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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第4章 アメリア、ダルーガ伯爵の野望を打砕く

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四者会談

 タキリさんの登場、サラ様の正体暴露からしばらく。

 怒涛の展開から立ち直り、すっかり開き直った議長様。

 折角の機会だし、もうこのまま話を詰めてしまおうと、本格的な四者会談が始まった。

 場所も少し広めの会議室に移り、各国代表に私を含む4人だけではなく、レジーナやルドラさん、タキリさんの補佐を務めるヤタカさんや、議長様の秘書のセバスさんも話し合いに加わった。

 話は既に、やるやらないの話し合いではなく、どう進めていくかの現場レベルでの話し合いに移行している。

 議長様曰く、周囲をこれだけ固められた状態では、計画にケチをつけるだけ時間の無駄だそうだ。

 今後自分にのしかかるであろう膨大な仕事量を抜きに考えれば、この計画に連邦が反対する理由は無いって、どこか虚ろな目で言っていた。

 実際、連邦国内の意見の取りまとめを抜きにすれば、計画の素案はほぼ完成しているんだよね。

 だって、私とタキリさん、ついでにセーバ支部商業ギルド長のルドラさんとは、十分な話し合いの時間が有ったわけだし…

 計画は、ルドラさんの意見も聞きつつ、連邦にも十分な利があるように考えられているから、一旦計画実現の方向に(かじ)を切ってしまえば、話は非常にスムーズだった。


「……では、連邦(こちら)側の利益は内陸交易路の復活に商業ギルドの郵便、銀行事業。

 対価に、セーバの鉄道施設に関する治外法権を認めるということか…

 工事費用は鉄道が敷かれる各国各領主が出すとして、、

 実際の工事は西側からはセーバが、東側からは倭国が同時に行うとのことだが…

 この話、倭国に利はあるのか?

