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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第5章 アメリア、世界を巡る

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王国貴族の作戦会議? 〜某保守派貴族視点〜

(某保守派貴族視点)


 魔法王国王都にある、某保守派上級貴族の屋敷にて。


「帝国の侵攻はどうだ?」


「あぁ、ボストク領に攻め込んだ頃の勢いは流石にないが、それでも着実に王都(ここ)に近づいてきている」


「フッ、撃退は覚束(おぼつか)ぬか。足止めが精々とは情けない」


「そう言ってやるな。何でも帝国軍が装備する鎧は魔法を受け付けぬらしい。流石の王妃殿下とて一筋縄ではいくまいよ」


「フン、そんなものは大規模魔法による飽和攻撃で一気に押し切ってしまえばよいのだ!

 ワシが小耳に挟んだところによると、どうやら帝国の鎧には魔法無効化の魔法が仕込まれているらしい。

 あれは魔法の威力を半減させていく魔法だ。

 確かに厄介だが、要は半減しても十分なだけの攻撃を叩き込めばよいだけのことではないか!」


「まぁ、確かにそうですな。

 仮に帝国軍の装備が闘技場レベルでの魔法無効化を可能にするとして…

 我ら上級貴族の攻撃魔法とはいえ、それが一人二人なら効果も薄いでしょうが…

 これが10人20人となれば果たしてどれだけ無効化できるものか…

 仮に10分の1にまで威力を落とせたとしても、少なくとも上級貴族一人分の攻撃魔法は敵に届くことになる。

 十分に対処は可能でしょうな」


「その通り!

 不本意ではあるが、アメリア公爵の訓練法のお陰で我々の魔法の威力は以前とは比べ物にならぬほど上がっている。

 今の我々が全力で当たれば、帝国の未知の装備など恐れるに足らん!」


「だが、実際にボストク軍は帝国に敗れたのであろう?

 ボストク軍にもアメリア公爵の太極拳は伝わっていたはずだ。

 それなのに敗れたということは、」


「それは不意をつかれたからであろう?

 帝国は卑怯にも何の名乗りも無く、しかも真夜中に突然攻撃を仕掛けてきたのだ!

 この点に関しては、(いささ)かボストク侯爵にも同情するが…

 だが! 今回は違う!

 我々上級貴族が王都を背に、万全の態勢で帝国軍を迎え撃つのだ!

 多少強力な鎧を持っていようが、恐れることは無い!

 愚かにも魔法を失った過去の遺物に、目にもの見せてくれようではないか!」


 ………


 魔法が効きにくい装備を持つという帝国軍を前に、少しも怖気(おじけ)づく様子を見せない同志たちを目にして、私の気分も俄然盛り上がっていく。

 いよいよだ!

 いよいよ我々の力を見せる時が来た!

 魔力量だけが人の価値を決めるものではないなどという戯言は、安全が保証された現状だからこそ言えること。

 平民に迎合する惰弱な革新派どもめ!

 一度(ひとたび)戦となれば、勝敗を決するのは(魔力量)であると思い知るがいい!

 我々保守派貴族の団結は固い。

 国を守る貴族としての矜持も忘れ、目先の利益に釣られて魔力の低い平民や他国の人間と馴れ合う腰抜けどもとは違うのだ。

 元々ザパド領貴族には金儲け主義の者も多かったが、それでも貴族としての矜持は高かった。

 だが、今のザパド侯爵になってからのザパド領は、その矜持すらも投げ打って平民どもと手を取り合って金儲けに勤しんでいる。

 おまけに連邦や倭国の商人さえも積極的に引き入れる姿勢は、まさに売国奴!

 先代がやらかした外患誘致を自らの手で軍を率いて食い止めた功から、あの娘(ソフィア)は新たなザパド領主として認められたが…

 今にして思えば、あの娘(ソフィア侯爵)がやっている事は父親と何も変わらん!

 いや、むしろ、父親よりも(たち)が悪い。

 前ザパド侯爵が手を結んだのは連邦の()()であり、その目的は(ろく)に魔力もないくせに不当に公爵の地位を名乗る小娘(アメリア)の排斥だった。

 手を組んだ連邦貴族に裏切られ、結果全てを失うことにはなったが、あの男が王国貴族としての高い矜持を持っていたことは間違いなかろう。

 それに引き換え現ザパド侯爵ときたら、庶民の娘(アメリア)と手を結んで魔力量と個人の能力は関係ないなどと(のたま)う始末!

 まったく嘆かわしい!

 これというのも、全ての元凶はあの娘、アメリア公爵!

 街の発展?

 魔道具の開発?

 そんなものは商人や職人の仕事で、本来の貴族の仕事ではないわ!

 貴族とは生まれながらに民の上に立ち、有事の際にはその強大な魔力で敵を薙ぎ払い国を守る。

 そういった存在なのだ。

 経済発展だの民の生活だの、そういった俗事に関わるなど貴族の品性を落とす行為に過ぎん。

 あの娘がした貴族らしい事といえば、攻撃魔法の威力を上げるあの訓練法(太極拳)を伝えたことくらいだが、それさえも本当にあの娘個人の功績かは怪しいものだ。

 実は王家に伝わる秘伝の訓練法を公開するにあたり、あの娘に甘い宰相閣下が娘の功績として広めたというのが真相ではないかと私は考えている。

 常識的に考えれば、あのように魔力を全く持たない娘に、魔力の何たるかなど理解できようはずもないのだ。

 あの娘の数々の功績とやらも、どうせ娘可愛さに宰相閣下が与えたものに決まっている。

 その証拠に、学院を卒業して王国貴族として独り立ちする立場なった途端、あの娘は逃げるように国を出て、全く社交界に顔を出さぬではないか。

 おまけに、このような状況になってさえ、国に戻ってくる気配は無い。

 敵に怯えて他国に引き籠もる者に、王国貴族を名乗る資格など無いのだ。

 多少商売がうまくいったからと、辺境の田舎領主がいい気になりおって!

 でかい顔をしていられるのも今のうちだ!

 まずはやって来る帝国軍を撃退し、本来の貴族の力というものを周囲に思い知らせてくれる。

 帝国の問題が解決したら、アメリア公爵とザパド侯爵の糾弾だな。

 国の危機において何もできない者に王国貴族を名乗る資格など無い!

 奴らの身分を取り上げ、もっと王国貴族として相応しい者をザパド領、セーバの街の領主に据える。

 かつての魔法王国貴族としての矜持を、我々が取り戻すのだ!


 根回しの甲斐もあり、王都近郊での最終防衛ラインは我々保守派貴族に任されることとなった。

 王妃寄りの革新派貴族どもは、功を焦ってか進んで前線に向かって返り討ちにあっていると聞く。

 精々我々が軍を整えるまでの時間稼ぎに(いそ)しむがよい。

 現状に不満を持つ貴族は、続々と集結しつつある。

 王都の最終防衛ラインには、国中からかなりの戦力が集まるだろう。

 その大兵力をもって、帝国軍を殲滅する!

 平和ボケした商人貴族どもの慌てふためく顔が、今から楽しみだな。


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