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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第1章 アメリア、領主となる

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ある少女の事情 〜レジーナ視点〜

(レジーナ視点)


 その日、いつもの水汲みを終えた私は、井戸端で話し込む近所のおばさん達の話を、何とはなしに聞いていた。

 ここ数日の話題は、もっぱら今度やって来るという公爵様の奥様とその子供のことばかり。

 今この町を治めてくれている男爵様はどうもその公爵様の代わりらしくて、今男爵様が住んでいるお屋敷も本来の持ち主は今度来る公爵家の人達なんだって。

 どんな人たちなんだろう。

 恐い人たちでなければいいけど。

 何でも公爵の奥様は塔に住んでいる賢者様の娘で、元平民なんだって。

 だから、貴族と言っても横柄な態度は取らないだろうし、男爵様もそんな人ではないから安心するようにと言っていたって聞いた。

 だから、多少不安はあるけど多分大丈夫だって、近所の人は言っている。

 本当にそうなのかなぁ……。

 私が王都で見た貴族はとても偉そうだった。

 お父さんは、貴族には近付いてはいけないし、じっと見るのもダメだと言っていた。

 男爵様が特別で、ふつうの貴族はあんなにやさしくないって。

 この町の人たちは貴族は男爵様しか知らないから仕方がないけど、王都では気を付けなさいって注意されたことがある。

 お父さんはこの町でお店をやっていて、年に何回か仕入れのために王都に行っていた。

 私もお父さんと一緒に、王都には何度か行ったことがある。

 王都はとても大きくて、たくさんの人がいた。

 貴族を見たのもその時だ。

 お父さんのお店よりずっと大きなお店の人が、貴族の人に何か言われて一生懸命謝っていた。

 とても恐そうで、すぐに見るのを止めた。

 もし、あれがふつうの貴族なら、本当に大丈夫かと心配になる。

 いつまで私が今みたいに暮らしていけるか分からない。


 半年前に、お父さんが死んだって聞かされた。

 魔獣に襲われたんだって。


『今回の荷物はちょっと急ぎなんだ。

 ちょっとだけがんばって移動しないといけないから、今回は町で留守番していてね。

 近所の人には、よろしく頼んでおくから』


 そう言って、お父さんは出掛けて行った。

 お母さんは私が小さい頃に病気で死んでしまって、私はずっとお父さんと二人で暮らしてきた。

 お父さんもお母さんも元々はこの町の人ではなかったらしいんだけど、ここに公爵様のお屋敷ができた時に二人でこの町に引っ越して来て、お店を開いたって言ってた。

 それまでこの町にはお店が無かったから、町の人たちはとてもよくしてくれたってお父さんが言ってた。

 お母さんが死んじゃった後も、私が小さい時にはお父さんが仕入れで王都に行っている間は、近所の人が面倒をみてくれていた。

「もちつもたれつだから」って、近所のおばさんは言っていた。

 意味はよくわからないけど。

 ただ、最近は私も大きくなって体力もついたし、軽量魔法を覚えて荷物を軽くするお手伝いもできるようになったから、仕入れの時にもお父さんに連れて行ってもらうことが増えた。

 だから、今回はたまたまだ。

 ちょっと急ぎの仕事で、行きの護衛の都合はつかなかったけど、帰りは公爵邸の定期便と一緒だから大丈夫だって言ってたのに……。


 あれから半年、食事の世話やなんかは近所のおばさん達が、かわりばんこにしてくれている。

 その代わりに、水汲みなんかの私にできるお手伝いをしてなんとかやってきた。

 私は軽量魔法が使えるから、まだ7歳の私でも水汲みなんかの力仕事もちゃんとすることができるのだ。

 それも、いつまでできるか分からないけど……。

 最近、軽量魔法がうまく使えない時がある。

 多分、呪文がおかしくなってきているんだと思う。

 軽量魔法の呪文は町の神殿にはなくて、お父さんと王都に行った時に、王都の神殿で覚えてきた。

 だからこの町の人たちも軽量魔法は使えなくて、だから「レジーナが重たい物を持ってくれて助かる」って、近所の人たちも言ってた。

 でも、それもいつまで続くか分からない……。

 きっとそのうち、私は軽量魔法を使えなくなっちゃうから。

 それに、この前男爵様と近所の人が、私のことを話しているのを聞いてしまった。

 私は本当はもっとたくさん男爵様から渡された魔石に魔力を籠めないといけないんだって。

「お手伝いができなくなっても困るから、寝るときにあまった分の魔力だけ魔石に注いでおけばいいよ」って言われてたのに、本当はそれではダメらしい。

 それに、私の食事のお金も実は私が渡した魔力から、男爵様が近所の人たちに支払ってくれていたんだって。

 それまで、お父さんが死んだ後も自分一人でなんとかやってこれたと思っていたのに……。

 結局、男爵様や近所の人たちが面倒をみてくれていただけだったのだ。

 もし、男爵様が面倒をみてくれなくなれば、私は明日から生きてはいけなくなってしまうだろう。


 今度やって来る貴族の人たちが、男爵様のようにいい人なら問題ない。

 でも、もし王都で見たような貴族なら、きっと私は生きていけなくなる。

 いくら男爵様が庇ってくれても、公爵様がダメって言えばダメなのだ。

 どうしよう……。

 そんなことを考えていると、ふと良い考えが閃いた。

 そうだ、公爵様の子供と仲良くなればいい。

 最近は色々あってあまり遊ばなくなったけど、昔は男爵様の子供のレオ様ともよく一緒に遊んだ。

 男爵様の……本当は公爵様のお屋敷らしいけど、お屋敷にも何度か遊びに行って、男爵様ともお話したりした。

 お父さんが死んだ時にも親切にしてくれたけど、あれは私がレオ様と友達だったからかもしれない。

 なら、もし私が公爵様の子供と友達になれれば、そうすれば公爵様にも男爵様と同じように面倒をみてもらえるだろう……。

 公爵様の子供は女の子で、確かもうじき5歳になるって聞いた。

 ちょっと年下だけど、同じ女だし、きっかけさえあれば仲良くなるのは簡単かもしれない。

 でも、相手は貴族だし、ただお屋敷に出掛けていってお友達になりましょうと言っても、相手にされないだろう。

 何かきっかけがあれば……。


 近所のおばさん達の話を聞きながら、私は必死に作戦を考えていた。


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