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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第4章 アメリア、ダルーガ伯爵の野望を打砕く

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旅の夜

 ポールブで1週間ほどを過ごした私達は、注文していた野営道具の完成を待って、ラージタニーへと出発した。

 道中は、今のセーバほどではないけど、まあまあ快適かな。

 街道は未舗装区間も多いけど、馬車はセーバの技術を取り入れたものだしね。

 今回初使用となる野営道具も、なかなかにいい感じだ。


「そのテント、見せていただいても?」


「まぁ! これなら虫の心配もいりませんね!」


「うわぁ!! 床、ふかふか!!」


「最初に見た時には、随分コンパクトにまとまっている事に驚いたが…

 まさか組み上がったテントが、これほど快適なものとは…」


 乗合馬車の御者さんに、最初に私達のテントを預けた時には、その小ささに驚かれたけど…

 実際にこうして組み立てたものをお披露目すると、、更に注目を集めているね。

 他の乗客の人たちは勿論、野営テントなど見慣れているはずの御者や護衛の人たちにも…

 やっぱり、こういったスタイルのテントって、この世界にはないのかもね。


「お嬢さん、このテント、どこで手に入れたか教えてもらえるかな?」

「あっ、わたしも知りたい!」

「もし、よろしければ、私にも…」


 一通り見学を終えた人たちに、私はポールブのお店を教えてあげる。

 ちなみに、野営道具店の店主さん(おじさん)には、私の出したアイディアは自由に使ってもらって構わないと言っておいた。

 初めは、商業ギルドに特許出願することを勧められたんだけどね…

 それをしない代わりに、もし店主さん(おじさん)以外がこのアイディアを真似しても、それは気にしないでもらいたいとお願いしておいた。

 私の希望は良いキャンプ用品を手に入れることで、利益とか誰が作ったかとかは関係無いからね。

 皆が自由にアイディアを出し合って、より私好みのテントを作ってくれることが一番だ。


 野営の初日こそ、見慣れない野営道具のせいで注目されて、だいぶ騒がしかったけど…

 それも、回を重ねればだいぶ落ち着いてくる。

 明日は、いよいよラージタニー到着だ。

 焚き火の前に座り、ぼぉっと炎を眺めていると、横に座っていたサラ様が少し思い詰めた様子で話しかけてくる。


アメリア(アミー)お姉様、、お姉様は、魔法王国(我が国)がお嫌いですか?」


「ん?」


「いえ、その、、宿屋でも野営道具店でも、お姉様は簡単に貴重な技術を伝えていましたし…

 確かに連邦(この国)は、魔法王国と違って魔力量にも寛容ですし、お姉様の知識を素直に受け入れていて…」


 ぽつぽつと言葉を重ねるサラ様…

 連邦(この国)に来て、この国のあり方に触れて、私が無頓着に他国にセーバの技術を伝えるのを見て…

 私が今まで通り、魔法王国に留まってくれるのか、不安になったらしい…


国王陛下(お父様)王妃様(お母様)が言っていたこと、実感できました…

 絶対にお姉様の不興は買うな、お姉様をしっかりと繋ぎ止めておけって…

 王太子(お兄様)は、お姉様に対して必要以上に気を遣う国王(お父様)を良く思っていないようでしたけど…

 今なら、国王陛下(お父様)の不安も理解できます。

 正直なところ、魔法王国の気風はお姉様には合っていないのだと思います。

 お姉様の貴重な知識の価値を理解できず、それを全く活かしきれていない!

 私は国を裏切れませんけど、もしお姉様が魔法王国(我が国)を見限っても、正直仕方が無いと思えてしまって…」


 初めて価値観の違う異文化に触れて、多分色々と考えてしまったんだろうね。


「う〜ん、別に魔法王国を捨てるとか、連邦に移住するとか、そんな気はないよ。

 セーバの街には愛着もあるし、その、、サラ様のことも、妹みたいに思ってるしね」


 とたんに笑顔になるサラ様。

 可愛い…


「それに… 正直言うと、私、国の感覚とかピンとこないというか…

 そもそも、自分が魔法王国人っていう自覚が無いというか…」


「えっ?」


 驚いた顔でこちらを見るサラ様だけど…

 いや、本当に…

 元々前世からその傾向はあって…

 例えば、オリンピックで同じ日本人を応援するとか、高校野球では地元チームを応援するとか?

 全然そういうの無かったんだよね…

 だって、知らない人だし。

 同じ日本人だからって言うなら、同じ地球人じゃんって…

 まぁ、それは屁理屈としても、私にとっては知っている人か知らない人か、好きな人か嫌いな人か…

 そういう基準で、国籍とかはあまり気にしてなかった。

 そんな私が、前世の記憶を引き継いだ状態で魔法王国人になってもねぇ…

 おまけに、全く貴族的な付き合いを経験することなく幼少期を過ごし、逃げるように辺境の田舎町に引きこもって前世基準の街を作っていたわけで…

 愛国心だとか魔法王国人としての自覚だとか、そんなものが生まれるわけがない。

 敢えて言うなら、セーバの街が私の国で、それ以外は全て他国。

 魔法王国を捨てる捨てない以前の問題なんだよね。


「でも、なら、何故王都には全く伝えようとしなかったカフェラテの技術を、わざわざ時間を割いてまで他国に伝えたのですか?」


 そんな真剣な表情で聞かれても…


「えぇと、旅先でもおいしいカフェラテが飲みたかったから?」


「えっ?」


「いや、だって、旅先でぶらっと入ったカフェで出されたカフェラテが高水準だと、おぉ〜って感じで嬉しいでしょう?」


 旅先でお気に入りのカフェを見つけるのは、私の旅の楽しみ方の一つ。

 前世、旅先で入ったカフェで頼んだコーヒーが、コーヒー牛乳みたいなカフェラテだったりインスタントコーヒーだったりして、なに気にショックだったんだよねぇ…

 発展途上国とかだと、意外とよくある話なんだけど…

 何年先になるかは分からないけど、順調に鉄道が敷けて自由に旅ができるようになって…

 ふらっと入ったカフェで、今のポールブで出されるようなカフェラテしか飲めないのは、ちょっと辛いものがある。

 ポールブ(あの街)の人はみな研究熱心みたいだし、ちょっと教えておけば、勝手に広まると思うんだよね。

 きっと、何年後かには、単純なハートやリーフのラテアートだけじゃなく、前世で飲んだのみたいな凄いラテアートもできてたりするんじゃないかなぁ♪

 そんな話をすると…


「はぁ〜〜」


 サラ様に溜め息をつかれた…


「そうですよねぇ、、お姉様はそういう方でした…

 『王国が…』とか、『連邦が…』とか、『技術の流出が…』とか…

 そんなのは、お姉様にとっては些細なことですよね…

 すみません、私が狭量でした。

 世界全体の発展を考えるなら、自国の発展のみに終始するのは、長期的な視点で考えるなら愚策。

 お姉様の知識の囲い込みを考える私の発想自体が、閉鎖的な魔法王国(我が国)の発想に繋がるものでした…」


 何やら納得した様子のサラ様だけど…

 いや、私は自分が旅先でおいしいコーヒーを飲みたかっただけなんだけど…


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