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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第5章 アメリア、世界を巡る

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提案

 回想。

 これは、帝国軍がボストクの砦を落とし、王国内へと侵攻を開始した頃の話。



『はあ!? ダルーガ領を売れじゃと!?』


 私からの提案に、思わず大声を上げる議長様。

 相変わらず落ち着きがない。

 どうも帝国が王国に戦争を仕掛けようとしているらしいって話を聞いて、私は自分の中で温めていたある計画を実行に移すことにした。

 それは、独立学園都市国家設立計画。

 ダルーガ伯爵が処刑されて、連邦の西にある王国との国境、西の港湾都市バンダルガ、そして今回の帝国侵入に使ったキール山脈越えルートの登山口を含む旧ダルーガ伯爵領は、今現在は管理者不在。

 連邦最高議会預かりとなっており、議長様が最低限の管理をなんとか行っている状況らしい。

 商人的には縄張りが増えるのは大歓迎なのでは?って思うんだけど、話はそう簡単でもないんだって。

 まず、地理的な問題。

 議長様が管理する連邦の東部と旧ダルーガ領がある西部では、いくら鉄道や船があるとはいえ距離が離れ過ぎている。

 飛び地なんてもんじゃないからね。

 とてもではないけど、両方に目を行き渡らせるのは容易ではない。

 言ってみれば、北海道と九州を同時に管理するようなものだからね。

 しかも、この旧ダルーガ領、中途半端な管理はできないし、適当な者に任せるわけにもいかない。

 なんといっても、魔法王国との国境があるのだ。

 下手な者に任せては、今後の両国の関係に悪い影響が出かねない。

 実際、ダルーガ伯爵は派手にやらかしているわけだしね。

 もし、あの時私が介入していなかったら、最悪、今頃王国と連邦は全面戦争に突入していたかもしれない。

 そう考えると、利益云々を抜きに、滅多な者には任せられない。

 旧ダルーガ伯爵領の後継者選出は、連邦最高議会でも頭の痛い問題だとか。

 おまけに今回、私が帝国への交易ルートを開拓しちゃったからね。

 今後このルートが一般化されれば、旧ダルーガ伯爵領は帝国とも国境を接することになるわけで…

 尚更、任せられる人間がいない!

 商業連邦議長なら新しい交易ルートの発見に大喜びするところだと思うんだけど、キール山脈を越えられるという私の話を聞いて、議長様は頭を抱えていたよ。

 ご愁傷さま。

 で、そんな可哀想な議長様に私はある提案をしたわけ。

 つまり、お困りなら私が管理しましょうか?って。

 いらないなら、私が買い取りますよって。

 国土を売れって話に、何を馬鹿なとこちらを怒鳴りつける議長様。

「落ち着いてください。血管切れますよ」って気遣ってあげたら、余計にヒートアップしてしまった。

 ともあれ、なんとか落ち着いたところで再度説明を。

 初めは何を言い出すかと怒り心頭だった議長様も、次第にその顔は真剣に損得を計算する商人のものに変わっていき、最終的には私の提案に乗ってくれた。


『ダルーガ領に、新たに独立学園都市国家を作るじゃと!?』


『はい、そこで世界中から生徒を集めます。

 ダルーガ領って位置的にはちょうどこの大陸の真ん中辺りですし、来やすいと思うんですよ』

 

『!? それは、つまり、セーバの、アメリア公爵の知識を連邦の人間が学べるということか?』


『そうですね。教える内容は基本的には今のセーバリア学園と同じものになると思います。

 何をどこまで教えるかについては学ぶ側の人間性を見て判断していくことになりますけど、身分や魔力量、国籍は一切問いません。

 商業連邦人だろうと帝国人だろうと、平等に教えますよ』


『ぬっ!? 帝国人もだと!?』


『はい。学園都市は中立国家ですから、特定の国に肩入れするようなことはしません。

 それは勿論、魔法王国に対してもです。

 学生と学園の平和を守るためにも、無闇な侵略戦争を仕掛ける国を容認するつもりはありませんが、単なる国家間の利害関係については不介入です。

 今回の魔法王国への侵攻を()めることが条件ですけど、帝国が他国に対して友好的な姿勢を見せるなら、当然帝国の学生も受け入れるつもりです』


 議長様は以前からセーバの街(わたし)を連邦に引き込みたがっていた。

 実際のところ、セーバの街(わたし)の価値観とか気質とかは連邦寄りだしね。

 大陸の端に位置するセーバの街は、交易という点では決して恵まれた立地とは言えず、大型船の入れる港の存在も、大陸横断鉄道が完成した今では、絶対的なアドバンテージにはなり得ない。

 連邦にしても、セーバの街(わたし)との交易に政治的にも地理的にも間に魔法王国を挟む現状を、もし可能なら何とかしたい。

 そんな訳で、私が近所に引っ越してくるのは、議長様的にも大歓迎なのだ。

 おまけに、単なる交易だけでなく、今までは基本セーバの街の住民以外には秘匿されていた学問や技術まで学べるというなら、多少の無理は通そうという気にもなるというもの。

 理想は連邦への移籍だけど、それはそれで魔法王国との軋轢(あつれき)にもなり兼ねないし、何より仮に私が正式に連邦商人となった場合、議長様の立場が危うくなる。

 連邦最高議会の議員、議長の選出って、連邦での商人としての影響力で決まるからね。

 要は、連邦で一番稼いでいる商人が議長になるってこと。

 つまり、今連邦で一番稼いでいる商人が、議長様ってことになる。

 倭国、帝国との国境と連邦最大の貿易港ポールブを押さえている議長様は強い。

 魔法王国との国境、港湾都市バンダルガ、そして国内に流通する薬草類の大半を押さえていたダルーガ伯爵がいなくなった今、議長様の地位は盤石とも言える。

 でも、それ、私が連邦に加わると話が違ってくるよね?

 例えば、現状空白地帯である旧ダルーガ伯爵領に私が移って、正式に連邦に帰化したとする。

 この場合、今セーバリア学園が持つ各種パテント、大陸横断鉄道やアメリア商会からの収益、更には魔法王国との国境やバンダルガからの権益も私の稼ぎになるわけで…

 いや、多分だけど、そもそも大陸横断鉄道とアメリア商会からの収益だけでも、議長様に勝てちゃう気がするんだよね。

 あまりにも莫大な金額って全然現実味が無いから、それが自分の資産って言われてもピンと来ないんだけど、今の私の個人資産って魔法王国を私一人で余裕で運営できちゃうくらいの金額だからね。


『国籍問わず学生を受け入れるなら、国として中立な立場を維持した方がいいと思うんですよ。

 それに、もし私が連邦に移籍して正式に連邦議会メンバーになったら、私が議長になっちゃう可能性もありますよね?

 それも面倒かなぁと』

 

『??!!!』


 それまでは、何とか私を連邦に引き込めないか? メリットは多くても結果的に国土を売り渡すことになる決定はどうなのか? と悩んでいた議長様だけど…


(アメリア公爵が連邦人になったら、議会は、連邦はアメリア公爵に乗っ取られるのか?

 あのような無茶が、わしに何の相談もなく勝手に進められる?

 歯止めが効かなくなるぞ!!)


 何やら失礼な事を考えている気がしないこともないけど、最終的には本当に私の計画が実現するなら協力は惜しまないと、議長様も快く私の話に賛同してくれていた。


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