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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第5章 アメリア、世界を巡る

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旅に遅れはつきもの

まったり最終章突入です。

 大陸の西の(はて)モーシェブニ魔法王国唯一の貿易都市セーバから、東の(はて)倭国の都キョウまでを、20日間ほどかけて走る大陸横断鉄道。

 途中にはおよそ30ほどの駅があり、各駅ごとの停車時間はかなり長い。

 大体その日の夕方頃到着すれば出発は翌日の朝だし、日中到着なら最低一刻(2時間)くらいは停車している。

 これは、乗客の乗り降りのためというより、交易品等の荷の積み下ろしの方に時間がかかるためだ。

 後は、列車に使う魔力の補充とか車両整備とかね。

 日本人の感覚だと一駅の停車時間が2時間とかあり得ない感じだけど、前世でもシベリア鉄道なんかは長いと2時間くらい停車したりしていたからね。

 到着も4時間くらい遅れて、夕方6時くらいに到着するから余裕とか思っていたのが、実際には夜中10時過ぎにモスクワに到着して、結構慌てたりしたこともあった…

 結局何を言いたいかというと、大陸を横断するような長距離列車での旅なんて、多少の時間の遅れは誤差の範疇だよねってこと。

 最短二十日(はつか)で終わる旅路が、半年経った今でもまだ半分ほどしか進んでいなかったとしても、それは不思議でも何でもないのだ。

 旅って、そういうものだし…


「お姉さま! このお肉、すごく美味しいです!」


 とある街の市場での一コマ。

 露店のおじさんに渡された串に刺さった焼き肉にかぶりつくサラ様。

 すっかり旅慣れて…

 そんな感慨にふけりつつ、私も手にした肉にかぶりつく。


「ッ! ほんとうに美味しいわね! おじさん、これワイルドカウよねぇ?」


「おうよ! でも、ただのワイルドカウじゃねえよ。

 こいつはうちの村で家畜として育てたもので、その辺の野生のやつとは違うんだよ。

 詳しくは言えないが餌が特別でな! 餌にいくつかの薬草を混ぜることで、こんな柔らかくて甘みのある味になるんだ」


 へぇ、餌からっていうと… イベリコ豚みたいなものかなぁ…

 野生の魔獣を狩ってくるのではなく、家畜化して子どもの時から育てるってのも珍しいね。


「確かに魔獣独特の臭みもないですし、口の中で溶けてくような柔らかさですね」


「………………」


 レジーナのお眼鏡にも適ったみたいだね。

 レオ君は食べるのに夢中みたいだし…


「ねぇ、おじさん。このお肉って、もっと大量に買うことってできないかな?」


 ………………


 その後、おじさんの村に連れて行ってもらって、そこで村長さんと価格交渉。

 めでたく、駅舎内のアメリア商会系列のレストランのメニューに追加することができた。


 こんなことを頻繁に繰り返していれば、それは時間もかかるよねぇ…

 でも、実際こうしてのんびりと旅してみると、意外とまだ世に知られていない名品も多くて…

 ネットやSNSはおろか、テレビや雑誌すらない世界だからね。

 口コミっていっても限界があるし…

 あと、今回のワイルドカウみたいに、顧客層としては絶対上流階級向けの商品なのに、売っているのは庶民しか集まらないような下街のマーケットのみとかね。

 ただの村人には大店の商会に売り込むような伝手(つて)もノウハウもないから、結局口に入ればなんでもいいって庶民が集まる場所でしか商売できないわけで。

 そもそも、自分達が扱っているものの商品価値も分かっていなかったりするから、他よりも高い値で売れるなんて発想もない。

 今回のお肉の件にしたって、こちらが提示した金額を聞いて村長さん目を回していたしね…


 まぁ、そんな感じで、あそこに隠れた名品があると聞けば足を伸ばし…

 どこそこに美味しいものがあると聞けばそれを味わい…

 隠れた秘境、珍しい風俗があると聞けばその目で見て確かめ、見聞を広める。

 幸いなことに、この手の情報には事欠かなかったりするんだよね。

 実は、あのザパド領での戦いが終わった後、それまでザパド領の調査にあたってもらっていた傭兵の皆さんには、各駅にあるアメリア商会に散ってもらった。

 で、そこを足場に鉄道の警備や周囲の情報収集をしてもらっているんだけど。

 集める情報に特に制限や目的はつけていない。

 別に担当地域の政情に関係無い話でも、「どこそこに最近評判のお店ができてね」とか、「どこそこの森で珍しい魔獣の目撃情報があって」とか、「今年はどこそこの村が豊作で随分景気がいいらしく」とか…

 要は、何でもいいって言ってある。

 少しでも興味を引く話を聞いたら、とりあえず報告するようにってね。

 そんな感じで集められた各地の情報を駅舎内のアメリア商会で検討し、ここが面白そうだってなると早速出かけていくわけで…

 それはいくら時間があっても足りないよね。

 いや、アメリア商会に寄った時には決裁待ちになっている保留案件を片付けたり、セーバの街の様子を確認して指示を出したりして、それなりに仕事もしているんだよ。

 何日か商会事務所に籠もってお仕事する時もあるし…

 だから、遅れがちな旅程の全てが“遊び”ってわけではくて…

 そもそも、この旅自体が“視察”であり“仕事”だからね。

 美味しいお肉の仕入先が増えればアメリア商会の利益も上がるんだから、決して遊び呆けているわけではないのだ!

 お仕事ですよ!

 お、し、ご、と!




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