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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第5章 アメリア、世界を巡る

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滅仙窟奪還作戦2

 入り口からここまで、15分くらいは歩いただろうか。

 私達は今、小さな体育館ほどの広さの開けた場所。その中心に立っている。

 洞窟内での盗賊との一度目の遭遇以来、ここまで私達は一度も盗賊たちに襲われていない。

 遠くに姿を見かけることはあっても、奴等がこちらに攻撃を仕掛けてくることはなく…

 こちらの姿を見ると慌てて洞窟の奥に逃げていってしまう。

 そうして、何の問題も無くここまで来れたわけだけど…


「もうお前たちは袋のネズミだ!」


 リーダーっぽい髭面の盗賊が、私達に向かってそう宣言する。

 この空洞に繋がる幾つかの通路からは複数の盗賊たちが現れ、私達を取り囲んでいる。

 私達が入ってきた通路も、いつの間にか塞がれている。

 どうも逃げ道は無いらしい。


「ひ、人質はどこ!?」


「ふっ、この期に及んで人質の心配か?

 やせ我慢はよせ。声が震えてるぞ」


「いいから! 人質はどこか言いなさい!」


 焦った様子の私に気を良くしたのか、髭面が一つの通路の方を指差して言う。


「人質なら、そこの隙間に押し込んであるぞ。行き止まりでここを通る以外に逃げ場はない。

 ここにいる全員を倒すしか、救出の手はねえな」


 盗賊の言葉に悔しそうに髭面を睨む私を見て、更に饒舌になる髭面の男。


「ふっ、大方村人にでも雇われた暗殺者あたりだろうが、残念だったな!

 この人数に囲まれては手も足も出まい。

 魔力も低そうだし、どうせその容姿で相手を油断させて近づいて、後ろからばっさりってところだろう?

 ここでは魔法は使えねえ!

 この人数で一斉にかかれば体術なんて関係ねえ!

 集団で押さえ込んじまえば、非力な小娘になにができる?

 まさに、まな板の上の鯉ってヤツだ!

 精々、俺たちの上でピチピチ跳ねてもらおうじゃねえか!」


 自分の言葉に興が乗ってきたのか、楽しそうに下卑た笑みを浮かべる髭面の男とその子分たち。

 悔しそうに俯いているレジーナさん…


「見たところ、西方の生まれか?

 魔法王国人にしては随分と魔力は少なそうだが…

 あの国でそんな魔力なら、できることは娼婦か寝間での暗殺くらいか?

 まぁ、確かに見た目は上等だ!

 俺としてはもうちょっと歳がいっていた方が好みだが、たまにはガキ相手もおもしろい。

 まずは俺様がいただいて、その後はここにいる全員の相手をさせてやろう!

 お前ら! 久々の女だ! ありがたく味わえ!」


「「「「「ぅおぉおぉおお〜〜!!」」」」」


 髭面の言葉に勝手に盛り上がる盗賊たち。

 私の横ではレジーナの肩が震えている。

 不味い!

 レジーナがキレる!

 私に向けられるあからさまな下卑た視線。

 最近は殆ど無かったとはいえ、セーバの街が今みたいに発展する前には、少なくとも王宮や王国内では当たり前だったもので…

 割とこの手の反応に慣れっこな私と違って、昔の王宮の様子を知らないレジーナからすると、このように一方的に私へと向けられる悪意に我慢がならないみたい。

 これ以上髭面を放置しておくと、ブチ切れたレジーナさんが直接攻撃にでかねない…

 私は興奮する盗賊に声をかける。


「あのぉ、盗賊はここにいるだけで全員ですか?」


「あぁ? 勿論、全員集まってるぜ!

