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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第4章 アメリア、ダルーガ伯爵の野望を打砕く

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ポールブ探索

すみません、更新遅くなりました、、

 教えてもらった宿屋には、特に問題無く辿り着くことができた。

 まぁ、港の周辺や宿屋街では旅行者目当ての客引きも多かったけど、その辺りは許容範囲だ。

 近寄ってくる客引きを軽くあしらいつつ、旅行案内所ツーリストインフォメーションのお姉さんお薦めの幾つかの宿を順にチェックしていく。

 その中で、私達が選んだのは表通りから一つ外れた通りにある小さな宿屋。

 1階が酒場ではなくカフェになっているこの宿は、女性客も多くて夜も静かだと、案内所のお姉さんが教えてくれた。

 商家のお嬢様風の私を見て、初めはもう少し高級な宿屋を薦めてくれたんだけど、それは私が断った。

 一般的なこの国の宿屋のレベルを知りたかったからね。

 たんに、私の趣味なんだけど……。

 で、子供だからと悪いことを考えない良心的で人柄重視、かつ客層の悪くない宿。

 そういう基準で薦められた宿屋のうちの一つがここ。

 表通りから外れているせいで少々格が落ちるらしいけど、私としてはむしろ高ポイントだ。

 だって、表通りの宿屋は、間違いなく騒がしい。

 1階がクラブやバーになっていて、でも安いし雰囲気あるからと泊まった宿で、朝まで続く音楽や叫び声で全然眠れなかったのは、前世の旅で何度か味わった苦い思い出だ。

 これだけ賑わっている宿屋街で、しかも殆どの宿屋の1階が食堂や酒場なのだ。

 これで(うるさ)くないはずがない!

 治安に問題が無いのなら、多少アクセスが悪くなっても繁華街は避けるに限る。

 そんな基準で選んだ宿だけど、うん!、なかなかいい感じだね。

 部屋の内装は最低限だけど、清潔な感じだし、なによりお風呂があるのが嬉しい!

 若夫婦が営むこの宿屋、実は開店したのは最近らしいんだけど、この宿屋に限らず、ここ最近開店したり改装したりした宿屋には、例外なくお風呂が設置されているんだって。

 というか、お風呂の無い宿屋は確実に客が離れていくそうだ……。


「確か4,5年くらい前に、セーバの街の領主様が湯沸かしとポンプの魔道具を開発したのよ。

 その魔道具がすごいって噂になって……。

 この街の魔道具店が商業ギルドから製造の権利を買って売り出したら、もうあっという間!

