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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第4章 アメリア、ダルーガ伯爵の野望を打砕く

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嵐の前〜王都商業ギルド長他視点〜

(王都商業ギルド長視点)


「ふむ…」


 私は商業ギルド本部から、いや、ビャバール商業連邦最高議長から届いた親書をそっと封筒に戻した。


(静観しろ、か…)


 今回連邦ギルド本部に送った定期報告書には、ここ最近のザパド領の不穏な動きと併せて、マシュー商会についての報告も上げておいた。

 一時(いっとき)増えた連邦の商会からのアニー嬢に対する問い合わせ…

 これは理解できる。

 どのような経緯で彼女(アニー嬢)の名が連邦の商人達に知られるようになったのかは謎だが…

 元々この王都の商人の間では評判の娘だ。

 マシュー商会が本格的に連邦との取引を始めたなら、アニー嬢の名が連邦の商人達に知られるのも時間の問題だっただろう。

 当時、皆が首を傾げたレボル商会本店移転の動きから、セーバの街の有用性とザパド領の危険性をいち早く察知し、ザパド領が商業の中心地であることを誰も疑わない段階で、父親と周囲を説得してザパドの本店を王都に移させた。

 ザパド領での商業基盤の切り捨てとセーバの街の台頭で一時は業績を落とすものの、早々にザパド領を経由しない商業ルートを開拓し、他の商会に先駆けてセーバの街に支店を確保。

 本格的に傾き出すザパド領と共に多くの大商会が潰れる中、いち早くその危機を乗り切った経営手腕に、結果を見た他の商人たちは舌を巻いた。

 その後も、王国南部とレボル商会、アメリア商会との仲介をしたり、セーバ産の魔道具販売の代理店契約を結んだりして、今も業績を伸ばし続けている。

 レボル商会はともかく、王都や南部の商会に伝手(つて)を持たないアメリア商会の商品が、これほど早く国内に流通するようになったのには、マシュー商会の後押しも大きかったはずだ。

 アニー嬢の商機と時代の流れを感じ取る感覚は本物だ。

 良くも悪くも既存の常識に囚われず、商売の良い流れを掴み取っていく…

 まだ見習いに過ぎない歳の子供に、なぜあれほどのことができたのか…

 いや、逆に頭の柔らかい子供だからとも言えるか…

 歳を取ると時代の流れについていけないと愚痴っていた者たちを、昔は私も笑い飛ばしていたものだが…

 今なら、ディビッド殿下やアリッサ様、ベラドンナ様を見て、頭を抱えていた貴族や商人達の気持ちも理解できる…

 ともあれ、そんな誰もが目を見張るアニー嬢の功績も、()()()の前では霞んでしまうが…

 アメリア公爵…

 どこからどう見ても庶民にしか見えない薄い色の髪の子供が、セーバに商業ギルドの支部を作れとここにやって来た時には驚いたが…

 あの時に聞かされた子供の夢物語が、このわずかな期間で現実になるなどと、一体誰が想像できるというのか…

 今ではこの国は、、いや、この世界は、アメリア公爵を中心に回っている。

 私は、マシュー商会から提出された連邦にある複数の商会との取引記録を読み返す。

 ここ最近、マシュー商会と連邦の複数の商会との、主に金属の取引が急増している。

 王都の老舗工房で精錬した質の良い金属を、安全な大量輸送が可能になった鉄道と大型船を使って輸出する…

 嘘だな。

 一見それっぽい取引記録にはなっている。

 一時のアニー嬢への連邦の商会からの問い合わせと併せて考えれば、マシュー商会が本格的に連邦との取引に乗り出したようにも見える。

 だが、違う…

 これは、間違いなくアメリア公爵と連邦の商会との、、いや、恐らく連邦最高議長との取引だ。

 アメリア公爵がいつ連邦最高議長と接触したのかは知らないが、十中八九ふたりはグルだ。

 最高議長の“静観しろ”は、そういう事だ。

 これがただの商取引なら、わざわざマシュー商会を使って取引を隠蔽する必要は無い。

 最高議長が承知の取引に対して、商業ギルドに敢えて嘘の取引記録を出すのは…

 商業ギルド内にも知られたくない相手がいる…?

