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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第5章 アメリア、世界を巡る

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滅仙窟開発事業

 盗賊討伐から一週間ほどが過ぎた頃、キョウの都から顔見知りの集団がやって来た。


「アメリアちゃん、久しぶり、、でもないけど…

 今回はありがとうね。

 なんか、兄様(にいさま)が面倒押し付けたみたいになっちゃって…」


「いえいえ、鉱山で何か問題が起きてるって事は知らされてましたし…

 労力に見合う報酬(御神刀)はいただきますから、気にしないでください。

 それより…

 予想よりだいぶ人数が多いような…

 タキリさんが来るのも聞いてないんですけど…」


 盗賊討伐が完了した事をキョウの都に伝えた時に、ついでに都にあるアメリア商会に幾つかの物を送ってもらうように言伝をお願いした。

 殺生石の採掘に使えそうな魔道具やら資材やらをね。

 盗賊の脅威は去ったものの、これから私達全員分の殺生石を掘り出すのはやはり大仕事だ。

 ていうか、ふつうに無理!

 ただ、検証の結果、洞窟内であっても魔道具によっては使用できる物もあるって分かったからね。

 だったら、洞窟内でも使えそうな魔道具を取り寄せて、それを使えばってことになったわけ。

 私達に必要な分の殺生石を掘り出すだけの簡易的なものなら、既存の魔道具に手を加えれば何とかなるかなって…

 で、それらを送るようアメリア商会に指示を出したら、なぜかタキリさんがお抱え技術者集団を引き連れて一緒にやって来た。

 そう、彼らの殆どは顔見知り。

 タキリさんと一緒にセーバの街に滞在して、船や鉄道の開発にも協力してくれていたからね。

 確か、今は倭国に戻って倭国内の鉄道開発を進めていたはず…


「アメリアちゃんが滅仙窟でも使える魔道具作るって聞いたら、なんか皆乗り気になっちゃってね。

 今回の盗賊騒ぎで、宮中でも滅仙窟を今のやり方で管理するのは問題では?って意見も出ていて…

 折角の機会だし、採掘方法も含めて大々的にテコ入れしようって話になったのよ」


 今のまま滅仙窟は危険で無価値な場所という認識を広めて、人を寄せ付けないようにするという方法もある。

 でも、それだと今回の盗賊騒ぎみたいな問題がまた起こるかもしれないし、何より人目を引く大規模な開発はできないから、これ以上殺生石の採掘量を増やすこともできない。

 少なくとも(ぬえ)討伐には御神刀が不可欠で、今回のように(ぬえ)の発生率が高い年には、御神刀の数も不足気味になる。

 年に数本しか作れない今の状態では、御神刀は隊長格に持たせるのが精々。

 それ以外の一般の隊員では、街中で鵺を発見してもその場での対処はできないのだ。

 普段は宮中で管理するにしても、緊急時には腕のある隊員には全員御神刀を持たせられるくらいの数を確保したい。

 そんな意見は度々現場タケミさんからは出ていたようで…


「他でもないアメリアちゃんが技術協力してくれるってなったら、イィ様の御技を受け継ぐ家はどこも反対できないしね。

 この国の今の繁栄自体、イィ様のもたらしたヒノモトの技術を受け入れた結果だから。

 兄様のことだから、きっとその辺も計算した上でアメリアちゃんに今回のことを持ちかけたんでしょうね」


 どうやら、滅仙窟で起こったトラブルの解決(盗賊退治)や技術開発以外にも、上層部の説得という政治のカードとしても利用された模様…

 倭国の次世代(皇太子)は、なかなかのやり手みたい。

 自国の王太子(ライアン殿下)を思い出すと、ちょっと不安になるね…


 さて、そんなこんなで始まった滅仙窟開発事業。


 ドガガガガガ、、、、


 魔道エンジン搭載の掘削機が咆哮を上げる。

 魔道エンジンの構造は前世のガソリンエンジンに似ているけど、密閉されたシリンダー内の空気圧を魔石に籠められた魔法で調製しているところが最大の違いで…

 要は、魔法が使われている部分は密閉されたシリンダー内だけだから、魔道エンジンは殺生石の影響を受けないってこと。

 今まではつるはしやノミでトンテンカンと手作業で行っていた作業が、あっという間に進んでいく。

 そうして掘り出された殺生石は、柔らかな車輪の“一輪車”で広い通路まで運ばれる。

 この世界、一輪車自体が珍しいみたいだけど、ここで使われているのはその最新版!

 まぁ、たんに“ゴムタイヤ”をつけているってだけだけどね。

 それでも、従来の硬い木製の車輪とは格段に違うみたいで、悪路でも台車が全く横転しない、荷崩れしないと大好評だ。

 最後に、広い通路まで運び出された殺生石は、洞窟内の通路から村まで引かれた線路を辿ってトロッコで村まで運ばれていく。

 この辺の技術は、ここ数年の鉄道事業で皆慣れたものだ。

 これらの新技術導入に加えて作業人数も増員したことで、殺生石の採掘量は格段に増大した。

 それこそ、ここ数日で今までの一年間分の殺生石を採掘できちゃったくらいに…


「これだけあれば、アメリアちゃんたちの分の御神刀を作るのには十分よね」


 村に積まれた殺生石を見て、タキリさんも満足そう。


「はい、お陰様で。

 でも、いいんですか? こんなに派手にしちゃって…

 殺生石の採掘って、秘密なんですよね?」


 とにかく殺生石の採掘量を上げたいっていうタケミさんの要望で、自重無く色々やっちゃったけど…

 タキリさんの“やり過ぎ”はいつものことだし、私もなんだかおもしろくて思いつくままにアイディア出したりしちゃったけど…

 これだけ派手にやっちゃうと、もう全然こっそりじゃないよねぇ…?


「その辺りは大丈夫。

 ここは職人の魔法に頼らない、魔道具主体の新たな採掘方法を模索する実験場って名目で、皇家が管理運営することになったから。

 元々この土地は皇家の禁領だしね。

 殺生石も見た目はただの鉄と区別がつかないから、(はた)から見れば何か変わった方法で作業している鉄鉱山にしか見えないわ。

 皇家主導の新たな技術開発って名目だから普通に警備も増やせるし、それで注目されるのはここで使われている魔道具の方だから、掘り出された鉄鉱石(殺生石)が特別なものだとはまず気付かれないわよ」


 そんな訳で、ここで使われる魔道具は派手であればあるほど、殺生石のカムフラージュには丁度いいらしい。


 こうして、大義名分を得たタキリさんとそれに巻き込まれた私によって、滅仙窟は新たな魔窟へと生まれ変わったのだった。


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