 最近じゃあ、宿屋だけじゃなくて、一般家庭にまで広まってきてるわ。

 アミーちゃんも魔法王国から来たのなら、お風呂のない宿なんて考えられないでしょう?」


 さっそく仲良くなった宿屋の女将さんが、そんな話をしてくれた。

 湯沸かし器やポンプの魔道具は、商業ギルドに設計図込みで登録してあるから、特許料さえ払えば誰でも製造できる。

 既にかなりの額の特許料を受け取っているから、連邦でもそれなりに普及しているのは知っていたけど……。

 こうして現場の声を聞くと、ちょっと考えてしまうなぁ……。

 お風呂の設備は、セーバを除けば魔法王国だとまだ一般家庭には普及していない。

 そう考えると、セーバの技術って、開発された魔法王国よりも、連邦の方が早く広まっているのかも……。

 旅行案内所ツーリストインフォメーションもそうだったし、流石は商人の国というべきか、新しいものに対するフットワークの軽さが王国とは段違いだね。

 こういうのを見ちゃうと、本当に自国の将来が心配になるよ……。



 ポールブでの拠点を定めた私達は、早速街の探索に繰り出した。

 といっても、特に目的がある訳ではない。

 急ぎ旅でもないし、まずはこの街に慣れることが大切だ。

 宿屋の部屋で、お嬢様風の少し高めの服を脱ぎ捨てた私は、他の4人に合わせて平民風の質素な服に着替える。

 入国時には、私が4人の(あるじ)であると疑われないよう身形(みなり)を整えたけど、逆に街中だと自分がお金持ちだと宣伝することになってしまう。

 TPOは大切だからね。

 前世で旅を始めた頃、旅慣れた貧乏旅行者ぶって汚い格好で入国審査に臨んで、あらぬ疑いをかけられて(かえ)って入国に時間がかかったことがあった……恥ずかしい。

 ということで、目立たぬ服装に着替えてぶらぶらと街歩きを楽しむ私達は、ふつうに仲の良い友達同士に見えるはず。

 そこに、一応保護者として、後ろからサマンサがついて来ているって感じで。

 街中を侍女や護衛を連れてぞろぞろ歩くなんて、目立つだけだしね。

 というか、純粋に疲れる。

 サラ様を従者扱いするのは特にね……。

 そんな訳で、普段はセーバの街にいる時みたいな感じでいくことにした。

 但し、私の呼び名だけは“アミー”で……。

 この街での私の知名度が思いの外高くて、正直びっくりしている。

 最近急速に発展しているセーバの街の領主ってのもあるんだけど、それ以上に大きいのが商人、技術者としての私。

 風呂やポンプだけじゃない。

 宿屋のベッドやソファー、街中を走る馬車などには、私が特許登録しているスプリングが使われている。

 大型家具などに使われているネジも、私が開発した(ことになっている)もの。

 飲食店の冷凍庫にはアメリア商会のロゴが入っていて、全てセーバからの輸入品。

 街中に、私の名前が溢れている……。

 さっき、ふらっと入ったカフェで飲んだ“カフェラテ”も、私がこの世界に持ち込んだメニューだ。

 て、いうか、今すご〜く流行っているんだって、カフェラテ。

 セーバの街では知る人ぞ知る名物になっていて、一定のファンがいるのは知っていたけど……。

 まさか、他国でこんな状態になっているとは!?


(まぁ、レベルはまだまだだけど……)


 コーヒーを抽出する“えすぷれっそましーん”の魔道具は品薄状態で、セーバから入ってきてもすぐに完売してしまうらしい。

 宿屋のカフェにもあって、女将さんが自慢していたけど、この通りを歩いていると実感するね。

 通称カフェ通りと呼ばれるこの通りは、大小様々なカフェが立ち並ぶコーヒーの激戦区。

 コーヒー豆の産地がここから近いこと。

 余所の土地からこの街に来る商人が、昔から商談や情報交換にカフェをよく利用したこと。

 こういった背景もあって、この街の住人にはコーヒー党が多く、街にはカフェが多いみたい。

 そして、そんなコーヒー好きの街に革命をもたらしたのが、“エスプレッソマシーン”。

 元々この街で多く使われていたのは金属フィルターらしいんだけど、金属フィルターによる抽出って、豆の良し悪しがもろに出ちゃうんだよねぇ……。

 だから、老舗で安定して質の良いコーヒー豆を仕入れられるカフェに対して、大した資本もコネもない新参のカフェだと、正直勝負にならない。

 そんな中で登場したのが、セーバ産のエスプレッソマシーン(魔道具)。

 蒸気の力でコーヒーの旨味を目一杯引き出す抽出方法は、金属フィルターによる抽出とは一線を画すもの。

 それは、エスプレッソやカフェラテといった特殊なコーヒーだけの話じゃない。

 所謂(いわゆる)アメリカーノ、エスプレッソのお湯割りなんかは、見た感じは普通のコーヒーと変わらない。(表面にクレマって泡泡はあるけど)

 味も基本的には普通のコーヒーで、でも、普通に淹れるより全然美味しい!

 これなら、老舗の味にも対抗できる!

 おまけに、実はブラックコーヒーはちょっと苦手という若年層やご婦人方の心を、甘いミルクのカフェラテが鷲掴み!

 その結果が、今の状況なんだって……。

 元々は気圧や蒸気圧を利用した魔動エンジンを開発する過程で、私が趣味で作ってしまったものだったんだけど、それがここまで受け入れられていたとは!?


「ねぇ、レジーナ? エスプレッソマシーンって、そんなに売れてたの?」


「はい、アミー様。冷凍庫の売れ行きが凄いので目立ちませんけど、カノンの報告だとかなり注文を受けているようです。

 ただ、冷凍庫と違って、エスプレッソマシーンはアミー様と一部の職人が趣味で作っていたものですので、作れる職人が少ないみたいで……」


 あ〜、確かに……。

 あれって、使っている魔法自体は冷凍庫の魔法よりも一般的で扱いやすいんだけど、構造としては冷凍庫より全然複雑だから……。

 でも、これだけ需要があるんだったら、いっそ特許登録して設計図公開しちゃうのもありかなぁ……。


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