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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第5章 アメリア、世界を巡る

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舞台裏



 ここは帝都。

 すっかりお気に入りとなった食べ物屋の屋台が並ぶ市場の一角では、どう見ても旅人か冒険者にしか見えない敵対国の王侯貴族の子女達が、呑気に屋台料理に舌鼓を打っている。


「帝国の動き、滅茶苦茶早くないですか?」


「ええ、ユリウス君からの情報だと、王国内に攻め込んで来ていた帝国軍は、既にボストクの国境を通って王国外に出たみたいよ」


「えっ? でも、マリアーヌ陛下はまだ王都にいるって王妃様(お母様)が…」


「そう。つまり、マリアーヌ陛下は少数の側近のみを残して、軍を引き上げさせたってこと。

 マリアーヌ陛下は元々は攻め込んだ側だし、今は敵意が無いってことを見せるためにも、敢えて危険を承知で軍を先に戻したんでしょうけど…

 なかなか豪胆よねぇ」


「そうですよねぇ… 王妃様(お母様)ともお話が合うみたいで、お姉さまの計画の件も含めて、今後の両国の関係について話し合われているそうですけど…

 いくら反対分子(保守派貴族)の粛清が終わっているとはいえ、長年の敵対国であることに変わりありません。

 私なら怖くて食事も喉を通りません」


 流石は女だてらに帝国を掌握するだけはあると、私とサラ様が感心していると、


「はぁ〜、アメリア様もサラ様もここがどこなのか忘れてませんか?」


 呆れたような目で大きな溜息をつくレオ君。

 そういえば、ここって帝国の中枢だったね。


「いや、でも、私達はマリアーヌ陛下と違って帝都を攻撃とかしてないし!」


「そうです。ふつうにおいしい物を食べて、ふつうに観光しているだけの、ふつうの旅人です。

 マリアーヌ陛下とは状況が全然違います!」


「…実際に攻撃してないだけで、あれってどう考えても“脅迫”でしたよねぇ?

 逆らえば、帝都を制圧するぞっていう…

 しかも、あんな詐欺まがいの手で」


「いや、でも、別にゴーレムについては何も言ってないし…

 勝手に向こうが勘違いしただけよね」


「別にいいんですけどね。

 ただ、実際に今帝都に残っている帝国兵だけでも、今の俺たちでは対抗手段が無いわけですからね。

 その辺りは気を付けてください」


「は〜い」


 私の専属護衛であるレオ君。こういう時にはなかなかに厳しい。

 まぁ、言っていることは間違ってはいないしね。

 最悪の場合、私を拉致して魔法習得のノウハウを吐かせるなんて手もあるわけだし…

 実際、今の私の手元にある兵は少ない。

 マリアーヌ陛下とのオンライン会談での見栄(みば)えと、ザパド領も戦争終結に協力していたんだよっていう実績作りのために、いくらかの兵は護衛目的でザパド領から連れてきている。

 でも、それだけ。

 セーバの街の傭兵部隊の方は基本情報収集が本職なので、多少は戦えても戦争レベルのドンパチには向かない。

 手持ちの戦力は限られているのだ。

 え? ゴーレム兵はって?

 それねぇ、実はあれ、全部カカシというかハリボテだったんだよね。

 だって、いくら何でもそんなに大量の呪鉄を抱えての登山なんて無理でしょう?

 いくら魔動エンジン積んだバギーだからって、積載量に限界はあるわけだしね。

 そんな何十体分もの呪鉄なんて運べるわけがない。

 そりゃあ魔力さえ籠めればゴーレムの要領で動かせるけど、流石に数十体のゴーレムを何日もずっと動かし続けるのは無理だ。

 第一、目立ち過ぎるでしょう?

 そんな訳で、運べた呪鉄の量は、精々一体分。

 これだと、迫力に欠けるよね?

 で、どうせ見栄(みば)えだけで実際に動かす必要もないからってことで、中身は空っぽで表面も限界まで薄く引き伸ばしたゴーレム人形をたくさん並べてみた。

 倒れないように、木材で支えとかもしてね。

 だから、もし万が一今帝国軍と戦うことになったとしても、戦力として使えるゴーレムはがんばって一体分。

 ちょっと厳しいよね。

 そんな訳だから、レオ君が多少は警戒しろって言うのも間違ってはいないんだけどね。

 でも、多分大丈夫。

 こちらの言う事に疑心暗鬼だった最初の頃ならともかく、王妃様や国王陛下は勿論、通信を介して議長様や倭国の帝とまで今後の話し合いを進めている現状で、私をどうこうするとは思えないからね。

 私が王国、連邦、倭国に対してそれなりに太いパイプを持っていることは既に察しているだろうし、ここでもし私を害すれば、最悪三国から袋叩きに遭うことも想像できると思う。

 このままいけば必要な知識は得られるって分かっているのに、わざわざ危険を犯して私をどうこうする理由がない。

 マリアーヌ陛下って、王妃様と同じで頭良さそうだったしね。

 多分問題無いでしょう。

 今はまだ両国の戦後処理で王都はバタついているだろうから、私はもう少し帝都観光を楽しむことにする。

 下手に顔を出すより、王妃様とレジーナに任せておく方が確実だ。

 今の私が行くと、どうしても命令っぽい感じになっちゃうからね。

 国同士のことは、王様同士で話し合って決めればいいと思う。

 戦争なんかせずに仲良くやってくれるなら、私は基本不介入だ。

 これから作る独立学園都市国家は中立不可侵が基本だからね。

 私が平和に旅して廻れる世界を維持してくれるなら、細かいことはどうでもいいのだ。



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

これで5章も終わり、次回からは短いですが終章。

まとめに入ります。

今しばらくお付き合いいただけると嬉しいです。

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