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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第5章 アメリア、世界を巡る

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防具開発

 こうして無事私達4人分の殺生石を確保し、滅仙窟の問題にも区切りをつけた私達は、引き続き現地での開発を続けるタキリさんを置いて、一路キョウの都へと戻ってきた。

 殺生石を渡して、作ってもらう御神刀に対する好みや希望なんかを伝えて、後は完成を待つばかり。

 と言っても、流石に4人分ともなると最低でも季節一つ分くらいの時間は必要とのこと。

 その間に、キョウ見物と洒落こむのもいいけど、私には他にも作ってみたいものがある。


「タケミさん、御神刀用に今回採掘してきた分とは別に、もう少し殺生石を分けてもらうことは可能ですか?」


「それは構いませんけど、何にお使いですか?」


 一応、殺生石の利用は倭国では機密扱いだからね。

 融通するにしても、使用目的だけは把握しておきたいらしい。


「その、折角ですので御神刀とは別に防具の方も作っておきたくて…

 もう二度と皆が危ない目に遭うのは御免ですから」


 そう、私達の目的は雷獣(ぬえ)

 奴へのリベンジだ。

 前回遭遇した鵺は既にタケミさんの手で倒されているから、レオ君を襲った(ヤツ)をどうのってことではないんだけどね。

 やっぱり、やられっぱなしってのはなんか悔しい!

 これは私や直接の被害にあったレオ君だけではなくて、前回の遭遇で何もできなかったサラ様やレジーナも気持ちは同じで…

 (ぬえ)が棲息するというアズマ山攻略は、誰から言い出すでもなく自然に決まっていた。

 みんな、血の気が多いよねぇ…

 ただ、悔しいからって闇雲に突貫したりはしないよ。

 気合と根性だけでなんとかなっちゃうのは少年マンガの中だけだ。

 勿論、御神刀さえ手に入れば、それで何とかなるなんて安易に考えたりもしない。

 実際の戦いは、それまでにどれだけの準備を整えたかで勝敗が決まる。

 運任せのギャンブルではないのだ。

 私はそう考えているし、セーバリア学園でもそう教えるよう指導している。

 当然、私から直接の指導を受けているレジーナ、レオ君、サラ様の3人も、いくら悔しいからって何の勝算もなく敵地に攻め入ったりはしないよ。


 対(ぬえ)用の防具を作りたいという私の希望に、鵺討伐の現場を預かるタケミさんも興味津々みたいで、あっさり協力を確約してくれた。

 折角だし、ここは徹底的に協力してもらおう!



 ビリビリビリビリ!!


 ガガガガガガガガ!!


「う〜ん、、これだと強度が足りないみたいね」


 ビッカ〜〜ン、、ゴロゴロゴロゴロ!!


「雷撃が一か所に集中した場合、この形だと防ぎきれないぞ」


「でも、これ以上厚くしては機動力が出せません」


「やはり、防具のデザインから再度検討し直すべきだと思います」


 ……………


 当初、御神刀と同じように殺生石を使った鍛造で鎧を作ろうと試みたんだけど、これは早々に挫折した。

 鍛造… 難し過ぎる!

 まぁ、これについてはある程度予想はしていたけどね…

 ただ、意外だったのが、私達はともかく専門職の刀匠の職人さんたちも、御神刀以外の物を作れなかったこと。

 刀匠の皆さん、良くも悪くもこの道一筋で…

 生まれてこの方“刀”以外を作ったことがない。

 まぁ、殺生石はつい最近まで非常に採掘量の限られた希少金属だったわけだし、鍛造技術自体殺生石の加工以外では全く必要の無い技術だから…

 敢えて御神刀以外のものを鍛造で作る機会も余裕もなかったらしい。

 “刀”の代わりに“剣”をってくらいならともかく、全く形状の異なる鎧なんて、どのように打てばいいのか見当もつかないって言われてしまった。

 で、次に考えたのが“鍛造”ではなく“鋳造”。

 簡単に言えば、鋳型に溶かした金属を流し込んで、それを冷やして形を作るって方法。

 これなら鍛造と違ってあまり技術もいらないし、自分達でもなんとかなるはず!

 そう思ったんだけどねぇ…

 どうも想像通りにいかないんだよ。

 金魔法で作るのと違って鉄板は厚くなり過ぎちゃうし、当然その分重さも大変なことになる。

 普通ならここで軽量魔法を組み込んでって考えるんだけど、殺生石の鎧に軽量魔法は通らない。

 おまけに細部の細工も雑で、関節の動きも悪い。

 筋骨隆々なマッチョなおじさんを集めた重装歩兵ならともかく、機動力重視の戦闘スタイルのサラ様やレジーナ、私では、こんな鎧を着たら満足に動くこともできない。

 ちなみに、レオ君でも無理。

 そもそもこの世界の戦闘職の人って、魔法在りきだからそこまで筋肉鍛えたりしないしね。

 細マッチョ程度に鍛えている人は多いけど、プロレスラーみたいな人は少ない。

 攻撃手段も魔法主体で、接近されたら剣で応戦しつつ距離を取って仕切り直しってスタイルだから、魔法攻撃に耐えられなくて機動力を削がれるだけの全身鎧なんて普通使わないし…

 ゴムゴーンの時は軽量魔法が使えたからまだ動けたけど、そうじゃないと私達には正直部分鎧でも重量的に厳しい。

 だって、全身にウェイトつけてるのと同じだからね…

 そんな訳で、鍛造鋳造に関係なく、そもそも殺生石で鎧を作るって計画自体に無理があることが発覚…

 いや、先に気付けよって?

 まぁ、そうだけど…

 こういうのって、理屈ではすぐに分かっても、実際に体験してみないとピンとこないものなんだよ。

 前世のファンタジーで、全身鎧に身を包んだ戦士が普通に飛んだり跳ねたりしてるのを見てるから、ついそのイメージで考えちゃって…

 そういえば、昔スキューバダイビングやった時にもそれ感じたなぁ…

 体験する前には、なんかお洒落なマリンスポーツみたいなイメージだったんだけど…

 どこかの南国のリゾートで女子大生とかがキャッキャ言いながら楽しむみたいな?

 あれ、大体20kg以上の装備つけるんだよねぇ…

 確かに水中なら浮力とかあるから重さは殆ど感じないけど…

 でも、あの装備一式を着込むのって陸上だからね!

 駐車場から海岸までとか、揺れるボートの上とか…

 20kgの重り担いで歩くわけですよ。

 全然お洒落なスポーツじゃない!って思ったものだ。

 まぁ、何事も体験してみるのは大切ってことだね。


 そんなことをふと思い出しつつ、防具作成は振り出しに戻る。

 もっとも、鋳造技術を試す過程で、これ鎧は無理でも大量生産の剣を作るのには向いているのでは?ってことになって、タケミさんには随分と感謝されたけどね。

 ともあれ、金属鎧は重量的に厳しそうだし、もう鎧は諦めて盾とかにする?

 


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