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【書籍発売中】転生幼女は教育したい! 〜前世の知識で、異世界の社会常識を変えることにしました〜  作者: Ryoko
第3章 アメリア、教育改革をする

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新メンバー

 そんなわけで、今日も新メンバーのための特別講義だ。



「一般的な攻撃魔法の場合、最終的な魔法の威力は“発生×拡大”で決まります」


「……アメリア先生、それはつまり、僕達が一つの魔法に使う魔力が、その魔法を生み出す事と、生み出した魔法を大きくする事の両方に使われてるということですか?」


 アルフ君が、今の私の言葉を吟味しつつ、恐る恐る確認してくる。

 彼はなかなかに慎重派だ。


「アルフレッド君の解釈で問題ありません」


 私がアルフ君の言葉を肯定すると、横から難しい顔をしたユリウス君が、納得いかないと発言した。


「ですが、先生、僕は魔法を使う際にそのような事は全くイメージしていません。

 イメージしなければ魔法は使えないはずですが……」


「だから、ユリウス様の魔法は弱いのですよ」


 私の講義を横で見学していたレジーナがそう呟くと……。


「よ、弱い……」


 あっ、ユリウス君が撃沈した……。

 初めの頃の勢いはどこへやら、今ではすっかりいじられキャラだ。


「あぁ! それで魔力操作が重要になるんだ」


「えっ? アニー、どういうこと?」


 それまで黙って話を聞いていたアニーちゃんが急に声を上げ、その声にディアナちゃんの声が続く。


「だから、いくら商材仕入れても売れなきゃ意味無いし、いくら売ろうとしても売る物が無ければ商売はできない。

 正確な在庫数と販売力の把握が大切ってことよ」


「全然分からない……」


 流石は大商会の次期後継者。

 自分の得意分野と結び付けて、きっちり魔法の本質を見抜く洞察力はなかなかだと思う。

 過程を無視していきなり結論に結び付けるから、若干周囲が彼女の発言について来れてないけど……。


「えぇと、ディアナに分かる例えだと……良い剣を作るには、良い材料と優れた技術が必要ってこと?」


「それなら分かるけど……」


「だから、決まった予算の中で、どれだけ材料に予算をかけて、どれだけ腕の良い職人を雇うかは、最初にきっちり決めるよねぇ?」


「まぁ、そうね」


「意識的な魔力操作ができずに無意識に魔法を使うってことは、その予算の振り分けを何も考えずに適当にするのと同じってこと。

 値札も見ずにただ質がいいって高い材料買うとか、何でも一流の職人に頼めば問題無いとか、そういう発想ってことよ」


「……あぁ、そういうことか」


 アニーちゃんが感覚で正解に辿り着く天才肌なのに対して、ディアナちゃんは思考重視の堅実派だ。

 時間がかかっても、一つ一つの技術を確実に消化していくタイプだね。

 2人は真逆のタイプだけど、それでお互いが上手くバランスを取っているってことかな……。



 皆でわいわいと言いながら、その後もいつもの特別講義は続いた。



 最近、私は魔法魔道具研究会の時間を使って、主に新メンバーに向けての講義をしている。

 今日は魔法についての講義。

 魔力が魔法になる過程をしっかりと理解して、効率の良い魔力運用をするだけで、同じ魔力でも威力は劇的に上がるからね。

 ただ、そのためには正確な魔力操作が必要だから、理論だけ分かっても、実践できるのにはもう少し時間がかかると思うけど……。


 闘技大会の後、しばらくして実施された第2回単位認定試験。

 その結果を踏まえ、魔法魔道具研究会に新たなメンバーが加わった。

 まず、ユーグ領からはアルフレッド君。

 彼は私達と同じ本年度入学生で、実は1回目の試験から研究会への入会条件は満たしていたらしい。

 ただ、自分なんかが恐れ多い(つまり、凄く怖い)と、前回は入会を希望しなかったらしい。

