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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第5章 アメリア、世界を巡る

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殲滅

 そんなこんなで時折襲ってくる(ぬえ)たちを討伐しつつ数刻。

 山頂へと歩を進める私達の前に突如立ちはだかる雷獣の群れ。

 今までは5頭から精々10頭程度の群れで襲ってきていた(ぬえ)だったけど…


「これは…」


「これ、多すぎだろ!」


 サラ様とレオ君の声にも流石に余裕がない。

 今、私達の前にはざっと50頭からの雷獣の群れがその道を塞いでいる。

 そして、その更に奥に控えるのは通常の(ぬえ)のゆうに3倍を超える巨大な魔獣(ぬえ)


「あれがタケミ様がおっしゃっていた“変異種”でしょうか?」


「多分ね…」


 レジーナの問いに軽く答えつつ、前方の群れとその後方に控える巨大な(ぬえ)、“変異種”を観察する。

 タケミさん曰く、都に現れる(ぬえ)が増えているのは、アズマ山に棲息する(ぬえ)の数が増加しているのが原因で、それは大抵の場合“変異種”の発生に起因するという。

 だから、今年の過去例を見ない頻度の(ぬえ)の襲来を考えれば、変異種がいること自体は当然予想できていた。

 ただ、さすがにあの大きさは想定外。

 タケミさんの話だと、数年から十数年に一度くらいの頻度で現れるという(ぬえ)の変異種は、通常個体の1.5倍から2倍程度。

 ここまでとは聞いていないよ!

 恐らくこちらの存在は認識しているだろうに、黙って群れの後方に控えたまま襲いかかってくる様子は見られない。

 そして、その前に控える50頭からの群れは、数に物を言わせてこちらを囲い込むような動きを見せている。

 明らかに統率された動き。

 これをあの変異種が指示しているのだとしたら、奴は相当に頭がいい。

 ここに来るまでに向かってきた群れが、どれも基本正面からの力押しだったのを考えると、この数でこの慎重さを維持できる知能や統率力は相当なものだ。

 やはり、タケミさんから聞いていた通り、(ぬえ)の変異種というのはかなり頭がいいらしい。

 ここは中途半端に手の内を見せて警戒される前に、一気に方をつけるのが得策だね。


「例の作戦を決行します!

 レオ君はファイアウォールで周囲に壁を展開。(ぬえ)が雷化するよう誘導。

 その後は衝撃に備えて。

 レジーナは実体化している個体を攻撃。

 サラ様は魔法を準備。私の合図に備えて」


 こちらを包囲するように広がっていた(ぬえ)たちに対して、レオ君が低めの炎の壁を作ってその動きを牽制すると、火を警戒した前方の(ぬえ)たちがさっと後退し、その後前方の(ぬえ)たちと後方に控える一部の(ぬえ)たちが肉体(からだ)の表面に雷を纏い始めた。

 次々に雷化し警戒心を強める群れの中、余裕なのか未だ後方で様子見を決め込んでいる一部の個体を、レジーナの光魔法が貫いていく。

 圧倒的な速度を誇る魔獣とはいえ、レジーナの光魔法は避けきれない。

 特に、雷化している状態ならともかく、今の実体化した状態ではレジーナにとっては格好の的だ。

 仲間が次々に倒れるのを見て、実体化していた後方の一部も慌てて雷化をし始める。

 完全に戦闘態勢だ。

 包囲して嬲りながら獲物を確実に仕留めるのではなく、危険な敵を油断無く排除する姿勢。

 殺生石で造られた武器である“御神刀”なら雷化した(ぬえ)を切ることもできるけど、雷化した(ぬえ)の速度は実体化している時とは比べ物にならないし、厄介なことに違いはない。

 そう、通常の切り合いならね…


『Производите воду и управляйте водой, как вы себе представляли』


 水魔法。

 私の呪文により発生した霧状の大量の水が、雷化した群れ全体を包み込むと…

 その瞬間、私達を囲む雷獣たちの身体が半分ほどに縮みだす。

 水の電気分解。

 水に電気を流すと水素と酸素に分解されるというアレだ。

 本物の雷のように一瞬ならともかく、雷化したままの身体を長時間維持し続けている雷獣なら、きっと大量の水を電気分解してくれると思ったんだよね。

 そして、大抵の場合、物質に何かしらの変化を与えるためには、エネルギーが必要なわけで…

 周囲の水を強制的に電気分解させられたことで、(ぬえ)の持つ電気エネルギーはかなり消費されてしまった様子。

 慌てて雷化を解いた時には、その大きさも半分ほどに縮んでしまったみたい。

 身体が縮むって、、微妙にファンタジーだよね…

 これで脅威度は半減、だけど、これだけでは終わらない。


「サラ様!」


「はい!」


 バァーーーーーーーアアアン!!!


 周囲に響き渡る強烈な破裂音!

 レオ君がサラ様の魔法に合わせて私達を守るように展開した岩壁も、その場で崩れ去った。

 そして、目の前に広がるのは先程まで(ぬえ)と呼ばれていた肉片の山。

 雷化を解いて実体化していたから、流石にあの爆発は防ぎようがなかった様子。

 そう、さっきの爆発は、毎度お馴染みの水素爆発の魔法。

 ただし、違いは水素を魔法で作り出したわけではないところ。

 私が開発してサラ様に伝授した水素爆発を起こさせる魔法だけど、これにはかなり複雑で高度な魔力操作が必要なんだよね。

 特に難しいのが、空気中に含まれる水分を感じ取り、それを水素と酸素に分けるという原子レベルでの土魔法を行うところ。

 主に鉱石から必要な金属を取り出すのに使われる土魔法だけど、それを分解という化学変化レベルで行うのは、いくら地球由来の理科知識を持っていてもなかなかに難しい。

 大気に含まれる物質ということで風の単一属性補正がかかっているとはいえ、本来はサラ様には使えない土魔法を扱うことに、サラ様も修得にはだいぶ苦戦していた。

 自分の周囲の空気から必要な水素を取り出し、それを目標地点に移動させた上で空気圧縮によって発火。

 爆破したい地点が動くことなく一か所に固定されているのならともかく、少しでも異変を感じれば即座に移動してしまう可能性のあるターゲットでしかも複数…

 これは私でもちょっと難しい。

 でも、水素を取り出す工程とターゲットの周辺に水素を移動させる工程が省けるなら?

 ターゲットの周辺に自然発生した水素と酸素を拡散しないように一瞬その場に留め、それに火をつけるだけなら?

 風の単一属性であるサラ様にとって、そんなことは朝飯前だよね。

 その結果が、この惨状。

 50頭近くいた(ぬえ)の群れが、一瞬で消滅してしまった。


『グルルルルルル!!』


 バチバチバチバチ!!!


 だいぶ距離があったとはいえ、あの爆発を逃れたか…

 蒼い雷光を纏った巨大な魔獣(変異種)が、ゆっくりとこちらに近づいてくるのだった。


 

 

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