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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第4章 アメリア、ダルーガ伯爵の野望を打砕く

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都市奪還作戦 〜ソフィア侯爵視点〜

(ソフィア侯爵視点)


 大量の物資を積んだ最新式の大型馬車が、街門の前に列をなす状況に、門を守る兵士以外にも、多くの人々が集まってきます。

 待ちに待った物資の到着に、街の住民からの歓声が聞こえてきます。

 ザパド侯爵領の次期領主自らが、民を救うために危険を(かえり)みず救援物資を届けに来てくれた…

 その事で、いっそう民の気分は盛り上がる…

 それは、今回の救援物資だけの問題ではなくて…

 侯爵家の人間が直々に動いた。

 敵対しているはずのアメリア公爵も協力してくれているらしい。

 これで、やっと今の現状から抜け出せるのではないか?

 そんな期待が、周囲の熱狂からも感じ取れます…

 それを嬉しいと感じる一方で、申し訳ない気持ちにもなります…

 この街を、ザパド領を傾かせた原因は、領主であるザパド侯爵(お父様)が原因で、

 街の外に出られなくなったのは、ダルーガ伯爵とそれに(くみ)したザパド領貴族の企てで、

 ここ最近満足に物資が届かなくなっていたのは、商隊を襲っていた私達の策略だから…

 民が程よく飢えたところで救援物資を届けにきた今の状況は、とんだ茶番だ…

 恐らく、その事を知っている目の前の男、街の街門警備の指揮官は、街に入る許可を求める私に引き()った笑みを向けてきます。


「何故、街には入れないと?」


「ですから、領主様の許可証を持たない者は、街の中には入れられない規則で…」


「あなたの言う“領主”とは、誰のことですか?

 この街を含むザパド領全域は、本来全て我がザパド侯爵家の領地です。

 たとえこの街の領主の地位を認められているとはいえ、それはザパド侯爵家の庇護下においての話。

 寄親()であるこの私が自分の領地に立ち入るのに、何故寄子()の許可を必要とするのですか?」


「いや、それは…

 とにかく、只今領主様の許可を取って参りますので…」


 何とか私達を街門の外に止めようとする指揮官。

 まぁ、気持ちは分かります。

 十数台の大型馬車に、それを護衛する100人を超える護衛団。

 ちょっとした軍隊です。

 いえ、実際ここに待機しているのは、支援団ではなく軍隊。

 ダルーガ伯爵により不当に占拠されたこの街を開放するための、突入部隊なのですから。

 ただし、その事に気付いているのは、自主的にダルーガ伯爵やキルケさんに味方する一部の者たちのみ。

 街の住民も兵士も、殆どの民はその事を知りません。

 その企てを承知で協力していた街の外の部隊は、既に排除済。

 今いるのは、これが仕組まれた茶番とも知らず、ただ上官の指示に従って、居もしない敵を警戒する善良な領軍兵士のみです。

 この状態で私達を中に入れてしまえば、街の住民を人質にして街に立て籠もる、なんてこともできなくなります。

 さぁ、どうしますか?

 こうしている間にも、私達のやり取りを見守る周囲の目が、どんどん厳しくなっていくのを感じます。

 事前の情報操作で、私や支援団の存在を疑うような者はいません。

 突然に現れたなら、こんなところにソフィア侯爵(わたし)が直接来るはずがないとか、まずは本物の支援団であるかの確認をとか、難癖もつけられたでしょう。

 でも、今の状況でそんな事を言っても、誰も信じはしないでしょう。

 領主に許可を取ってくるから、とにかく待って欲しいという指揮官に、ちょっとした逃げ道込みの最後通牒を突きつけます。

 あまりのんびりしていると、敵の首魁に逃げられてしまいますから…


「いいえ、結構です。ブルーム伯爵には私から直接お話しします。

 間に立ったあなたがブルーム伯爵に叱られるのも不憫ですから…

 あなたには、ブルーム伯爵の元への案内役をお願いしますね」


 私を見て、今にも襲いかかってきそうな周囲の反応を見て、


「ご案内いたします…」


 何かを諦めたように、私に了承の意を伝える目の前の指揮官。


 そして、騎乗した指揮官を先頭に、私の乗る馬車を含む救援団が街の大通りを進んでいきます。

 それはさながら凱旋パレードのようで、救援団一行は民の歓声に包まれながら、ゆっくりと領主の館へと向かっていきます。

 途中、何割かの護衛の兵士が、いつの間にか街中に消えていきましたが、お祭り騒ぎのパレードの中で、それに気付く者もいません。

 下街の方の鎮圧は、手はず通り彼らに任せておけば大丈夫なはず。

 私は私の仕事をするだけです。



「お初にお目にかかります、ソフィア侯爵様。

 (わたくし)、ブルーム伯爵の補佐を務めさせていただいておりますサンドと申します」


「そうですか、それでブルーム伯爵は?」


「…それが、ブルーム伯爵は少々心の病を患っておられまして…

 最近は街の外の治安が悪化しておりまして、そのせいか心労が祟り…」


「そうですか… で、ブルーム伯爵はどちらに?」


「いえ、ですから、その、伯爵は心労で…

 なんと言いますか、少々呆けてしまわれておりまして…」


「では、別にご病気で臥せっているというわけでもないのですね?