 ザパド侯爵相手なら、ザパドやクボーストの商業ギルドを通さなければ情報は流れないはず…

 商業ギルド本部からではなく、直接連邦最高議長から送られてきた親書…

 隠したいのは、ダルーガ伯爵か!?

 ダルーガ伯爵は現連邦最高議長の政敵で、ザパド侯爵との癒着も噂されている…

 ザパド侯爵と敵対しているアメリア公爵と、ダルーガ伯爵を排除したい最高議長が手を組んだとなると…


 ……触らぬ神に祟りなし。

 この件は放置だな。

 せっかく“静観しろ”と言ってくれているのだ。

 素直に静観させてもらうとするか…



(連邦最高議長視点)


(いつでもいける、か…)


 アメリア公爵からの手紙に目を通したわしは、こちらの現状を確認していく。

 資材、人員共に問題無し。

 いつでも着工可能か…

 複数の商会宛に秘密裏にセーバの街から送られてきた鉄道用資材と職人達。

 彼らの話では、倭国の都からラージタニー(ここ)程度の区間なら、一月(ひとつき)とかからず鉄道の設置が可能だという…

 整地して線路を敷くだけですからと、簡単に言っていたが…

 流石は魔法王国人というべきか…

 我が国の常識では考えられんな…


「よし、セーバの使節団に連絡を。鉄道工事を始めてもらえ。

 タイミングを見て国内有力者に鉄道が開通することを通知。

 二ヶ月後を目安に、鉄道の開通式を行う。

 併せて、連邦最高議長の名において、臨時議会の開催を宣言する」


 大陸横断鉄道計画に関して、現状でできる根回しは全て終わっている。

 未だ態度の煮えきらない連中もいるが、それもあの実物を見れば納得するだろう。

 わし自身、倭国の研究施設で列車の試運転を見た時には、その凄まじさに度肝を抜かれた…

 話には聞いていたが、まさかあれほどのものだとは思わなかった。

 あんなものが、実際にラージタニーと倭国の間を行き来するところを見れば、どんなボンクラな商人でもその有用性に気づくだろう。

 これで、話半分で聞いていた連中も動く。

 完成式典は盛大にせねばならんな…

 他国の辺境の話であれば、わざわざ見に行こうなどとは考えなかった連中も、それが国内にできたとなれば無視もできまい。

 同時に臨時議会も開かれるとなれば、殆どの議会メンバーがラージタニーに集まるだろう。

 勿論、ダルーガ伯爵も…

 滅多に開かれることのない臨時議会と、新たに開発されたセーバの鉄道技術…

 気にならないはずがない。

 アメリア公爵に危険視されているダルーガ伯爵が、セーバ領を走る鉄道を直接見に行くことは難しい。

 だが、それが自国内となれば別だ。

 元々新しい技術には貪欲な奴のことだ。

 ダルーガ伯爵は必ず見に来る。

 ダルーガ伯爵領からラージタニーまでの移動には、片道でおよそ1ヶ月。

 往復と考えても最長で2ヶ月といったところか…

 たったそれだけの期間で、ザパド領の制圧が本当に可能なのかは分からんが…

 あの娘(アメリア公爵)には何やら他に腹案もあるようだが…

 まぁ、ここはアメリア公爵のお手並み拝見といこう。

 こちらとしては、ラージタニー(ここ)から倭国まで鉄道を引いてくれるだけでも十分な利になるのだ。

 精々、協力させてもらうとしよう。


すみません。

次回の更新お休みします。

もしかしたら、来週も危ないかも…

ワクチン接種のダメージが思いの外ひどくて…

昔打った黄熱病の予防接種を思い出しました…


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