 安心しろ、きっちり全員の相手をさせてやるよ!」


 男だし、ここでの禁欲生活が続いたせいなのか、もうこれからの妄想で頭がいっぱいのご様子…

 一応剣や槍を構えつつも、組み伏せる気まんまんで囲いを狭めてくる盗賊たちと、もう我慢の限界っぽい様子のレジーナさんを確認して…

 私は腰のポーチに手を入れた。


 コロコロコロ〜


 私がポーチから取り出したソフトボールくらいの球が、盗賊たちの方に転がっていく。

 何が落ちたのかと、盗賊たちの注意が地面を転がる球体へと向けられ…

 私とレジーナは、その隙に素早く仮面(マスク)を装着する。


 ブシュ〜〜〜


 転がる球体から突然吹き出した白い煙は、瞬く間に小さな体育館ほどの広さの空間を埋め尽くしていく。


「うぅわあ〜!」

「な、なんだこれ!?」

「お、落ち着け!」

「おい! しっかりしろ!」

「ちきしょう! なにしやがった!?」


 バタバタと倒れていく盗賊(なかま)たち。

 辺りは白い煙で満たされ、視界もはっきりしない。

 目の前の視界がぼやけ、次第にその意識も霞んでいく。


 しばらくして、空洞内に満たされた催眠ガスが空洞に繋がる通路から全て抜けきるのを待って、私達は口元から仮面の魔道具(ガスマスク)を外した。

 空洞内のあちこちには、死んだように眠りこける盗賊たち。

 そして、先程髭面が示していた場所には、催眠ガスが流れ込んだせいで同じく眠りこけている鉱夫たち。


「とりあえず、目を覚まさないうちに盗賊たちを縛っちゃいましょうか」


 私達は、その場に倒れ伏したまま全く起きる気配を見せない盗賊たちを、手分けして逃げられないよう縛りあげていく。

 それにしても、本当によく眠ってるね。

 今回の作戦で使ったのは、ダルーガ伯爵のところから押収した毒煙の魔道具。それの改良版だ。

 球体の中の液状の催眠薬を気体に変える魔法が仕込まれている。

 今回の作戦では、この魔道具が滅仙窟内でも使えるかどうかが心配だったんだけど、特に問題無いようで何よりだった。

 いや、念のため洞窟に入る前にも、洞窟の入り口付近で簡単な確認はしたんだよ。

 滅仙窟内では、魔法も魔道具も使えないとは言われていたしね。

 ただ、聞いた話や村での殺生石の実験の結果、案外いけるんじゃないかなぁって思って…

 殺生石は触れた魔法を、魔力を霧散させてしまう。

 だから、例えば洞窟内で明かりの魔道具を使ったとしても、魔道具によって作り出された光や炎が洞窟内の空気に触れた瞬間、それらは全て消えてしまうってわけで…

 逆に言えば、洞窟内の壁にも空気にも魔石や魔法が触れないなら、問題なく機能するのではないかと…

 セーバ産の魔道具って、魔石に籠めた魔法を直接使うのではなく、それを利用して別の運動や用途を生み出すってものが多いからね。

 例えば、今回使ったような相手を眠らせる魔道具を作るとして…

 この世界の魔道具の発想だと、魔石に眠りの魔法を籠めて、それを相手に向けて放出するって感じ。

 これだと、出力された眠りの魔法が相手に届く前に、洞窟内の空気に触れて魔法が霧散するってことになってしまう。

 でも、今回使った魔道具は、密閉された球体内で中の液体を気体に変えているだけだからね。

 魔石が外の空気に触れることもないし、噴出された気体は元々睡眠薬だから、その効果は魔法とは関係無いしね。

 これは仮面の魔道具(ガスマスク)も一緒。

 口元の外からの空気が入り込まない狭い密閉空間で、呼吸に必要な空気を作り出しているだけだから、外の空気と魔道具内の空気や魔石が触れることはない。

 これなら、魔法を打ち消す滅仙窟内でも普通に使えるってこと。

 この理屈で間違い無いかを洞窟に入ったところで確認した上で、今回の作戦に至ったわけで…

 盗賊たちの人数諸々から判断して、こいつらが集まっている場所も地図でおおよその見当はついていたからね。

 相手は手練(てだれ)だけど少人数で、一対一の位置関係になる狭い通路での迎撃は不利って思わせておけば、絶対にここに集まって集団で待ち伏せするだろうって思っていた。

 私達は盗賊を縛り上げて人質の無事を確認すると、入り口で待機しているレオ君とサラ様に連絡を取って村に事後処理をお願いした。


 

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