表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第4章 アメリア、ダルーガ伯爵の野望を打砕く

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

216/321

連邦議長の憂鬱 〜連邦最高議長視点〜

(連邦最高議長視点)


「旦那様、ルドラ坊っちゃんは何と?」


「あぁ、できるだけ早く会いたいそうだ。

 改めて嫁を紹介したいなどと、ぬけぬけと…

 あの娘のことは2人が子供の頃から知っているのだ。

 今更紹介もないだろうに…」


 あの放蕩息子と結婚したアディと、息子の秘書をやっているダミニ孃のことは、3人がまだ子供の頃からよく知っている。

 3人で仲良く遊ぶのを見て、どちらがわしらの義娘となるのかと、そんな話をよく妻としたものだ…

 正直なところ、ルドラが選んだのがダミニ孃の方であれば、ここまで頑なな対応をせずに済んだのだが…

 商人にとって、優秀な秘書は伴侶も同じ。

 それが男女であれば、結婚することも珍しい話ではない。

 周囲も納得しただろう…

 だが、アディは商売とは全く関係の無い冒険者。

 いくら冒険者としては一流であっても、連邦を代表する商人の妻としては如何なものか…

 そんな苦言が、内外から多く聞こえてきた…

 特に、自分の娘を息子の嫁にと狙う、有力者(バカ)どもから!

 当時、西のダルーガ伯爵と権勢を競っていたわしに、そういった反発をはね()ける余裕はなかった…

 結果、ルドラとアディ、そしてダミニ孃もこの地を去り、わしは義娘を手に入れ損ねた妻から、事あるごとに嫌味を言われるようになった…

 一体、わしにどうしろと言うのだ!?

 あのダルーガ伯爵に連邦議長の座など与えれば、とんでもない事になるのは目に見えておるだろうに!

 まぁ、そのダルーガ伯爵も、今ではだいぶ大人しくなった…(あくまで、表面上だが…)

 実際、この状況を作り出してくれたセーバの街とアメリア公爵には、いくら感謝してもしたりないほどだが…

 それに協力したセーバの商業ギルド長の功績も、文句のつけようがないもの。

 そして、その妻はセーバの街の軍事の最高責任者…

 連邦の出身でありながら、アメリア公爵の信任も厚く、夫である商業ギルド長との良い橋渡しとなってくれていると…

 そんな2人の結婚にケチをつける者など、居ようはずもない。

 当時アディをこき下ろしていた連中は、戻って来たアディの肩書を聞いて、今頃戦々恐々としておるだろうが…

 今ポールブでアメリア公爵に嫌われては、商売が立ち行かなくなる者も多いだろう。

 まぁ、その最たる者が、貿易港であるポールブと連邦東の商圏を(あずか)る、このわしなのだが…


「妻にも紹介したいから、できれば自宅を訪ねたいと書いてある…

 ならば、さっさと帰ってくればよいだろうに!?

 どうせ勘当された身だからとか、もっともらしい事を言うのだろう。

 署名も、“セーバ支部ギルド長”、“セーバ自警団団長”と、役職入りだしな!

 息子が嫁を連れて帰るのではなく、セーバの重役が連邦議長に挨拶に来ただけと言いたいのだろう。

 当時の事情は2人も理解しているだろうし、アディはさっぱりした性格の娘だったからな…

 これは、間違いなくアディを拒否したわしに対する、息子の意趣返しだろう。

 家では妻に嫌味を言われ、今度は息子だぞ!

 一体、わしにどうしろと言うのだ…」


「…良いではありませんか。

 一時はもう息子とは呼べないと諦めていたのです。

 息子と義娘が帰って来ることを、素直に喜んでおけば(よろ)しいでしょう。

 既に後継は別の者に定めてありますし、ルドラ様も今更セーバを捨ててここに戻りたいとは、考えていないでしょう。

 純粋に、お二人の結婚を認めてもらいたいと、それだけでございますよ。

 嫌味の一つや二つ、聞いて差し上げれば宜しいでしょう」


 当時から秘書として、わしの公私の事情を熟知しているセバスはそう言うが…


「むぅ… ルドラ(あやつ)がそんなタマか?

 嫌味程度ならかわいいものだが…

 2人の結婚を認めてもらいたいなどと、そんな理由でわざわざ帰ってくるか?

 別に、わしが認めようと認めまいと、既に結婚しているルドラには何の影響もないのだ。

 2人がわしに認められるだけの立場を得たからといって、態々(わざわざ)あの息子が戻って来るとは思えん……」


「旦那様?」


「もしや、今回の帰国。結婚の挨拶の方が建前で、仲を認めさせる為に書いたと思われる肩書…

 こちらの方が本命ではないか?」


「つまり、お二人は、仕事として内密に旦那様に接触するために、このような手紙を送ってきたと?」


「多分な… 店や議事堂ではなく、自宅の方を訪ねたいというのも、案外それだけ内密な話があるという意味かもしれん…」


「確かに… 坊っちゃんが戻られると聞いて少々浮かれておりましたが…

 あのお二人の性格を考えると、そう考える方が自然ですな」


「セバス、不自然にならない程度に、早急に場を整えよ。

 念の為、周囲に妙な者がいないかも注意しておけ。

 もし、2人がセーバの、アメリア公爵の代理として来たのなら、話はそれなりに大きくなる可能性もある。

 最近のセーバと魔法王国の動きについては、改めて情報を整理しておけ。

 息子(ルドラ)義娘(アディ)も、交渉相手となれば全く油断ならん!

 情報不足は命取りになるぞ」


 やれやれ…

 違う意味で胃が痛くなってきたが…

 あの2人がセーバでどれだけ成長したのか、それを見るのは楽しみでもあるな。



 そんな風に呑気に考えていたわしは、後日…

 本当の交渉相手がアメリア公爵本人で!

 その内容は世界規模での鉄道事業計画で!

 排除すべき障害は西の重鎮、ダルーガ伯爵!

 久々に会った息子にそう聞かされ、呆然とすることになった…



 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生幼女は教育したい!2巻
 書籍2巻10月10日発売です!!

転生幼女は教育したい!1巻
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