 こう言っては何だが、ラージタニー(ここ)から倭国の都(キョウ)までは急げば10日程度。

 南北に長い国土を持つ倭国にとって、真っ直ぐ馬車で数日分程度西に向かうだけの鉄道に、それほどの利は無いように思えるが…」


 この大陸の東の海岸地域に広がる、縦に長い国土を持つ倭国。

 その中で、連邦首都ラージタニーと倭国の都キョウは、ほぼ同緯度で横並びの位置にある。

 ちなみに、名前から前世日本とごっちゃになりやすいけど、倭国は島国ではなく大陸国だから、鉄道を敷くのに何の問題もない。

 で、西から東に向かう大陸横断鉄道の東の終着駅をキョウと考えると、実際に倭国国内に敷かれる鉄道の距離はごくわずかなんだよね。

 はっきり言って、この鉄道がキョウまで敷かれることで倭国が直接受ける利益は、それほど大きくはないのだ。

 別に、必要なら、連邦との国境まで馬車で行って、そこから国境まで敷かれた鉄道に乗り換えればいいわけだからね。

 わざわざ工事に協力してまで、扱いがややこしくなる国際列車を国内に引き入れる必要はない。

 でも…


「いえ、(わたくし)、、コホン、倭国にも利はあります。

 この計画に協力することで倭国が得る利益。それは、鉄道技術です!」


 そう、私が倭国側に提供したのは、鉄道技術、ついでに通信技術も…

 これは、技術大国を自認する倭国側(いや、むしろ、タキリさん?)にとって、喉から手が出るほど欲しい技術で…

 こちらとしても、流石に大陸の端から端まで全てセーバの技術者だけで鉄道を敷くのは厳しいから…

 そこで、元々列車の開発に協力してもらっていたタキリさんには、鉄道と通信に関する全ての技術を開示することにした。

 私の鉄道通信技術の開発目的は金銭的な儲けではなく、自由に世界を旅するための基盤作りだからね。

 鉄道も通信も、広範囲にネットワークを広げてなんぼの技術だし、短期間で普及させるためには、セーバだけの力ではどう考えても無理がある。

 倭国への鉄道通信技術の提供は、対価というかたちをとっているけど、実を言えば、むしろこちらが頭を下げて御願いしたい案件だったりする。

 まぁ、倭国にとっても間違いなく有益な技術には違いないから、今回はお互いの利害がうまく一致したということだろうね。

 ちなみに、魔法王国の利益は、鉄道事業から得るアメリア商会の膨大な収益。そこから発生する税収だ。

 最近はセーバの発展のせいか、連邦や倭国からの商品の輸入量もかなり増えているからね。

 魔法王国としては、魔力や魔石以外にも通貨の獲得手段が欲しいところだ。

 あとは、この鉄道計画を私が行うことで、現在空白地帯と化しているザパド領の問題を、私に解決してもらう意図もあるらしい。

 政治的な整地も含めての鉄道敷設。

 実際、ザパド領とダルーガ伯爵の問題を解決せずに鉄道だけを敷いたとしても、ザパド領、ダルーガ伯爵領では鉄道運賃や通行税が跳ね上がるみたいになったら、全然意味が無いからね。

 この問題は、一時しのぎとか騙し騙しとかではなく、きっちりと解決する必要がある。

 その懸念は議長様も同じなようで…


「そうなると、最大の懸念はダルーガ伯爵とザパド侯爵か…

 分かっているとは思うが、ここを何とかせんとこの計画自体が破綻するぞ。

 アメリア公爵には、なにか策はあるのか?」


「そうですねぇ、一応ザパド侯爵の後継となるお嬢様はこちらの陣営に引き込んでありますので、ザパド領の方はなんとかなると思うのですが…

 議長様の方でダルーガ伯爵をなんとかして頂くことは可能ですか?」


 一応、聞いてみるけど…


「無理だな。アメリア公爵なら承知かと思うが、連邦(この国)は実際のところ小国の寄せ集め集団に過ぎん。

 お互いの商業的利益と周囲の大国に対する牽制。そういった損得勘定で結びついているだけの組織だ。

 連邦全体に明らかな不利益をもたらすならともかく、単なる領地の運営方針の違い程度で、個々のやり方にこちらが口を挟むことなどできん。

 そんな事をすれば、連邦議会は個々の店の商取引に干渉するのかと、連邦の存在意義云々の話にもなりかねん。

 特に、ダルーガ伯爵領は連邦発足以前から続く旧貴族領で、領地も広く土地との結びつきも強い。

 一応、連邦に加盟はしているものの、いざとなれば簡単に連邦から離脱することもできる。

 こちらとしても、西の港湾都市バンダルガや魔法王国との国境を持つダルーガ伯爵に、連邦を離脱されるのは痛い。

 何やら後ろ暗い商売をしているのは知っているが、目立った問題が起きていない以上、不用意に手は出せないのだよ」


「…後ろ暗い商売ですか? それは?」


「……人身売買だ」


「……………」


 不愉快そうに語る連邦議長様。

 勿論、連邦でも人身売買が違法であることは間違いない。

 それでも、一定の需要があることは事実で…

 しかも、その顧客は貴族や大商人といった権力者…

 目立った実害も無く、証拠もない状態では、連邦議会の強権を発動するのは難しいそうだ。

 そもそも、連邦が国として正式に調査するためには、議会の承認を得なければならない。

 議会の主要メンバーであるダルーガ伯爵に知られず話を進めるなど、不可能だそうだ。

 結局、分かってはいるが、さしたる被害も無いので黙認、という事らしい…

 でも、そうなると、ダルーガ伯爵がどこから商品(人間)を調達しているのかが問題で…


 私の、否、ここにいるセバスさん以外の全員の強い視線を受けた議長様は…


「現状有効な対処ができん以上、わしの口から明言はできん。

 国家間の問題になりかねんからな。

 だが、最近裏で出回っている奴隷には、随分と魔力の高い者が多いそうだ…」


 “国家間の問題”、“魔力の高い奴隷”…

 つまり、そういうことだ…


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