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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第4章 アメリア、ダルーガ伯爵の野望を打砕く

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聴講生

 そんな感じで始まった、本年度モーシェブニ魔法学院…

 ソフィアさん、キルケ嬢が卒業したせいもあるのか、本年度ザパド領からの新入生はいない。

 今僅かに残っているザパド領籍の生徒は、ザパド領に陰りが見えた際に、いち早く王都に家ごと活動拠点を移した貴族家ばかり。

 昨年度まで、キルケ嬢の取り巻きとして活動していたザパド領生徒は、みな昨年度末をもって学院を去っている。

 もう、王家からの離反の意思を、隠す気も無いってことかな…

 まぁ、それはいいとして…

 昨年度は、私の学院長就任や単位認定試験の導入で荒れたけど…

 今年は、なんと言うか…

 昨年のように、私や実技教師に食ってかかる生徒はいない。

 生徒間での派閥争いのようなものも見られない。

 あるのは、異分子(聴講生)に対する警戒感。

 敵の敵は味方ってことかな…

 昨年だと、領地ごと、派閥ごとにいがみ合っていた生徒達が、新たな共通の敵を前に、一致団結しているようにも見える。

 ただし、目に見える衝突は起きていない。

 ただ、お互いに、というか、、主に貴族の本科生側が一方的に警戒しているだけって気もするけど…

 聴講生500人に対して、本科生は1500人。

 本来なら、それ程警戒する必要などない。

 もっとも、本科生1500人のうちの半分は平民の従者で、それが全て同じ平民の聴講生につけば、人数は逆転することになる。

 まぁ、そんな計算ができる生徒なんて、殆どいないけどね…

 そもそも、この国の貴族にとって、魔力の低い平民など何人いても同じこと。

 彼らの警戒心は、たった一人の聴講生の存在に集約される…


 今年の開校式では、聴講生制度導入に関して、在校生側からの猛反発も覚悟していたんだけどね。

 聴講生代表の挨拶が、思いの外良い結果を出してくれた。

 最初に彼が聴講生入試に応募してきたと聞いた時には、何の冗談かと思ったけどね…



『本年度聴講生を代表し、ご挨拶をさせていただくライアンです。

 先日この学院を卒業したばかりではありますが、とある事件から、私自身まだまだ未熟であり、学業も未だ不十分であると思い知らされました。

 そんな私に、この度、聴講生として、今一度この学院で学ぶ機会を与えて下さった国王陛下、アメリア学院長、並びに学院教師の先生方には、感謝の言葉もありません。

 私は、()()()()()()()互いに切磋琢磨せよという学院の方針の元、()()()()()()()()()、普段接する機会のない他の聴講生の皆とも良い関係を築いていきたいと考えています。

 また、本科生である貴族の生徒も、これを良い機会と捉え、お互いを高め合い、成長してくれることを願います…』



 そう、本年度の聴講生の中には、先日学院を卒業したライアン王太子殿下が混じっていた…

 いや、確かに“身分に関係なく”とは言ったけどさぁ…

 それって、“平民でも”って意味で、“王族でも”とは取らないよねぇ?

 王妃様も許可しているみたいだし、入試は公正に行ったけど…

 ライアン殿下は、サラ様と違って選民意識の強い方だから、実質平民枠の聴講生として再入学して来たのも意外だったけど…

 あの、明らかに自分は平民の聴講生の味方だって挨拶…

 あれには吃驚(びっくり)した。

 ライアン殿下の言う“事件”って、多分大森林での通過儀礼イニシエーションのことだと思うけど…

 力不足云々はともかく、平民とも仲良くしようなんて思わせるようなこと、何かあったのかなぁ…?

 ともあれ、ライアン殿下が聴講生として平民側につくと宣言したことで、貴族の生徒たちが迂闊に聴講生に手を出せなくなったのも事実。

 仮に聴講生を王太子派閥と考えるなら、聴講生への攻撃は王太子殿下に対する敵対とも取られ兼ねない。

 それに、ついでに言うと、今回聴講生として入学して来たのは、ライアン殿下だけではない。

 ライアン殿下の側近であるユリウス君他、数人の貴族がライアン殿下と同じように入学している。

 ライアン殿下とユリウス君以外は、おじさんだけどね。

 ただ、それは貴族組聴講生に限ったことではなくて、今回入学してきた聴講生の平均年齢自体が、実はかなり高い。

 20代、30代辺りが圧倒的に多いんだよね。

 王族、貴族もいるし、自分たちよりも遥かに年上の大人の集団。

 たとえ貴族とはいえ、社会経験もない未成年の子供にとって、聴講生たちの存在は十分な脅威みたい…

 では、聴講生の側はどうかっていうと…

 正直、彼らに周囲を気にする余裕なんて、全く無かったりする。

 昨年度から、今までのイージーモードからハードモードに移行した学院のカリキュラム。

 幼い頃からそれなりの教育を受けてきた貴族の子弟が、3年間かけて学ぶ内容。

 それを、わずか1年で詰め込もうというのである。

 名目上身分を気にしなくてもいい学院で、たとえ相手が貴族とはいえ、子供の縄張り争いに付き合っている時間など、彼らには存在しない。

 ちなみに、彼らに課した学習(訓練)メニューは、セーバ基準だったりする。

 実社会に出て、酸いも甘いも噛み分け、その上で学歴や知識、魔法技術の必要性を実感して入学してきた社会人入試組だからね。

 職場や家族に無理を言って入学してきた者も多い。

 もう後がないと、起死回生をかけて入学してきた者もいる。

 学院に通うのは当然の権利、いや、なかば面倒な義務くらいの気持ちで通う本科生とは、そもそもの覚悟が違う。

 その気迫に、本科生の方が気圧されてるってのが実際のところ。

 聴講生の存在は、予定調和の学院生活に慣れた貴族子弟たちの日常を、着実に侵食していく。

 鍛えたいのは聴講生だけではない。


 本来国を守る立場である貴族の子弟たちにも、当然働いてもらうよ!


 

 


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