 でしたら、一度お会いして様子を確認したいのですが…」


「それは、その、とてもソフィア侯爵様のお相手ができる状態ではなく…

 何か、失礼がありましたらと…」


「ご病気なら仕方がありません。

 構いませんから案内して下さい」


 そんなやり取りを経て案内されたブルーム伯爵の私室には、椅子に座ったままうわの空で宙を見つめるブルーム伯爵。

 やはり、お父様と同じですね…

 数日前、ザパド郊外にある侯爵家の保養地で保護されたザパド侯爵(お父様)は、今のブルーム伯爵と全く同じような状態でした…


「お(いたわ)しい! いつも街のため、民のためと心を砕いておられたご領主様がこのような…」


 三文芝居を始めるサンド子爵を無視して、私は黙ってブルーム伯爵の側に寄ります。

 そして、サンド子爵が動き出す前に、懐から取り出した掌大の魔道具をブルーム伯爵の額に当て、そこに魔力を流していきます。

 セーバの諜報員が回収してきた心を操る薬。

 アメリア様は“麻薬”の一種と言ってましたが、そもそも心を操る薬草など聞いたこともありませんでした。

 どうも、複数の薬草や鉱物、魔物の素材等を加工して、この世には存在しない効果を持つ新たな薬を作る技術らしいですが…

 ともあれ、回収されてきた薬は解析され、その効果を抜き出すための治癒魔法が籠められた魔道具が開発されました。

 この魔道具を患者に当て、一定の魔力を流し続ければ、薬によって体内に蓄積された毒を抜き取ることができます。

 そうこうしているうちに、ブルーム伯爵の顔に生気が戻り、意識がはっきりとしてきました。


「……ぅ、そ、ソ、フィア、さま」


「はい、ソフィアです。

 ブルーム伯爵、今の情況は分かりますか?」


「は、はい… だいじょうぶです。

 …我がまちブルームのことも、

 サンド子爵とキルケ嬢(あの女)のした事も… 全て!!」


 薬によって切り離されていた感情が戻るに従い、今の情況を実感できるようになったブルーム伯爵から怒りが溢れ出します。

 ブルーム伯爵も、今の街の現状を理解していなかったわけではないのです。

 ただ、実感できなかっただけで…

 回収された薬の解析から、今回ザパド領支配のために使われた薬は2種類。

 一つは、意識などはそのままに、一定間隔で薬の禁断症状を起こさせるもの。

 私が街に入るのを拒んだ先ほどの指揮官や、街の外で暗躍していた領軍幹部や兵士の一部に使われていたのが、この薬でした。

 そして、二つ目。

 ブルーム伯爵や、ザパド侯爵(私の父)に使われていた薬です。

 この薬に冒されると、次第に無気力になり、同時に周囲で起こっていることが夢現(ゆめうつつ)のように現実感を伴わないものになってくるそうです。

 今の政策は領主が承認したものと思わせるため、重要な決定の場にはブルーム伯爵も立ち会っていたのでしょう。

 ただ、お芝居でも眺める観客のような気分で…


「サンド! 貴様!!」


 急速に意識を覚醒させ、今まで見せられてきた夢が全て現実だと実感できたことで、未だこの情況についていけていないサンド子爵に、ブルーム伯爵の怒りの矛先が向かいます。


「なッ、なッ、ば、馬鹿な!

 あの薬の治癒は不可能と、、き、キルケ様が…

 あっ、いや、その、私はキルケ様の指示に従っただけで…

 決して領主様(ブルーム伯爵)を裏切るつもりなどなく!」



 その後、駆けつけた兵士によって捕縛されていくサンド子爵。

 私と一緒に街に入った護衛の兵と事前に街中に潜入していた諜報員たちによって、ブルームの街の敵兵力の掃討が進みます。

 途中からは、解毒の魔道具によって頸木(くびき)を解かれた領軍幹部の協力もあり、ブルームの街は瞬く間に正常な状態を取り戻しました。

 これで残るはクボーストのみです。

 アメリア様が開発した新型馬車や通信の魔道具を駆使して、ザパド領の主要都市奪還作戦を開始して一月(ひとつき)弱。

 事前の作戦通りとはいえ、驚異的な進軍速度です。

 都市間の連絡を周到にカットし、相手の伝令を追い越すような速度で進軍することで、どの都市もほぼ不意打ち状態で攻め落としてきましたが…

 それも流石にバレたようです。

 こちらの動きをやっと察知したクボーストは、密偵の報告では完全に籠城戦の構えに入ったようです。

 恐らく、セーバの街を狙って北に布陣させていた軍と、ダルーガ伯爵領からの援軍を期待しているのでしょうけど…

 そうは問屋が卸しません。

 散々、ザパド領(我が領)を好き勝手してくれたのです。

 報いは、受けてもらいますよ。


前回はお休みありがとうございました。

無事復調しました。

2回目ワクチン接種は、救護室送りのトラブルはあったものの、全体としては1回目より楽でした。

1回目で懲りたのもあって、事前に体調管理に気をつけて臨んだのが良かったみたいです。

色々とご心配をおかけしました。

m(._.)m

さて、話は変わりますが、拙小説のptが遂に5桁台に投入しました!!

9万も1万も何も言わなければ5桁です。

自己満足ですけど、気分も盛り上がるというものです!

やはり、ブックマークや評価がつくと、本当に受け入れられているんだなと安心できますから。

ここまでお付き合いくださった読者様には大感謝です。

ほんとうに、ありがとうございます!

今後ともよろしくお願いいたします。


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