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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第5章 アメリア、世界を巡る

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倭国版通過儀礼?

 50頭からなる雷獣(ぬえ)の群れと変異種(ラスボス)(しかばね)を乗り越え、私達の進軍は続く。

 いや、もうすぐ山頂だけどね。

 もうゴールの神殿も見えてきているしね。

 全体にシンメトリーの作りは、アンコールワットを彷彿とさせる。

 倭国に多く見られる和の雰囲気とは明らかに異なるそれは、その建物がこの国の建国よりもずっと古い時代からこの地にあったことを物語っている。

 ただ、不思議なことにそんな古い時代の建物にも関わらず、劣化した様子は全く見られない。

 (こけ)や汚れ、(つた)が絡まっていたりはするけど、建物自体に傷んだ箇所が全く無い。

 多分、状態保存の魔法みたいなのが施されているんだろうね。

 建物を管理する神官もおらず、タケミさんの話だと人が訪れること自体が十年、二十年に一度といった場所だというのに、風化した様子が全然無いなんて…

 一度神殿の建物それ自体もきっちり調べてみたいものだけど、この世界の神殿は絶対不可侵の存在だから、そこはちょっと難しいかなぁ…

 下手なことをして旧帝国で起きた石板消失事件みたいなことが起こったら大変だからね。

 もう見上げる高さまで近づいた神殿を眺めながら、のんびりとそんなことを考える。

 あの変異種以降、襲ってくる(ぬえ)は全く見当たらない。

 あれで全滅ってわけではないみたいだけど、皆こちらを警戒してか近づく気配は全然無し。

 完全に避けられているね。

 そんな訳で、無事目的地に到着した私達だけど…


「じゃあ、悪いけどちょっと待っていてもらえる?」


 入り口の扉を押し開け、エントランスのような広場に入ったところで3人に声をかける。


「はい、了解です。私達は他のところを見学していますので、お姉さまはあまりお気になさらず」


 サラ様の返事に同じく同意を示すレジーナとレオ君。


「ごめんね。ちょっと待ってて」


 そう言って、私は一人神殿の奥の間へと進んでいく。



『アメリア様以外の3人にもアズマ山への入山は認めます。神殿内に入ることも構いません。

 ただ、神殿の奥の間への入室は、アメリア様のみでお願いします』


 アズマ山攻略に際して、そんなことをタケミさんから言われたんだよね。

 実はこのアズマ山という場所は、倭国の次期帝の資格を神に問う神聖な山みたいで、本来は皇族の血筋以外の入山は認められないらしい。

 もっとも、御神刀を持たない一般人で、敢えてこの山に入ろうなんて考える人は、倭国には一人もいないそうだけど…

 箝口令(かんこうれい)もしっかりと敷かれていて、アズマ山の山頂に神殿があることも、その神殿に“雷撃魔法”の石板があることも一般には知られていないとか。

 ちなみに、どこから聞きつけたのかアズマ山に雷撃魔法の石板があることを知った大賢者(お祖父様)が、かつて何度かこの山に挑んだらしいんだけど、遂に成功には至らなかったって…

 私がアズマ山攻略の許可を願い出た時、やはり血筋かと帝には苦笑いされたよ。

 まぁ、こっそり隠れて挑戦したお祖父様と違って、私は正式に倭国皇家の許可を取った上での挑戦だからね。

 挑戦自体は問題無い。

 イィ様の妹弟子扱いの私の身分は、倭国では皇族と同等かそれ以上だそうで、倭国皇家にのみ継承されるという雷撃魔法の所在についても、あっさりと教えてもらえたよ。

 ただ、皇家の血筋云々(うんぬん)はともかく、雷撃魔法の修得については古式にのっとり、自分自身の力を示す形でお願いしたいと言われてしまった。

 “古式にのっとり”

 詳しく話を聞いたところ、これって次期帝の地位を継ぐために行われる倭国版通過儀礼(イニシエーション)みたいなものみたい。

 帝の地位を望む者はアズマ山に登り、そこで神々の神意を問うみたいな?

 つまり、アズマ山の山頂にある神殿まで行って、無事雷撃魔法を覚えて来れば、次期帝の資質有りと認めますよってこと。

 これはなかなかにハードだと思う。

 流石は武を重んじる倭国。魔法王国のなんちゃって通過儀礼(イニシエーション)とは大違いだね。

 実際、この試練をクリアできずに命を落とした皇族もかなりいたみたいで、今は試練に挑戦する皇族以外にも、皇族本人が育てた部下の同道が許されているんだって。

 ただ、そうはいっても一緒に連れて行ける人数は限られているそうで…

 別に人数制限があるとかではなくて、そもそも御神刀を持たない並の兵士などいくら連れて行っても、何の役にも立たないからね。

 皇家が所有する御神刀の数は限られているし、儀式中に国のどこかに(ぬえ)が現れた場合、また試練に失敗して持っていった御神刀が回収できなくなる場合を考えれば、使える御神刀の数もそう多くはない。

 実際、タケミさんが試練に挑戦した時にも、連れて行った部下は10人ほどだったとか。

 ちなみに、この時に試練に参加した部下が、今のキョウの都の討伐隊隊長、副隊長達だそうで、この試練は皇族の試練であると同時に、対(ぬえ)討伐隊を任せる者を選ぶ試験と訓練も兼ねているんだって。

 そんな訳で、私がアズマ山の神殿で雷撃魔法を覚えること、アズマ山の攻略にサラ様、レジーナ、レオ君が同道することは認められた。

 でも、雷撃魔法の石板のある部屋への入室は私だけ。


 元々そのつもりだったから、特に問題は無いけどね。

 

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