表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第4章 アメリア、ダルーガ伯爵の野望を打砕く

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

235/321

ライアン殿下、猛省する 〜ライアン王太子視点〜

(ライアン王太子視点)


 やれやれだ…

 だいぶ数が減ったとはいえ、まだこのような者がいるのか…


『平民と貴族は違う!』


『魔力の少ない者に教育を与えて何になる?!』


『平民は我々貴族に守られているのだから、その恩に報いるのは当然で…』


(恥ずかしい…)


 このような主張を聞かされる度に、私の心がすり減っていく…

 それは、ほんの数ヶ月前までの自分の黒歴史を見せつけられるに等しいのだから…



 生まれ持って恵まれた魔力量を持つ貴族は、それだけで魔力量の少ない他者よりも優れているという主張。

 それは、身体の大きな子供が、自分よりも身長の低い子供を見下す程度の意味しかない…

 まだ何の知識も技術もなく、無邪気に飛び回るだけの幼子ならその主張も正しいだろう。

 だが、いい年をした大人が、ただ身体が大きい、腕力に優れているというだけで、全てにおいて自分は優れているなどと言ったら…

 極論を言えば、単純に生まれ持った魔力量のみに価値を置く我が国の思想は、そういう幼稚な主張だ…

 他国が、我が国の行き過ぎた魔力至上主義に批判的なのも、今なら理解できる。

 魔力の多い者が、魔法を使う仕事において優秀なのは間違いないが、世の中の全ての仕事が魔法のみで解決する訳ではない。

 そんな当たり前のことすら、我々は分かっていなかった…

 長く続いた戦乱の時代ならともかく、今のような平和な時代において、ただ強力な攻撃魔法を撃てるだけの力に、絶対的な価値などない。

 武力面は一流、文化面は三流…

 そう連邦や倭国に陰口を叩かれるのも、やむを得ない話だ…

 それを私は、セーバの街で嫌というほどに思い知らされた…


 …

 ………

 ……………


『なに!? 何も分からないと言うのか!?』


『恐れながら、自分程度の実力では、セーバの街が持つ魔法技術を探るなど不可能でございます…

 その秘密が、セーバリア学園にあるのは間違いございませんが、それを探り出すことなど到底できません』


『むぅ…』


 私付きの侍従であるこの男は、今はまだ王家の暗部の中では見習いに過ぎない。

 それでも、将来王になる私に対して、その側近として付けられた男だ。

 まだ若いとはいえ、暗部の中では将来を嘱望されている優秀な人材だ。

 その男が、手も足も出ないという…

 父上や母上は好きに調べれば良いと言っていたが…

 この結果は予想済みだったという訳か…


『殿下付きである自分がセーバの街について調査したのは、今回が初めてです。

 情報としては聞いておりましたが、正直今でも自分が見てきたものが信じられません…

 自分が如何に井の中の蛙であったか、思い知らされました…』


『それほどか…』


『はい… ただ、ベラドンナ様がおっしゃるように、()()()()()()()()セーバの街(あの街)は安全です…

 何の結果も出せず、不甲斐なく逃げ帰って来た自分が言うのも恐縮ですが…

 殿下ご自身が直接セーバの街に行かれて、ご自分の目でご覧になられるのが一番かと思われます』


 むぅ…

 虎穴に入らずんば虎子を得ず、ということか…

 まずは事前にレジーナ嬢の、、いや、セーバの街の情報を集めた上でと思ったが、これは直接会いに、、調査に行くしかあるまい!

 確かに今までの私は、セーバ産の魔道具や優秀と言われるセーバの人材に対して、懐疑的な目で見ているところがあった。

 だが、あの大森林での戦いで見たレジーナ嬢の魔法!

 ただの平民に過ぎないはずの彼女が放った一筋の光は!

 まさに天上の女神を思わせる美しさで!

 ……いや、勿論、優秀だったのはレジーナ嬢だけではなく、一緒に同行していたセーバの街の兵士たちもだが…

 とにかく!

 魔力の少ない平民でありながら、あのような優秀な人材を多く輩出するセーバの街…

 それを知ることは、次期国王として急務なのだ!