 ちなみに、今回は本人の希望ではなく、レジーナが人材確保のために引っ張ってきた。

 所謂(いわゆる)スカウトだ。

 レジーナがトッピークで少しだけ教えていた子で、トッピークの代官の……男爵の息子さんとのこと。

 気が弱いところはあるけど、あの闘技大会でのユーグ領の作戦を考えたのも彼らしい。

 トッピークは王国南部の港街としても発展が見込まれるし、何よりソルン帝国に近い。

 今後のことを考えるなら、是非鍛えておきたい人材だ。

 レジーナも気に入っているみたいだし、ここは諦めてがんばってもらうとしよう。

 次に、王都からはアニーちゃんとディアナちゃん。

 アニーちゃんは王都にある大商会の娘さんで、ディアナちゃんは同じく王都にある大手工房の娘さん。

 ちなみに、どちらも平民ではあるけど、貴族の紐付きではない。

 入会にあたって、主人にあたる貴族の方は大丈夫かと聞いたら、どちらも実家がその貴族の分の学費も出しているから、特に問題は無いと言っていた。

 裕福な平民が学院に入学するために、学費を払えない貴族の援助をするのはよくある話。

 その貴族にしても、一応お父様の派閥らしいから、2人が研究会に入ってくれるのはむしろ大歓迎らしい。

 ディアナちゃんは私の作る魔道具のファンらしいし、アニーちゃんはレジーナのファン?らしいので、特に問題は無いと思う……多分。

 そして、最後に、ボストク領からはユリウス君。

 彼は、ボストク領での模擬戦で私が対戦した子だ。

 彼、あの頃と比べるとだいぶ丸くなったね。

 ボストク領では私に敗れ、闘技大会ではソフィアさんに敗れ、今は研究会で皆にけちょんけちょんにされている……。

 まず、ソフィアさんを含めた元々のメンバーには、知識、魔法ともに勝てない。

 新しく入ったメンバーの中でも、知識面ではディアナちゃんといい勝負で、アニーちゃんやアルフ君には追いつけない。

 そして、魔力操作にいたっては、研究会メンバー中最下位!

 本人、一時期は相当凹んでいたね。

 ただ、これはある意味仕方がない。

 彼は侯爵に近い魔力を持つ上級貴族で、その分繊細な魔力操作は他の3人よりも苦手なはず。

 実際、同じく魔力の多いサラ様やソフィアさんも、初めは相当苦労していたからね。

 とはいえ、現実に自分がメンバーの中で一番魔力操作が下手で、自分以上の魔力を持つサラ様やソフィアさんが上手に魔力を操っている以上、なんの言い訳もできない。

 唯一マシなのが剣術だけど、それも女性王族のサラ様に手も足も出ない感じだしね……。

 こうなると、流石の彼も自分に言い訳しきれなかったようで……。

 いつの間にやら、身分とか魔力量とか全然言わなくなった。

 平民のアニーちゃんやディアナちゃんにも普通に接しているしね。

 入会した最初の頃に、みんなして徹底的に教育し(いじめ)たのが良かったんだと思う。

 今では、とても教えやすい素直な生徒に育っている。

 いや、実際のところ、他領の貴族で、選民意識も強いユリウス君を入会させるかどうかは、結構迷ったんだよね。

 でも、王妃様から聞かされたソルン帝国の話とか考えると、セーバの街だけでなく、国全体の底上げもある程度は考えていく必要があるかなぁ、と……。

 仮想敵が他領の貴族なら今のままでいいけど、他国に攻められるとなると、流石にセーバの街だけの強化では心もとない。

 最悪この国がソルン帝国に征服されて、王家の血に連なる者は全員処刑とかいう話になったら、それこそ他人事じゃないからね。

 セーバの知識を多少他領の貴族に広めるくらいは問題無いだろう。

 どうせ秘密にしていても周りに広がるのは時間の問題だし、あまり抱え込んでいても(かえ)って危ないから……。

 ある程度こちらで管理できるところから、少しずつ情報を開示していくことにしたってわけ。

 知識って言っても、所詮セーバリア学園の初級から中級程度の知識だし……。

 セーバの街の住民なら、その辺の子供でも知ってる事だしね。


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