってしまった子もいたけど、特に気にしていない。

 私は自分の将来を守るためにこの町を発展させようと考えているだけで、やる気のない子や親を何とかしたいわけではない。

 とりあえず、今はがんばりたいという子だけ付いてくればいい。

 それに、私の予想では、今回話を断った家や途中から来なくなった子たちも、いずれ戻ってくることになると思う。

 この町がこれから発展して、読み書き計算ができる住人がどんどん増えていったら……。

 読み書き計算はできて当たり前の前提で町が回り出したら……。

 今回断った人達も、うちの仕事に学問は関係ないとか言っていられなくなるからね。

 今は必要性を感じていないから協力しない。

 みんなができないから、気にならない。

 それだけのことだ。

 人は、良くも悪くも周囲に合わせて行動する生き物だからね。

 初めに弛い環境で始めてしまうと、このくらいできれば大丈夫というラインが低くなってしまう。

 実際、「全く勉強しない。やる気がない」とレジーナに文句を言われながら嫌々勉強しているレオ君の今のレベルは、恐らく王都の同年代の貴族より余程高いと思う。

 最初に要求される努力のレベルがレジーナなのは可哀想な気もするけど、何事も最初が肝心だ。

 私も心を鬼にして、子供とか関係なく私が求めるレベルをみなに要求した。

 そんなだからか、実際問題として初めは色々と大変だったのだ。

 特に他の子たちの、レジーナに対する反発が酷かった。

 レジーナは元々外から来た親の子だし、ただの平民で今は孤児だ。

 それが貴族のお嬢様に気に入られて調子に乗っている、というのが真っ先に出てきた彼らの不満。

 それに今回集まった子は、上は12歳で下は8歳。

 みんな私やレジーナよりも年上だ。

 集まった子たちの中には、今回の仕事を年下のお嬢様の遊び相手と考えていた子も何人かいて、自分も気に入られれば、レジーナのように貴族に贔屓にしてもらえると期待して参加したらしい。

 私はレジーナがどれだけ必死でがんばっているか、知っているからね。

 そういう不心得者には容赦しなかった。

 山のような課題を与えてやった。

「こんなのできるわけない!」って逆ギレする子に、レジーナは軽くこなせると言ったら黙り込んだ。

 すごいスピードで与えられた仕事を片付けていくレジーナを指して、同じことができるなら今すぐ側近に取り立てるって言ったら、何も言わなくなってしまった。

 それでも感情的な部分では納得いかなかったみたいで、私の見ていないところでレジーナに突っ掛かっていった子もいたらしい。

 命知らずな子だ。

 サマンサの愛弟子に喧嘩を売るなんて、私は絶対にしたくない。

 最近のレジーナは、どんどん雰囲気がサマンサに似てきている気がする。

 笑顔で怒るところが、本当にそっくりだ。

 最初のうちはレジーナが先生役を務めることに不満そうだった子達も、ある者は精神的に、ある者は物理的にレジーナに“説得”され、気がつけばレジーナのことを先生呼びするようになっていた。

 ちなみに、最初の頃は私を年下で魔力も大したことはない、貴族とは名ばかりのお嬢様という目で見ていた子達だけど……。

 レジーナの()()と、私がレジーナ()()に今回の測量に必要な数学、三角形の合同条件や相似比、縮尺の考え方、三平方の定理なんかを教えているのを見て、考えを改めてくれたらしい。

 途中から、レジーナが出した課題で分からないところを、よく質問されるようになった。

 レジーナ先生よりも聞きやすいし、レオ様よりも分かりやすいと褒めてくれた。

「さすがは、アメリア様です」って……。


 ともあれ、そんな感じで当初の予定のカリキュラムは終了し、今日からはいよいよ現場に出ての地図作成である。

 町の人たちにはアルトさんを通して、今回の地図作成のことは伝えてある。

 これは現領主の娘である私が、次期領主として今後の町の発展のために正式に行う“仕事”であり、子供の遊びではないということ。

 だから、今回の作業で子供たちが巻き尺や分度器を持って町中(まちなか)をふらふらしていても、決して邪魔をしたり怒ったりしないこと。

 レジーナの指示の元、子供たちが町中(まちなか)や、町周辺の土地を走り回る。

 レオ君の指示で所定のポイントの距離や角度を測り、正確にメモを取り、その結果をレジーナに届ける。

 レジーナはその結果を元に地図を作成していく。

 もちろん所詮私も含めて素人の測量なので、地球の地図のような本格的なものは作れない。

 せいぜいが、観光地の案内マップ程度のものだ。

 それでも、今までは漠然としていた町の広さや畑、漁港の広さ、主要地点までの距離、各家の正確な位置や戸数等がどんどん明確になっていくのは、今後の街作りを考える上では非常に助かる。

 日に日に詳しさを増していく地図を見ながら、私は当初から考えていた学校と実験農場の場所を考える。

 地図が一応の完成を見る頃、私の中での学校と実験農場の運営計画もほぼ固まっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生幼女は教育したい!2巻
 書籍2巻10月10日発売です!!

転生幼女は教育したい!1巻
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