 ………


 そう考えて向かったセーバの街には…


(レジーナ嬢がいない…)


 ……あいにくと、アメリア公爵もサラも旅行中でセーバの街にはいなかったが、お忍びでセーバの街を視察することはできた。

 事前に聞いていた通り、セーバリア学園内を見学することはできなかったが、代わりに留学中のソフィア侯爵から学園の様子を聞くことはできた。

 何を教えているのかという具体的な内容には答えてもらえなかったが、セーバリア学園の雰囲気のようなものは伝わってきた…

 そして、そんな学園で実際に教育を受けたであろうセーバの街の民たちと接する中で、我が国の現状というものが、薄っすらと見えてきた気がする…

 平民しかいないはずのセーバの街には、王都以上の活気があり、みなが生き生きと生活している…

 美しく整えられた通りには、倭国や連邦からの商人と思われる者も多く、非常に開放的な雰囲気が感じられた…


『…この街では、生まれ持った魔力や家柄に関係なく、民が自由に自分の職業を選ぶことができます。

 本人が希望し、努力すれば、その希望を叶えるための教育が与えられるんです。

 お前には魔力が足りないから駄目だと、門前払いされることはありません。

 何事も、本人の努力次第です。

 あと、この街ではお給料も能力給なんですよ。

 働いても働かなくても、持っている魔力量によって給料が保証される、なんてことはありません。

 その代わり、たとえ魔力が少なくとも、結果さえ出せばかなりの高給を得ることができます…』


 …正直、私にはその政策の仕組みはよく分からなかった。

 分からなかったが、その結果は理解できた。

 魔力を持たない、ただ守られるだけの平民が、これほどに豊かで活気のある街を作り上げている…

 

 ………


 王都に戻った私は、父上について本格的に国政に関わる仕事を手伝い始めた。

 今までのような、式典に参加するだけの外向けの公務ではない。

 長い時間執務室に籠り、書類に目を通す地味な仕事だ…

 ここにきて初めて、父上や母上、伯父上が、一般教養検定の導入や学院の改革を強行した理由が理解できた。

 我が国には、優秀な文官が本当に少ない!

 社交中心の学院生活を送り、魔力量と爵位のみで役職についた文官たちの中には、本当に使えない者も多い…

 学院を卒業したばかりの私よりものを知らないだと!?

 一体、何を勉強してきたのだ!?

 そこで思い出すのは、何とか卒業までに試験に合格しようと学問に取り組んだ、昨年一年間の学院生活…

 あれがなければ、私も目の前の無能な文官たちと大して変わらなかったのでは…?

 父上の話だと、今のように書類仕事が増えたのは割と最近の話だという。

 年に一度、一定量の魔石の取引を連邦と行う以外に、他国との関わりなど殆どなかった我が国だったが…

 アメリア公爵の登場で状況は一変したらしい…

 新しい技術による生活の変化…

 連邦や倭国との貿易量の増加…

 これらに関する報告や懸案事項が、大量に王家に持ち込まれたらしい…


『今のこの状況は、単純にあの娘(アメリア)のやらかし、、とも言えんのだ…

 むしろ、今まで王家が有耶無耶にしていた問題を、アメリアが指摘してくれたと言うべきか…

 セーバの街が栄える以前にも、連邦や倭国との交易は行われていた。

 ただ、王家はその管理の重要性を知らず、ただの商人同士の金儲けとして、ザパド領に丸投げしていたのだ。

 その危険性をアメリアに指摘され、同時に王家も我が国の交易の現状を把握しておくべきだと、大量の書類が送りつけられた…

 その結果が、これだ…

 必要なことだということは分かっているのだがな…

 正直、うんざりする…

 これだけの情報を当然のように管理できているセーバの街なら、あの発展も当然であろうな…』


 ……………

 ………

 …


 当初は、地竜(アースドラゴン)を瞬殺したレジーナ嬢の魔法の素晴らしさばかりに目が行っていた。

だが、今はそれだけではない。

 レジーナ嬢を、そしてセーバの街を見れば、アメリア公爵が行った領地運営が、如何に優れたものであるかがよく理解できる。

 そして、現状の王家の状況、国の停滞を考えれば、魔力量のみに価値を置く我が国のあり方は、是が非でも変えていかなければならないと思うのだ。

 今の私にはアメリア公爵のような真似はできないが、それでも古い価値観に囚われた保守派の貴族どもに対する防波堤くらいにはなれよう…


 まずは、目の前の男が学院で妙なことを始めないよう、きっちり説得せねばな…


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生幼女は教育したい!2巻
 書籍2巻10月10日発売です!!

転生幼女は教育したい!1巻
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